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82.ドーピング大好き!−1
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基本的にこの世界の豆類はとても攻撃的だ。
だから収穫する時は地面に落ちているものを拾うか、攻撃させてから盾で防いで無理矢理に毟り取る。
なんだか植物と人とどっちが酷いのかわからない話だけど、ともかくその所為で豆類はそれほど出回っていない。
「豆からは良質なプロテインが採れるんだよ。粉にして砂糖と混ぜても美味しいし、豆腐……はちょっと作り方がわからないや」
俺は豆腐が大豆から出来ていることと、にがりを使うことくらいしか知らない。
一から作るのはかなり大変そうだし、まずは簡単そうなきな粉を作ろう。
「お前が必要ならば取り寄せるが、どのくらい必要なんだ?」
「毎日飲むものだから、結構な量がいると思う」
体つくりが趣味の友人が、『筋肉は一日にしてならず!』ってよく叫んでいた。
そしてせっせと筋トレをする合間にプロテインを飲んでいた。
俺が知る限り、奴は一日にジョッキ三杯はプロテインを飲んでいたのではないかと思う。
「なら私が直接採りに行こう」
ロクがサラッとそう言ったので、俺は物凄く慌てた。
「いやいやいや、めちゃくちゃ忙しいのに何を言ってるんだよ!」
ただでさえ忙しいのに、俺と五日間も寝室に籠もりきりになっていた所為で書類は山積みになっている。
「しかし私が他に出来ることは無いからな」
「そんなことないよ」
ロクは神薬作りを手伝えないことを気にしているようだが、本当にそんなことを気にする必要はない。
みんなが俺の言うことを聞いてくれるのはロクのお陰だし、疲れていても、上手くいかなくて凹んでも、ロクが出迎えてくれるから俺はまた難題に立ち向かうことが出来る。
寧ろロクにしか出来ないことなんだからね。
「そんなことを言ったら、俺の方が出来ないことだらけだよ」
俺は男だし、人間だし、ロクサーン侯爵の番として求められるものを一つも持っていない。
でも、だから駄目だとは今は思わない。
俺には俺にしか出来ないことがあるし、ロクにも求められている。
だから俺が引け目に思うことなんて無いし、それはロクも一緒だ。
「チヤが出来ないことは、私が出来るから問題ない。お前は……いてくれるだけでいいんだ」
ロクに手を取られて甲に口付けられ、俺はレディかよ、と思いつつも大事にされているようで嬉しい。
ロクに乞われている。愛されている。
こんなに幸せなことってない。
「えーと、俺もロクとおんなじ気持ち。あんたが……いてくれるだけで嬉しいし、幸せ」
「チヤ……余り可愛いことを言うと、手放してやれなくなるぞ?」
「それはダメ。これ以上、あんたを独り占めしてたら、みんなに恨まれちゃうよ」
特に秘書官のジェスが本気で泣いてしまう。
「わかった」
ロクが大人しく引き下がり、執務室へ行ってしまうのを寂しく見送る。
(チェッ。もう少しだけイチャイチャしていたかったな)
自分が諌めた癖に、俺はそんなことを思ってしまった。
でも夜になれば一緒に眠れるのだと、気を取り直して俺も仕事に向かった。
***
「イチヤ様、準備は宜しいですか?」
「ああ。いつでもやってくれ」
俺は料理長にコクリと頷き、ギュッと耳を塞いだ。
石臼の隙間から断末魔のようなおどろおどろしい悲鳴が響き、サラサラと粉が溢れていく。
(まさか大豆をすり潰すと悲鳴をあげるなんて思わなかった)
下っ端の料理人たちが、俺をまるで極悪非道な人を見るような目で見ているのが悲しい。
(俺だって、知ってたらもう少しやり方を考えたよ!)
