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㊷真の敵−2
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「ちょっと待ってよ! それじゃあ獣神は自分たちが繁殖する為に人を利用したって事? お師匠様が神から人を救うって言ったのは、大神からではなく獣神から人を救うって事?」
「そうです。大神や他の神があなた方を見捨てても、私は見捨てる事が出来ません。人を救う神ですから」
……待ってよ。そうしたら獣神が襲ってきた時に危険なのは獣人だけで、人間は無事でいられる? 神霊を失くした獣人がどういう状態になるのかはわからないけど、今と同じではいられないだろう。きっとこれまでとは全く立場が逆になる。この国の国王も貴族も一気にその地位を失う。そしてこれまで虐げられていた人間たちが上に立ったら――。
俺は心の底からゾッとした。
この国で生まれた訳でも差別を受けた訳でもない俺にだってわかる。
(絶対にやり返される!)
「ロクッ!」
「わかってる。自業自得の一言では済まない。余りにも歪みが大きすぎる」
そうだよ、そんな急激な変化は影響が大きすぎる。
それに貴族には少なくても、平民には獣人と人間のカップルなんて沢山いる。
家族の中で神霊を持つ兄と持たない弟がいる事だって珍しくない。
それらが全て崩れ去るんだ。
「お師匠様、神霊を奪われる訳にはいかない!」
「ええ、幾つか獣神たちの思惑が外れたところもあります。まず、全てが獣人とはならずに人間が残った事。それから神霊と獣人の結びつきが思ったよりも深い事。神々が中々下界を諦めなかった事などです」
「下界を諦めなかった? でも興味が無いんでしょう?」
「大神や一部の神は興味を無くしていますが、それまでに介入しようとはしました。神霊を持つ獣人に神が影響を与える事は出来ませんが、その代わりに獣から神を作ろうとしたり、人間から神を作ろうとしましたが上手くいきませんでした。私は獣神ではなく私たち人型の神を欲する地があれば、そこに新たな人間界を作るのも手だと思いました」
……そっか。お師匠様からすれば今の獣人や人間を保護するよりも、新しい人が一定数いればそれで良かったのか。薄情に見えるけど、種を保護するという観点からは間違っちゃいないのかもな。
「布教活動は余り上手く行かなかったの?」
「イチヤ、私だって下界を放棄したい訳では無いのです。獣人も人間も同じ人ですから、出来ればどちらも救いたい」
その割には獣人に当たりがキツイ気がするけど、それは姿が獣神を思い出させるからかもしれない。
自分たちではなく獣神を人間が受け入れたという事実が悔しかったからかもしれない。
神とはいえ、感情がない訳ではないものな。
「それで、大神は神格の高い神だから、大神が天界にいるうちは獣神が戻ってこられない、手を出せないって事ですか?」
「そうです。最初に獣神たちが来た時も、人間が受け入れなければこんな事にはならなかったのですが……」
いやでもそれはしようがないんじゃん? 獣に襲われて為す術がなかったのかもしれないし、ロクと一緒で凄く気持ちのいいちんこを持ってて抵抗できなかったのかもしれないし、単純に強くてカッコイイって思ったのかもしれない。神霊を発生させてそれを刈り取る圃場にしようと企んでいたなんて、誰も思い付かないって。
「獣人も人間も獣神の血を引いていますから、私たちの影響は受けません。ですから甘いものを与えても無駄だと、大神は取り上げてしまわれたのです」
なるほど。甘いものを摂取していたら、そして獣神の血が入ってなければ神格が上がったかもしれないのか。
「俺は純粋な人間だから、天界の甘いものを食べたら神格を得るかもしれない」
「そうです」
「でも神格を得たら、ロクに影響を与える事はなくなる。何故なら神の力だから」
「恐らく」
「俺が……ロクの食べ物じゃなくなったら、下界に戻っても狙われる事はなくなるかもしれない。それにもしかしたら、最後までしても強制送還されないかもしれない。ロクは神格を得たから俺を摂取しなくても強靭だろうし、今なら俺が神格を得ても問題はない」
「……」
でもお師匠様はそうだとは言わなかった。
それで俺はやっぱり、と溜め息を吐いた。
「おかしいと思ったんだよ。俺には無理な方法ばかりで修行して、最初から神格を上げるつもりはなかったんですね?」
「ええ」
「どうしてですか? 何の問題があるんです?」
俺はロクと一緒なら人間を辞めたって構わない。でもお師匠様は問題があると言う。それは一体何故だろう?
