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82.ドーピング大好き!−2
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「イチヤ様?」
「あ、ごめん。練乳のチューブに口を付けて、チュウチュウ吸いたいな~と思ってた」
「練乳のチューブ?」
「一気飲みすると最高なんだ」
見ていて胸焼けがするから止めろ、気持ちが悪いと友人には散々な言われようだった。
でもこっちの人はそんなことを言わないもんね。
「イチヤ様が召し上がりたいのならお作りします」
「ありがとう。プロテイン作りが落ち着いたら頼むね」
まずは君たちをムキムキにするのだ。
俺から見たらもう十分にムキムキだけどね。
「しかし呪われませんかね」
オドオドと料理人が言うのを聞いて、俺はそんなことを心配するのかと感心してしまった。
いや、呪いなら白妙の管轄だし、この世界にそういうものが本当にあるってのはわかる。
わかるんだが、挽いた大豆を食べて呪われるかもしれないとは思わない。
(大豆を食べて呪われるなら、虫とか鳥を殺すことはどうなの? 人殺しは?)
俺が不思議なのは、こっちの人たちはそんな軟弱な神経をしているようには見えないってことだ。
だって人間を虐めたり差別したりして呪われる心配はしないのに、大豆の悲鳴が呪われそうで怖いってどうゆうこと? ちょっとズレてない?
不思議に思う俺の疑問を晴らしてくれたのは金鍔だった。
実はこの世界の植物には、獣人にだけ毒となる成分が含まれていることがある。
毒だから見た目や行動の恐ろしいものに含まれていることが多く、大半の獣人がそれを呪いだと信じていた。
『毒だから、聖水で治るものもあれば効かぬものもあるでござるよ』
「つまり強い毒か、弱い毒かってことだね?」
『さようでござる』
ふむ。呪いであっても考え方は同じか。
「毒には余り詳しくない」
『一部の人以外は知らないようでござる』
「一部の人っていうのは、学者や森入る人たちなのかな?」
或いはアーロンたちみたいに、山岳民族であれば知っていたりするのかもしれない。
「もしも毒だとしても、神薬があるから大丈夫だよ。それか白妙に見て貰えば、毒があるかどうかわかるかも」
俺は粉状にすり潰した大豆を白妙に見て貰った。
『弱毒。飲むと少し痛い。でもよく効く』
「よく効く?」
『飲むとモリモリ』
え? もしかして、筋肉痛みたいに痛みを感じるけどムキムキになれるってこと?
『痛み消す、モリモリにならない』
おおぅ、毒を消すと効果まで消しちゃうってことだね。
ちょっと悩ましいけれど、まぁ俺が飲むんじゃないし?
「どのくらい痛いのか、取り敢えず実験してみよっか」
俺はいい笑顔で料理人たちを見回した。
***
「イチヤ様っ! 動けませんっ!」
料理人の一人が涙を振り絞ってそう叫んだ。
「はは、泣かない泣かない。グッと床を押し返してごらん? 痛みと共に筋肉が増えるから」
「ふぁあああっ!」
料理人はボロボロと泣きながら思い切り腕を伸ばした。
俺には数回しか出来ない腕立て伏せを、彼らは大豆プロテインを飲んだ状態で何百回と行っている。
これが泣くほど辛いらしい。
「増えたっ! いま筋肉が増えましたっ!」
料理人はぐちゃぐちゃになった泣き笑いの凄い顔で嬉しそうに叫んだ。
彼ら曰くプロテインを飲んで筋肉を酷使すると、泣くほど痛いのに筋肉量が増えていることを確かに実感できるのだと言う。
人種の違いなのか異世界人だからなのか、俺はプロテインを飲んでも痛くもないし効きもしない。
(味の試行錯誤はするつもりだったけど、まさかどのくらいの痛みなら許容範囲なのか調べることになるとはね)
勿論、国王がムキムキの身体を手に入れる為に痛みを堪えなくちゃいけないというのはざまぁみろという気持ちだ。
これなら不可抗力だし、俺が悪い訳じゃないし、嫌なら向こうが諦めれば良いんだし。
俺は満面の笑顔で国王に秘薬を献上する自信がある。
問題は……。
「イチヤ様っ! もっと……もっと強い薬を下さいっ!」
ハァハァと息を荒げて涎を垂らしながら懇願する下っ端料理人はまるでジャンキーだが、奴がしていることはプロテインの摂取と筋トレだ。
ただそこに痛みを伴い、その成果が実感できるというだけ。
「えーと、君の名前はカールだっけ? なんか……危ない扉を開いちゃったみたいだけど、余り強い痛みは危険だからね、徐々に上げていこ?」
「もっと痛みをぉぉぉぉ!」
ンッ、なんかこの手合を量産しちゃいそうで嫌だなぁ。
(プロテインは国王に献上するだけにしておくか?)
