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㊳修行時々ヤキモチ−1
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お供は連れ歩くだけでも構わないんだけれど、仕事を頼むと互いのポイントが上がるのだという。
(ポイントってなんだよ、ゲームかよ)
そう思いつつもこれも修行の一環なんだろう、或いはチームワークとか主従の絆を育む何かなのだろうと思って気にしない事にする。
俺はお供に何を頼めば良いのかお師匠様に訊いてみた。
「薬の材料調達や、探し物を頼むのが基本です。それから自分よりも大きい動物であれば移動の足となって貰ったり、休む時の目隠しにもなって役立ちます」
えっ、そんな扱いなの? そりゃあ、お師匠様はずっと子像に乗ってるけどさ。
「彼らが力を付ければ天界と下界を往き来できるようになり、薬の材料を天界から調達して来られます」
「えっ、それってもしかして、下界にいながら天界の果物や甘味を手に入れられるって事?」
吃驚して訊ねた俺に、お師匠様はちょっとだけ怖い顔になって釘を刺した。
「仙果万桃の成っている果樹園には、神の許しがないと入れません。例え命じても、持ってこられないでしょう。甘味は――大神との話し合い次第でしょうね」
「そっかぁ……」
まぁ、俺だけ甘味が手に入っても無意味なんだけどさ。
「じゃあ折角だから、天界の材料を使った薬の作り方を教えて頂けませんか? 勿論、不死薬以外で」
例え甘露と仙桃が手に入らなくても、天界の材料で薬を作れたら物凄いアドバンテージだよね?
そんな事は多分、俺にしか出来ないんだから。
「いいでしょう。では再生薬の作り方を教えましょう」
「再生薬?」
「傷付いたり、古くなった細胞を再生する薬です。これを塗って神々は生まれたての肌を保っているのです」
「美容液かよ!」
思わずそう叫んだけれど、傷が再生するなら外傷薬として使える訳で、病気にしか効かない万能薬を補完する事が出来る。
「それって千切れた腕が新しく生えたりは……」
「しますよ」
四肢欠損も治すのかよ!
「但しそなたの今の実力では無理でしょう。精々、指一本を生せるくらいでしょう」
いや、それで十分じゃね? あ、でも剣でバサァーッて斬られたら治らないのか?
じゃあいっそ本当に美容液として売ったら売れるかも。
『バサバサだったあなたの毛もサラサラのツヤツヤに! 死んだ毛根だって復活します!』
なぁ~んて売り込んだら、獣人にも売れるんじゃない?
獣人にとって毛並みというのは重要なチャームポイントだからね。
どちらにせよ覚えて損はないものなので、俺は再生薬の作り方を習うことにした。
「そう言えば、ハヌマーンの方はどうなってますか? もう万能薬を作れるようになりましたか?」
「いえ、まだ暫く掛かるでしょう」
そうか。ハヌマーンは調合を覚えるのが苦手そうだったものな。
早く再生薬を作れるようになって、きっと毟り過ぎて薄くなったであろう毛を生やすのに使って貰おう。
「そなたは緊箍児を扱えるとは言え、ハヌマーンが怖くはないのですか?」
お師匠様が唐突にそう訊いてきた。
俺は別に怖くないと答えかけ、途中で思い直した。
「いや、最初は怖かったですね。だって悪相だし、てっきり仲間なんだろうと思っていた猩々をものも言わずにぶっ飛ばしてたし。これは話なんて通じない、力尽くでどうにかするしか無いのか……と思ったんだけど、ロクも負けちゃうしさ」
「負けてはいない。まだ戦えた」
ロクがムッとしながら口を挟んできた。
冒険者をしていた所為か、意外と好戦的で負けず嫌いな所がある。
「負けてないけど、あんな怪我を負うのは見てられないよ」
「次は無傷で勝つ」
もうっ、戦うなって言ってるのに。
「だったら次はすっごい甘いキスをするからな」
「そうか、それは楽しみだ」
