【完結】俺の身体の半分は糖分で出来ている!? スイーツ男子の異世界紀行

海野ことり

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96.旅の途中ー1(R−15)最終話

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 獣人が異世界人の召喚を出来るのだから、神ならもっと容易く出来るに決まっている。
 ただ色んなルールや神同士の牽制があってやらないだけだ。

『しかしこの面子ならば構わぬだろう』
 そう言った小さい神の決まりが一体どうなっているのか俺はわからない。
 でもどうやらもう移動してしまったようだし、しかもそれは俺がいた世界の神界らしい。

『いいや、ここはまだ神界ではない。狭間の世界だ』
 狭間の世界?

『黄泉の国のようなものだ』
 うわ、命の危機を感じる……。
 俺は滅多に死なない身体になった筈なのに、簡単に死んでしまいそうだ。

『死にはせぬ』
 そう言ってニタリと笑った神がムカつく。
 いや、逃げ切れたとは思ってなかったけどさ。

「それで、どうして突然に割り込んできたの? あっちの争いはあなた達には関係ないよね?」
『うむ、関係ない。関係はないが、口を出したくなった』
「つまり?」
『強い神が手に入りそうだ』
「……」
 なるほど、俺が見繕って推薦するまで待てなかったのね。

「えっと、お師匠様は好みじゃないって言ってたよな?」
『好みではないが、ついでだ』
 確かお師匠様は出来損ないで、あの世界でなきゃ存在すら出来ないと言っていた。
 けれども此処に来られたということは、小さい神が力を貸したか、それか此処が狭間の世界だからだろう。
 俺の知らないことなんてまだまだ幾らでもあるんだろうなと、少し目が覚めた。

『異界の神が、我らに何用だ!』
 ちょっとタイガーなマスクを思わせるような虎っぽい獣神が吠えた。
 ぶわっと熱風が吹き付けてくるような威圧を叩き付けられたけど、今の俺はそれが虚仮威しに過ぎないと知っているので特にビビッたりはしない。
 ただ演出過多というか、芝居がかった神たちだと思う。

『勝負の場を提供してやる。但し儂にも分け前を寄越せ』
『分け前?』
 突然出てきたちっこいおっさんに分け前を寄越せと言われ、獣神たちが面食らっている。
 あっちの世界にはこんなに威厳のない神様っていないんだろうなぁ……。

「神様、ロクは駄目だし、獣神たちはなりかけの神じゃないよ」
 神様が対価として俺に求めたのは、“神になる可能性のあるもの” だ。

『気にするな。神の目に狂いはない』
 え~、ナニソレ怪しい。
 俺は神を万能だと思っていないし、結構あやふやでいい加減な存在だとも思っている。
 でも人とは違う視点を持っていることは確かだ。

『さあ、とっとと決着を付けたらどうだ?』
『言われるまでもないわ! 蹴散らしてくれる!』
 獣神たちがこちらを囲むように展開し、ロクとハヌマーン+お供?の猩々たちと向き直った。

(ああ~、どうしよう。絶対に勝ち目なんてある訳ないじゃん!)
 そう気ばかり焦るものの、俺には止める手段がなかった。
 獣神に屈しない、立ち向かうという姿勢を貫いている以上は逃げるなんて出来ない。
 第三者として止める力を持っている筈のお師匠様もおっさんの神様も止める気がない。
 獣神は勿論やる気だ。
 ここには俺の味方が一人もいない。

「なんで俺だけこんな孤立した気分になるかなぁ!」
 思わずそう嘆いたら、ハヌマーンがお前も遊べばいいと言った。

「遊び……そうか、遊びか」
 確かにハヌマーンはとても楽しそうで、ロクだって俺のことも忘れてワクワクしていて、獣神たちだってお師匠様だってこれからプロレスの団体戦でも始めるような空気だ。
 こんなんでいいのか? と思いつつも覚悟を決めた。

 ロクが勝てるとは思わない。
 でも殺させもしない。
 絶対に、俺がどうなっても助けて見せる。
 だから心ゆくまで戦えばいい。

 俺は結構な覚悟を決めて見守っていたのだけど、いざ戦闘となったらあっという間に獣神たちが蹴散らされて吃驚だ。

「ちょ、神の癖になんだよぅ!」
「イチヤ、獣神たちは堕ちかけの神です」
「堕ちかけ?」
 俺はお師匠様の言葉に眉を顰めて繰り返した。

「その昔、人と交わった時に彼らの神格が穢れました。神霊を取り戻すことで補完する予定だったのでしょうが、その計画が思ったよりも進まず、焦って猩々たちに手を出してみたけれどもそれも上手くいかなかった。そして今は――神になってすらいないロクサーン侯と、堕神のハヌマーンに簡単に蹴散らされてしまった。無様ですね」
 滔々と述べてから薄っすらと笑ったお師匠様が怖い。
 うぅぅ、やっぱり敵同士なんですね。

『こんな馬鹿なっ!』
 地に倒れ伏したままパニクる獣神を見て、なんだか申し訳ないような気になる。
 あれだけ傲岸不遜な態度を取っておいてこの体たらくじゃな。

「お前たちよりも、ハヌマーンの方がまだ強かったぞ?」
「おいっ! 俺と比べるな!」
 ロクの言葉にハヌマーンが噛み付いたが事実だった。
 堕神であるハヌマーンよりも、まだ神から堕ちていない獣神たちの方が弱かった。
 どうして?

『神にも弱い神と強い神がいると言っただろう』
 おっさんの神様がひょいひょいと出てきてそう言った。

『おまけに向き不向きもある。その神々は荒事には慣れておらんな』
「だって、獣神だよ!?」
 どう見たって武張った様子なのに。

『そういうこともある』
「え~、そんないい加減な」
 でも俺は神がそういう存在だと知っていた。
 だから寧ろ、俺を騙したのは絶対に勝てないと言ったお師匠様じゃないだろうか?

「あの、お師匠様? 俺たちじゃあ獣神には敵わないって言ってましたよね?」
「絶対に敵わないと決め付けたのはそなたで、私は可能性は零ではないと言いました」
「詭弁だ!」
 こっちが誤解するような言い方をしておいて、他意はなかったなんて信じないからな!

「私は師匠として、そなたが強くなれるよう導いただけです。藁にもすがる思いでなければ神霊と番ったりしなかったでしょう?」
「ッ!」
「お師匠様っ!」
 思わず手が出て、殴り飛ばされたお師匠様を見てハヌマーンが悲鳴をあげた。
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