そう思って俺は死屍累々と床に転がった獣人たちを見る。
(うん、無理だな。泣いてしんどがってた奴までなんだかんだと最後までトレーニングを止めなかった。きっと獣人は、ちょっと痛くてちょっときつくて達成感もあるこの特殊な訓練に夢中になる。下手をしたら軟膏よりも売れる商品になる)
売れるんなら止める必要はないよな。
俺はプロテインを初級、中級、上級、特級の四段階に分けて売ることにした。
勿論、国王に献上するのは一番痛くて結果が出る特級の更に上のランクだ。
(一応、ロクにも求められたら渡す予定だけど……痛いのが大好きになったら嫌だな)
俺はロクが新たな扉を開かないことを祈りつつ、最強プロテインの開発に精を出した。
「あ、ごめん。練乳のチューブに口を付けて、チュウチュウ吸いたいな~と思ってた」
「練乳のチューブ?」
「一気飲みすると最高なんだ」
見ていて胸焼けがするから止めろ、気持ちが悪いと友人には散々な言われようだった。
でもこっちの人はそんなことを言わないもんね。
「イチヤ様が召し上がりたいのならお作りします」
「ありがとう。プロテイン作りが落ち着いたら頼むね」
まずは君たちをムキムキにするのだ。
俺から見たらもう十分にムキムキだけどね。
「しかし呪われませんかね」
オドオドと料理人が言うのを聞いて、俺はそんなことを心配するのかと感心してしまった。
いや、呪いなら白妙の管轄だし、この世界にそういうものが本当にあるってのはわかる。
わかるんだが、挽いた大豆を食べて呪われるかもしれないとは思わない。
(大豆を食べて呪われるなら、虫とか鳥を殺すことはどうなの? 人殺しは?)
俺が不思議なのは、こっちの人たちはそんな軟弱な神経をしているようには見えないってことだ。
だって人間を虐めたり差別したりして呪われる心配はしないのに、大豆の悲鳴が呪われそうで怖いってどうゆうこと? ちょっとズレてない?
不思議に思う俺の疑問を晴らしてくれたのは金鍔だった。
実はこの世界の植物には、獣人にだけ毒となる成分が含まれていることがある。
毒だから見た目や行動の恐ろしいものに含まれていることが多く、大半の獣人がそれを呪いだと信じていた。
『毒だから、聖水で治るものもあれば効かぬものもあるでござるよ』
「つまり強い毒か、弱い毒かってことだね?」
『さようでござる』
ふむ。呪いであっても考え方は同じか。
「毒には余り詳しくない」
『一部の人以外は知らないようでござる』
「一部の人っていうのは、学者や森入る人たちなのかな?」
或いはアーロンたちみたいに、山岳民族であれば知っていたりするのかもしれない。
「もしも毒だとしても、神薬があるから大丈夫だよ。それか白妙に見て貰えば、毒があるかどうかわかるかも」
俺は粉状にすり潰した大豆を白妙に見て貰った。
『弱毒。飲むと少し痛い。でもよく効く』
「よく効く?」
『飲むとモリモリ』
え? もしかして、筋肉痛みたいに痛みを感じるけどムキムキになれるってこと?
『痛み消す、モリモリにならない』
おおぅ、毒を消すと効果まで消しちゃうってことだね。
ちょっと悩ましいけれど、まぁ俺が飲むんじゃないし?
「どのくらい痛いのか、取り敢えず実験してみよっか」
俺はいい笑顔で料理人たちを見回した。
***
「イチヤ様っ! 動けませんっ!」
料理人の一人が涙を振り絞ってそう叫んだ。
「はは、泣かない泣かない。グッと床を押し返してごらん? 痛みと共に筋肉が増えるから」
「ふぁあああっ!」
料理人はボロボロと泣きながら思い切り腕を伸ばした。
俺には数回しか出来ない腕立て伏せを、彼らは大豆プロテインを飲んだ状態で何百回と行っている。
これが泣くほど辛いらしい。
「増えたっ! いま筋肉が増えましたっ!」
料理人はぐちゃぐちゃになった泣き笑いの凄い顔で嬉しそうに叫んだ。
彼ら曰くプロテインを飲んで筋肉を酷使すると、泣くほど痛いのに筋肉量が増えていることを確かに実感できるのだと言う。
人種の違いなのか異世界人だからなのか、俺はプロテインを飲んでも痛くもないし効きもしない。
(味の試行錯誤はするつもりだったけど、まさかどのくらいの痛みなら許容範囲なのか調べることになるとはね)
勿論、国王がムキムキの身体を手に入れる為に痛みを堪えなくちゃいけないというのはざまぁみろという気持ちだ。
これなら不可抗力だし、俺が悪い訳じゃないし、嫌なら向こうが諦めれば良いんだし。
俺は満面の笑顔で国王に秘薬を献上する自信がある。
問題は……。
「イチヤ様っ! もっと……もっと強い薬を下さいっ!」
ハァハァと息を荒げて涎を垂らしながら懇願する下っ端料理人はまるでジャンキーだが、奴がしていることはプロテインの摂取と筋トレだ。
ただそこに痛みを伴い、その成果が実感できるというだけ。
「えーと、君の名前はカールだっけ? なんか……危ない扉を開いちゃったみたいだけど、余り強い痛みは危険だからね、徐々に上げていこ?」
「もっと痛みをぉぉぉぉ!」
ンッ、なんかこの手合を量産しちゃいそうで嫌だなぁ。
(プロテインは国王に献上するだけにしておくか?)
そう思って俺は死屍累々と床に転がった獣人たちを見る。
(うん、無理だな。泣いてしんどがってた奴までなんだかんだと最後までトレーニングを止めなかった。きっと獣人は、ちょっと痛くてちょっときつくて達成感もあるこの特殊な訓練に夢中になる。下手をしたら軟膏よりも売れる商品になる)
売れるんなら止める必要はないよな。
俺はプロテインを初級、中級、上級、特級の四段階に分けて売ることにした。
勿論、国王に献上するのは一番痛くて結果が出る特級の更に上のランクだ。
(一応、ロクにも求められたら渡す予定だけど……痛いのが大好きになったら嫌だな)
俺はロクが新たな扉を開かないことを祈りつつ、最強プロテインの開発に精を出した。
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