甘いのは嫌いな癖に余裕でムカつく。
俺はロクが降参するくらい甘いお菓子を思い出そうと頑張った。
「ハヌマーンは……」
「あっ、ハヌマーンね! 忘れてた!」
「ハヌマーンは悪ではないのです。ただ傍迷惑で考え無しなだけです」
「お師匠様、それちっとも擁護しているように聞こえませんよ? まぁ、言ってることはわかるような気がしますけど」
ハヌマーンには悪意ってものはなくて、ただ自分の思ったように行動しているだけだ。
それが人には太刀打ち出来ないほど大きな力で、迷惑してるって時点でもう悪意の有無なんてあってもなくても意味はないけど。
「やってる事は迷惑だし力が大きすぎる。でも本人は別に悪い奴じゃない。だから嫌いじゃない。そんな感じです」
俺は苦笑しながらそう言っておいた。
「ハヌマーンも嫌われていない事がわかるのでしょう、そなたに執着しています」
「あ~、うん。初めての友達って奴なんじゃないでしょうか」
それは他に誰もいなかったら執着しちゃうよね。友達のいない子供と一緒だ。
お師匠様の事は頼りにしていても、仲間とは思えなかっただろうしな。
「ですから、ハヌマーンが大人しく修行を続けられるか不安です」
「俺が下界に戻る時に、ハヌマーンも着いてきちゃいそうって事?」
「ええ」
お師匠様としてはハヌマーンを天界に戻す気はないんだけど、修行だけはもう少し続けさせたいらしい。
その『もう少し』ってのが天界基準で何百年とかなんだろうけど。
「友達って、何年経っても元通りっていうか、『よう、久し振り』って話せるもんなんですよね。だからハヌマーンもまた会おうぜって、修行が終わったら会いに来いよって言ったらそれで済むような気がする」
「そうでしょうか」
「気がするだけですけど」
いやだって、生きてきた環境が違い過ぎて、全く違う考え方をしたとしてもしようがないかなって。
「わかりました。そなたに着いていこうとした時には、私が止めましょう」
スッと睫毛を伏せてそう言ったお師匠様が怖い。
そう言えば、緊箍児を嵌め直されたんだもんな。いざとなったらキュッてしたら良いのか。
ハヌマーン、頑張れよ。
(ポイントってなんだよ、ゲームかよ)
そう思いつつもこれも修行の一環なんだろう、或いはチームワークとか主従の絆を育む何かなのだろうと思って気にしない事にする。
俺はお供に何を頼めば良いのかお師匠様に訊いてみた。
「薬の材料調達や、探し物を頼むのが基本です。それから自分よりも大きい動物であれば移動の足となって貰ったり、休む時の目隠しにもなって役立ちます」
えっ、そんな扱いなの? そりゃあ、お師匠様はずっと子像に乗ってるけどさ。
「彼らが力を付ければ天界と下界を往き来できるようになり、薬の材料を天界から調達して来られます」
「えっ、それってもしかして、下界にいながら天界の果物や甘味を手に入れられるって事?」
吃驚して訊ねた俺に、お師匠様はちょっとだけ怖い顔になって釘を刺した。
「仙果万桃の成っている果樹園には、神の許しがないと入れません。例え命じても、持ってこられないでしょう。甘味は――大神との話し合い次第でしょうね」
「そっかぁ……」
まぁ、俺だけ甘味が手に入っても無意味なんだけどさ。
「じゃあ折角だから、天界の材料を使った薬の作り方を教えて頂けませんか? 勿論、不死薬以外で」
例え甘露と仙桃が手に入らなくても、天界の材料で薬を作れたら物凄いアドバンテージだよね?
そんな事は多分、俺にしか出来ないんだから。
「いいでしょう。では再生薬の作り方を教えましょう」
「再生薬?」
「傷付いたり、古くなった細胞を再生する薬です。これを塗って神々は生まれたての肌を保っているのです」
「美容液かよ!」
思わずそう叫んだけれど、傷が再生するなら外傷薬として使える訳で、病気にしか効かない万能薬を補完する事が出来る。
「それって千切れた腕が新しく生えたりは……」
「しますよ」
四肢欠損も治すのかよ!
