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藤原茜に睨みつけられながら西島は思った。彼女の態度は当然だ、と。不可抗力だったとはいえ、告白の邪魔をしてしまったのだ。恨まれても仕方がない。
もしかして、その謝罪をするためにここに呼び戻されたのだろうか、と西島は思った。だとしたら話は早い、今すぐ謝ろう。そして課題プリントを取って、さっさと家に帰るんだ!
よし、と心を決めた西島が頭を下げようとしたそのタイミングで、教室の入口ドアを閉めた石神が、西島の後ろからこう言った。
「ほら藤原、こいつが西島だよ」
「クラスメイトなんだから、顔ぐらい知ってるし。あたしが言ってるのは、そういうことじゃなくて――」
「なんだ、知ってたのか。だったらもういいだろ?」
「良くないに決まってるよね。あたし、納得できないよ!」
西島を挟んだ前後の二人が、いきなり会話をし始めた。カースト上位様たちの会話に割って入れるはずもなく、西島は空気に徹して黙り込む。それにしても。
早く家に帰りたい。
謝ってすむ問題なら、早く謝らせて欲しい。
ってかこの二人、一体なんの話をしているんだ?
俺、ここにいる必要あるわけ?
なんてことを思っていた西島だったが、口に出すなんてことは当然ながらできやしない。仕方なく、謝るタイミングを計るために黙って耳をそばだてていたのだが、聞こえてきた石神の言葉に、顎が外れるほどの衝撃を受けた。
「とにかく、俺が好きなのはこの西島なんだから、おまえと付き合うのは絶対に無理だ」
えっと驚き、西島は勢いよく後ろの石神を振り返った。
自分よりもかなり高いところにある石神の目は、真っすぐに藤原茜に向けられている。その視線を追うようにして、西島も視線を藤原茜に移動させた。
するとそこには。
般若がいた。
藤原茜の恨みと憎しみと怒りの籠った両目は、はっきりと西島に向かっている。
あまりの恐怖に西島は「ヒーッ!!!!」と心の中でと叫んだ。
なんだ、これ。なにが起こってるんだよ?!
パニック寸前の西島がその場でガタガタ震えていると、藤原茜がつかつかと歩み寄ってきた。
「この腐れホモ野郎が!!! 死ね!」
憎々しくそう言い放つと、西島の腹に思いっきりグーパンを喰らわせたのである。
不意打ちを喰らった西島は、あまりの衝撃にその場に膝をついた。そして、痛む腹を抑えながらこう思う。
殴られるのは仕方がない。告白を邪魔してしまった自分も悪かった。
けど、ホモ野郎は違うから!
それは俺じゃなく石神だから!!
ホモが理由で殴るのなら、俺じゃなくて石神を殴るべきだから!!!
目をつぶって痛みに耐える西島の横を藤原茜が通り過ぎる時、頭上からこんなセリフが聞こえてきた。
「人をバカにして! アンタたち二人、絶対に許さないから。覚えてなさいよ!」
藤原茜はそう言い捨てると、乱暴にドアを開けて教室から出て行ったのだった。
もしかして、その謝罪をするためにここに呼び戻されたのだろうか、と西島は思った。だとしたら話は早い、今すぐ謝ろう。そして課題プリントを取って、さっさと家に帰るんだ!
よし、と心を決めた西島が頭を下げようとしたそのタイミングで、教室の入口ドアを閉めた石神が、西島の後ろからこう言った。
「ほら藤原、こいつが西島だよ」
「クラスメイトなんだから、顔ぐらい知ってるし。あたしが言ってるのは、そういうことじゃなくて――」
「なんだ、知ってたのか。だったらもういいだろ?」
「良くないに決まってるよね。あたし、納得できないよ!」
西島を挟んだ前後の二人が、いきなり会話をし始めた。カースト上位様たちの会話に割って入れるはずもなく、西島は空気に徹して黙り込む。それにしても。
早く家に帰りたい。
謝ってすむ問題なら、早く謝らせて欲しい。
ってかこの二人、一体なんの話をしているんだ?
俺、ここにいる必要あるわけ?
なんてことを思っていた西島だったが、口に出すなんてことは当然ながらできやしない。仕方なく、謝るタイミングを計るために黙って耳をそばだてていたのだが、聞こえてきた石神の言葉に、顎が外れるほどの衝撃を受けた。
「とにかく、俺が好きなのはこの西島なんだから、おまえと付き合うのは絶対に無理だ」
えっと驚き、西島は勢いよく後ろの石神を振り返った。
自分よりもかなり高いところにある石神の目は、真っすぐに藤原茜に向けられている。その視線を追うようにして、西島も視線を藤原茜に移動させた。
するとそこには。
般若がいた。
藤原茜の恨みと憎しみと怒りの籠った両目は、はっきりと西島に向かっている。
あまりの恐怖に西島は「ヒーッ!!!!」と心の中でと叫んだ。
なんだ、これ。なにが起こってるんだよ?!
パニック寸前の西島がその場でガタガタ震えていると、藤原茜がつかつかと歩み寄ってきた。
「この腐れホモ野郎が!!! 死ね!」
憎々しくそう言い放つと、西島の腹に思いっきりグーパンを喰らわせたのである。
不意打ちを喰らった西島は、あまりの衝撃にその場に膝をついた。そして、痛む腹を抑えながらこう思う。
殴られるのは仕方がない。告白を邪魔してしまった自分も悪かった。
けど、ホモ野郎は違うから!
それは俺じゃなく石神だから!!
ホモが理由で殴るのなら、俺じゃなくて石神を殴るべきだから!!!
目をつぶって痛みに耐える西島の横を藤原茜が通り過ぎる時、頭上からこんなセリフが聞こえてきた。
「人をバカにして! アンタたち二人、絶対に許さないから。覚えてなさいよ!」
藤原茜はそう言い捨てると、乱暴にドアを開けて教室から出て行ったのだった。
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