でも直前まで知らなかったし(みんな俺が知っていると思って特に言及しなかった)、悲鳴といったってキャーキャー鳴くだけだろうと軽く考えていた。
まさかこんなに胸を抉ってくるとは。
「イチヤ様、取り敢えず最初の豆は挽けましたが……本当に食べるんですか?」
「食べるよ。だって他の調理法では食べてるんでしょ? 挽いたから食べられないって理由はないじゃん」
「何も痛めつけてまで食べなくても、と避けられてきたのです」
「で、でもっ、この方法だとプロテインを効率的に摂取出来るんだよっ!」
「プロテイン……なにやら恐ろしげな響きですね」
そうかぁぁぁ? 熊型獣人の料理長にはピッタリだと思うけど。
「牛乳からもプロテインは作れるけど、作り方を知らないんだよ。水分が飛ぶように煮詰めても、練乳が出来そうだし――あ、練乳はそれとは別に作ってみる気だけどね」
練乳が作れたら、そこから多分キャラメルを作れるし、パンに塗ってもそのまま食べても美味しい。
氷を削ってかき氷にしてもいい。
だから収穫する時は地面に落ちているものを拾うか、攻撃させてから盾で防いで無理矢理に毟り取る。
なんだか植物と人とどっちが酷いのかわからない話だけど、ともかくその所為で豆類はそれほど出回っていない。
「豆からは良質なプロテインが採れるんだよ。粉にして砂糖と混ぜても美味しいし、豆腐……はちょっと作り方がわからないや」
俺は豆腐が大豆から出来ていることと、にがりを使うことくらいしか知らない。
一から作るのはかなり大変そうだし、まずは簡単そうなきな粉を作ろう。
「お前が必要ならば取り寄せるが、どのくらい必要なんだ?」
「毎日飲むものだから、結構な量がいると思う」
体つくりが趣味の友人が、『筋肉は一日にしてならず!』ってよく叫んでいた。
そしてせっせと筋トレをする合間にプロテインを飲んでいた。
俺が知る限り、奴は一日にジョッキ三杯はプロテインを飲んでいたのではないかと思う。
「なら私が直接採りに行こう」
ロクがサラッとそう言ったので、俺は物凄く慌てた。
「いやいやいや、めちゃくちゃ忙しいのに何を言ってるんだよ!」
ただでさえ忙しいのに、俺と五日間も寝室に籠もりきりになっていた所為で書類は山積みになっている。
「しかし私が他に出来ることは無いからな」
「そんなことないよ」
ロクは神薬作りを手伝えないことを気にしているようだが、本当にそんなことを気にする必要はない。
みんなが俺の言うことを聞いてくれるのはロクのお陰だし、疲れていても、上手くいかなくて凹んでも、ロクが出迎えてくれるから俺はまた難題に立ち向かうことが出来る。
寧ろロクにしか出来ないことなんだからね。
「そんなことを言ったら、俺の方が出来ないことだらけだよ」
俺は男だし、人間だし、ロクサーン侯爵の番として求められるものを一つも持っていない。
でも、だから駄目だとは今は思わない。
俺には俺にしか出来ないことがあるし、ロクにも求められている。
だから俺が引け目に思うことなんて無いし、それはロクも一緒だ。
「チヤが出来ないことは、私が出来るから問題ない。お前は……いてくれるだけでいいんだ」
ロクに手を取られて甲に口付けられ、俺はレディかよ、と思いつつも大事にされているようで嬉しい。
ロクに乞われている。愛されている。
こんなに幸せなことってない。
「えーと、俺もロクとおんなじ気持ち。あんたが……いてくれるだけで嬉しいし、幸せ」
「チヤ……余り可愛いことを言うと、手放してやれなくなるぞ?」
「それはダメ。これ以上、あんたを独り占めしてたら、みんなに恨まれちゃうよ」
特に秘書官のジェスが本気で泣いてしまう。
「わかった」
ロクが大人しく引き下がり、執務室へ行ってしまうのを寂しく見送る。
(チェッ。もう少しだけイチャイチャしていたかったな)
自分が諌めた癖に、俺はそんなことを思ってしまった。
でも夜になれば一緒に眠れるのだと、気を取り直して俺も仕事に向かった。
***
「イチヤ様、準備は宜しいですか?」
「ああ。いつでもやってくれ」
俺は料理長にコクリと頷き、ギュッと耳を塞いだ。
石臼の隙間から断末魔のようなおどろおどろしい悲鳴が響き、サラサラと粉が溢れていく。
(まさか大豆をすり潰すと悲鳴をあげるなんて思わなかった)
下っ端の料理人たちが、俺をまるで極悪非道な人を見るような目で見ているのが悲しい。
(俺だって、知ってたらもう少しやり方を考えたよ!)
でも直前まで知らなかったし(みんな俺が知っていると思って特に言及しなかった)、悲鳴といったってキャーキャー鳴くだけだろうと軽く考えていた。
まさかこんなに胸を抉ってくるとは。
「イチヤ様、取り敢えず最初の豆は挽けましたが……本当に食べるんですか?」
「食べるよ。だって他の調理法では食べてるんでしょ? 挽いたから食べられないって理由はないじゃん」
「何も痛めつけてまで食べなくても、と避けられてきたのです」
「で、でもっ、この方法だとプロテインを効率的に摂取出来るんだよっ!」
「プロテイン……なにやら恐ろしげな響きですね」
そうかぁぁぁ? 熊型獣人の料理長にはピッタリだと思うけど。
「牛乳からもプロテインは作れるけど、作り方を知らないんだよ。水分が飛ぶように煮詰めても、練乳が出来そうだし――あ、練乳はそれとは別に作ってみる気だけどね」
練乳が作れたら、そこから多分キャラメルを作れるし、パンに塗ってもそのまま食べても美味しい。
氷を削ってかき氷にしてもいい。
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