「但しそなたの今の実力では無理でしょう。精々、指一本を生せるくらいでしょう」
いや、それで十分じゃね? あ、でも剣でバサァーッて斬られたら治らないのか?
じゃあいっそ本当に美容液として売ったら売れるかも。
『バサバサだったあなたの毛もサラサラのツヤツヤに! 死んだ毛根だって復活します!』
なぁ~んて売り込んだら、獣人にも売れるんじゃない?
獣人にとって毛並みというのは重要なチャームポイントだからね。
どちらにせよ覚えて損はないものなので、俺は再生薬の作り方を習うことにした。
「そう言えば、ハヌマーンの方はどうなってますか? もう万能薬を作れるようになりましたか?」
「いえ、まだ暫く掛かるでしょう」
そうか。ハヌマーンは調合を覚えるのが苦手そうだったものな。
早く再生薬を作れるようになって、きっと毟り過ぎて薄くなったであろう毛を生やすのに使って貰おう。
「そなたは緊箍児を扱えるとは言え、ハヌマーンが怖くはないのですか?」
お師匠様が唐突にそう訊いてきた。
俺は別に怖くないと答えかけ、途中で思い直した。
「いや、最初は怖かったですね。だって悪相だし、てっきり仲間なんだろうと思っていた猩々をものも言わずにぶっ飛ばしてたし。これは話なんて通じない、力尽くでどうにかするしか無いのか……と思ったんだけど、ロクも負けちゃうしさ」
「負けてはいない。まだ戦えた」
ロクがムッとしながら口を挟んできた。
冒険者をしていた所為か、意外と好戦的で負けず嫌いな所がある。
「負けてないけど、あんな怪我を負うのは見てられないよ」
「次は無傷で勝つ」
もうっ、戦うなって言ってるのに。
「だったら次はすっごい甘いキスをするからな」
「そうか、それは楽しみだ」
甘いのは嫌いな癖に余裕でムカつく。
俺はロクが降参するくらい甘いお菓子を思い出そうと頑張った。
「ハヌマーンは……」
「あっ、ハヌマーンね! 忘れてた!」
「ハヌマーンは悪ではないのです。ただ傍迷惑で考え無しなだけです」
「お師匠様、それちっとも擁護しているように聞こえませんよ? まぁ、言ってることはわかるような気がしますけど」
ハヌマーンには悪意ってものはなくて、ただ自分の思ったように行動しているだけだ。
それが人には太刀打ち出来ないほど大きな力で、迷惑してるって時点でもう悪意の有無なんてあってもなくても意味はないけど。
「やってる事は迷惑だし力が大きすぎる。でも本人は別に悪い奴じゃない。だから嫌いじゃない。そんな感じです」
俺は苦笑しながらそう言っておいた。
「ハヌマーンも嫌われていない事がわかるのでしょう、そなたに執着しています」
「あ~、うん。初めての友達って奴なんじゃないでしょうか」
それは他に誰もいなかったら執着しちゃうよね。友達のいない子供と一緒だ。
お師匠様の事は頼りにしていても、仲間とは思えなかっただろうしな。
「ですから、ハヌマーンが大人しく修行を続けられるか不安です」
「俺が下界に戻る時に、ハヌマーンも着いてきちゃいそうって事?」
「ええ」
お師匠様としてはハヌマーンを天界に戻す気はないんだけど、修行だけはもう少し続けさせたいらしい。
その『もう少し』ってのが天界基準で何百年とかなんだろうけど。
「友達って、何年経っても元通りっていうか、『よう、久し振り』って話せるもんなんですよね。だからハヌマーンもまた会おうぜって、修行が終わったら会いに来いよって言ったらそれで済むような気がする」
「そうでしょうか」
「気がするだけですけど」
いやだって、生きてきた環境が違い過ぎて、全く違う考え方をしたとしてもしようがないかなって。
「わかりました。そなたに着いていこうとした時には、私が止めましょう」
スッと睫毛を伏せてそう言ったお師匠様が怖い。
そう言えば、緊箍児を嵌め直されたんだもんな。いざとなったらキュッてしたら良いのか。
ハヌマーン、頑張れよ。
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