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「おい、大丈夫か?」
石神にそう声をかけられた西島は、腹の痛みを堪えるようにして手で押さえつつ、ふらつきながらもなんとか立ち上がった。
黙っていられず石神に抗議する。
「い、石神。いくらなんでも、さっきのはひどいよ」
「え?」
「好きでもない相手から告白されて、面倒だったのは理解できる。でも、それを断るのに、偶然その場に顔を出しただけの俺を利用するのはあんまりだよ! しかも、好きだなんて嘘をつくなんて!」
藤原茜の最後の捨て台詞を思い出し、西島はため息をついた。
おそらく彼女は石神にフラれた腹いせと、告白を邪魔した西島に対する怒りから、さっきの出来事にウソと誹謗中傷を織り交ぜて、SNSを使って周囲に拡散するに違いない。
知り合いの多い人気者なだけに、情報はあらゆるところに広がることだろう。
世間というものは面白くない真実よりも、愉快で楽しいガセネタを信じようとする傾向にある。おそらく明日の朝には、西島は生粋のホモとして、学校中から白い目で見られる存在に仕立てられているに違いない。
その原因となった石神を、若干の非難を込めた目で西島は睨んだ。そこで、図らずも石神のイケメンっぷりを再認識させられてしまい、なんとなくムッとする。
優男というよりは男前に分類される眉のきりっとした顔つきに、西島よりも頭半分ほども高い身長。
性格は頼りがいのある器大きい系であり、また、多少の俺様系要素も持ち合わせていて、そこが女子に人気のポイントらしい。
鍛えられた体は逞しく、肩幅が広ければ胸板も厚いが部活には入っていない。小耳に挟んだ話では、小学生の頃から近所の道場に通っていて、そこで鍛えているとかなんとか。
今の時点では、西島と石神は同じ立場である。二人ともが藤原茜からホモと認定され、明日になれば一様に皆から白い目を向けられる存在のはずだ。
でも違うんだよなぁ、と西島は肩を落とす。
皆からの人気者であり、カーストでも最上位に君臨する石神ならば、ただ笑顔でこう言いさえすれば済む話だろう。
「俺がゲイ? なんだ、それ。面白い冗談だな、ははっ」
これだけでもう十分。
友人たちとゲラゲラ楽しく笑ってしまえば、この件は終了となるに違いない。
けれど、西島の場合はそうはいかない。石神とは違い、なにを言っても信じてもらえないに決まっている。
これまで仲が良かった友人たちからも「え、お前ってホモだったの?! キショッ!」と遠巻きにされてしまい、孤立する可能性さえある。
いや、その可能性しかないようにさえ思えるくらいだ。
「あー、もう、どうしよう。俺、間違いなく明日からいじめられっ子だよ」
「西島、さっきのことだけど」
絶望する西島に、石神が声をかけてきた。なんだろう、と西島は俯いていた顔を上げる。
今更謝ってもらってももう遅い。西島がホモだという偽情報は、今頃は拡散されている真っ最中だろうから。
けれどもまあ、謝ってくれるって言うのなら、それは勿論謝ってもらいたい。そんなことを思っていた西島に、石神が驚くべきことを言った。
「俺、おまえのこと好きだから。さっき言ったこと、嘘じゃないから」
石神にそう声をかけられた西島は、腹の痛みを堪えるようにして手で押さえつつ、ふらつきながらもなんとか立ち上がった。
黙っていられず石神に抗議する。
「い、石神。いくらなんでも、さっきのはひどいよ」
「え?」
「好きでもない相手から告白されて、面倒だったのは理解できる。でも、それを断るのに、偶然その場に顔を出しただけの俺を利用するのはあんまりだよ! しかも、好きだなんて嘘をつくなんて!」
藤原茜の最後の捨て台詞を思い出し、西島はため息をついた。
おそらく彼女は石神にフラれた腹いせと、告白を邪魔した西島に対する怒りから、さっきの出来事にウソと誹謗中傷を織り交ぜて、SNSを使って周囲に拡散するに違いない。
知り合いの多い人気者なだけに、情報はあらゆるところに広がることだろう。
世間というものは面白くない真実よりも、愉快で楽しいガセネタを信じようとする傾向にある。おそらく明日の朝には、西島は生粋のホモとして、学校中から白い目で見られる存在に仕立てられているに違いない。
その原因となった石神を、若干の非難を込めた目で西島は睨んだ。そこで、図らずも石神のイケメンっぷりを再認識させられてしまい、なんとなくムッとする。
優男というよりは男前に分類される眉のきりっとした顔つきに、西島よりも頭半分ほども高い身長。
性格は頼りがいのある器大きい系であり、また、多少の俺様系要素も持ち合わせていて、そこが女子に人気のポイントらしい。
鍛えられた体は逞しく、肩幅が広ければ胸板も厚いが部活には入っていない。小耳に挟んだ話では、小学生の頃から近所の道場に通っていて、そこで鍛えているとかなんとか。
今の時点では、西島と石神は同じ立場である。二人ともが藤原茜からホモと認定され、明日になれば一様に皆から白い目を向けられる存在のはずだ。
でも違うんだよなぁ、と西島は肩を落とす。
皆からの人気者であり、カーストでも最上位に君臨する石神ならば、ただ笑顔でこう言いさえすれば済む話だろう。
「俺がゲイ? なんだ、それ。面白い冗談だな、ははっ」
これだけでもう十分。
友人たちとゲラゲラ楽しく笑ってしまえば、この件は終了となるに違いない。
けれど、西島の場合はそうはいかない。石神とは違い、なにを言っても信じてもらえないに決まっている。
これまで仲が良かった友人たちからも「え、お前ってホモだったの?! キショッ!」と遠巻きにされてしまい、孤立する可能性さえある。
いや、その可能性しかないようにさえ思えるくらいだ。
「あー、もう、どうしよう。俺、間違いなく明日からいじめられっ子だよ」
「西島、さっきのことだけど」
絶望する西島に、石神が声をかけてきた。なんだろう、と西島は俯いていた顔を上げる。
今更謝ってもらってももう遅い。西島がホモだという偽情報は、今頃は拡散されている真っ最中だろうから。
けれどもまあ、謝ってくれるって言うのなら、それは勿論謝ってもらいたい。そんなことを思っていた西島に、石神が驚くべきことを言った。
「俺、おまえのこと好きだから。さっき言ったこと、嘘じゃないから」
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