「それはそなたが異世界人だからです」
お師匠様の言葉に、俺は思わず固まった。
「そうです。大神や他の神があなた方を見捨てても、私は見捨てる事が出来ません。人を救う神ですから」
……待ってよ。そうしたら獣神が襲ってきた時に危険なのは獣人だけで、人間は無事でいられる? 神霊を失くした獣人がどういう状態になるのかはわからないけど、今と同じではいられないだろう。きっとこれまでとは全く立場が逆になる。この国の国王も貴族も一気にその地位を失う。そしてこれまで虐げられていた人間たちが上に立ったら――。
俺は心の底からゾッとした。
この国で生まれた訳でも差別を受けた訳でもない俺にだってわかる。
(絶対にやり返される!)
「ロクッ!」
「わかってる。自業自得の一言では済まない。余りにも歪みが大きすぎる」
そうだよ、そんな急激な変化は影響が大きすぎる。
それに貴族には少なくても、平民には獣人と人間のカップルなんて沢山いる。
家族の中で神霊を持つ兄と持たない弟がいる事だって珍しくない。
それらが全て崩れ去るんだ。
「お師匠様、神霊を奪われる訳にはいかない!」
「ええ、幾つか獣神たちの思惑が外れたところもあります。まず、全てが獣人とはならずに人間が残った事。それから神霊と獣人の結びつきが思ったよりも深い事。神々が中々下界を諦めなかった事などです」
「下界を諦めなかった? でも興味が無いんでしょう?」
「大神や一部の神は興味を無くしていますが、それまでに介入しようとはしました。神霊を持つ獣人に神が影響を与える事は出来ませんが、その代わりに獣から神を作ろうとしたり、人間から神を作ろうとしましたが上手くいきませんでした。私は獣神ではなく私たち人型の神を欲する地があれば、そこに新たな人間界を作るのも手だと思いました」
……そっか。お師匠様からすれば今の獣人や人間を保護するよりも、新しい人が一定数いればそれで良かったのか。薄情に見えるけど、種を保護するという観点からは間違っちゃいないのかもな。
「布教活動は余り上手く行かなかったの?」
「イチヤ、私だって下界を放棄したい訳では無いのです。獣人も人間も同じ人ですから、出来ればどちらも救いたい」
その割には獣人に当たりがキツイ気がするけど、それは姿が獣神を思い出させるからかもしれない。
自分たちではなく獣神を人間が受け入れたという事実が悔しかったからかもしれない。
神とはいえ、感情がない訳ではないものな。
「それで、大神は神格の高い神だから、大神が天界にいるうちは獣神が戻ってこられない、手を出せないって事ですか?」
「そうです。最初に獣神たちが来た時も、人間が受け入れなければこんな事にはならなかったのですが……」
いやでもそれはしようがないんじゃん? 獣に襲われて為す術がなかったのかもしれないし、ロクと一緒で凄く気持ちのいいちんこを持ってて抵抗できなかったのかもしれないし、単純に強くてカッコイイって思ったのかもしれない。神霊を発生させてそれを刈り取る圃場にしようと企んでいたなんて、誰も思い付かないって。
「獣人も人間も獣神の血を引いていますから、私たちの影響は受けません。ですから甘いものを与えても無駄だと、大神は取り上げてしまわれたのです」
なるほど。甘いものを摂取していたら、そして獣神の血が入ってなければ神格が上がったかもしれないのか。
「俺は純粋な人間だから、天界の甘いものを食べたら神格を得るかもしれない」
「そうです」
「でも神格を得たら、ロクに影響を与える事はなくなる。何故なら神の力だから」
「恐らく」
「俺が……ロクの食べ物じゃなくなったら、下界に戻っても狙われる事はなくなるかもしれない。それにもしかしたら、最後までしても強制送還されないかもしれない。ロクは神格を得たから俺を摂取しなくても強靭だろうし、今なら俺が神格を得ても問題はない」
「……」
でもお師匠様はそうだとは言わなかった。
それで俺はやっぱり、と溜め息を吐いた。
「おかしいと思ったんだよ。俺には無理な方法ばかりで修行して、最初から神格を上げるつもりはなかったんですね?」
「ええ」
「どうしてですか? 何の問題があるんです?」
俺はロクと一緒なら人間を辞めたって構わない。でもお師匠様は問題があると言う。それは一体何故だろう?
「それはそなたが異世界人だからです」
お師匠様の言葉に、俺は思わず固まった。
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