とある伯爵令息の初恋の行方

鳴海

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とある伯爵令息の初恋の行方

 伯爵家嫡男のルディには好きな人がいる。
 それは五才年上の母方の従兄弟、侯爵家次男のロベルトである。彼は幼い頃からルディの憧れの人だった。

 ロベルトの青い瞳は吸い込まれそうなほど澄んでいて美しいし、豊かに波打つ金髪はいつもキラキラ輝いている。
 まるで後光がさしているみたい、この人もしかして神様なんじゃないのかな、なんてことを子供の頃のルディはいつも思っていたものだ。

 またロベルトは、いつでも女性の視線を集めてしまう優れた容姿をしているだけでなく、文武両道であり、更には人を惹きつけるカリスマ性をも兼ね備えていた。

 天は人に二物も三物も与えるものなのだなぁ、と、これまたルディは子供の頃からロベルトを見るたびに、いつもいつも頬を赤らめながらそんなことを思っていた。

 そんな憧れのロベルトと比べてルディはというと、中肉中背のこれといって特徴のない平凡な容姿をしている。髪も亜麻色で平凡だし、目の色も濃い茶色でこれまた平凡である。顔の作りは悪くないが、これもまあ”悪くない”といった程度のものでしかない。

 まあそんな感じで、これといって秀でたところのないルディではあったが、昔から不思議とロベルトにはかわいがってもらえていた。憧れの従兄弟から構ってもらえることが嬉しくて、暇さえあれば母親にねだり、ロベルトのいる侯爵家に遊びに出かけたものである。
 褒めてもらいたがために「俺、父上の後を継いで立派な伯爵になります!」などと格好つけて言ってみたりしたことさえあった。

「そうか、偉いなルディは。さすがはわたしの従兄弟殿だ」

 そう言って頭を撫でてくれるロベルトのことが、ルディは本当に心から大好きだった。

 ところが。いや、むしろ当然なのかもしれないが、成長するにつれて二人の関係は疎遠になっていった。ロベルトが騎士学校に入学した辺りから、会う機会が極端に減っていったのである。

 その一番の原因は、騎士学校が全寮制だったことにある。ロベルトは長期休暇にしか実家に帰ってこなくなった。

 勿論、ロベルトが帰省するたびにルディは会いに行った。
 ロベルトはやはり優しくて、いつでも笑顔でルディを迎え入れてくれた。騎士学校での話を面白おかしく話してくれたり、町に連れ出してくれたりもした。

 この会えない時間というのが想いの成長に一役買ったらしく、ルディはますますロベルトのことを好きになっていった。

 この頃になると憧れは完全に恋に変わっていて、そのことをルディ自身もしっかりと自覚するようになっていた。

 その後、ロベルトは騎士学校を卒業と同時に騎士団に入隊し、第一騎士団に所属することになった。入団して二年後に実家を出たのだが、その時に父親である侯爵から子爵位を譲られて、現在は別邸で暮らしている。

 そしてルディはというと、ロベルトが実家を出た年に十五才になり、貴族子女が通う王立学園に入学した。

 この頃になると、ルディとロベルトの関係は更に疎遠になっていた。

 さすがにもう従兄弟のお兄ちゃんに「遊んで!」なんてことを気軽に言える年ではない。ロベルトは騎士団での仕事や子爵としての執務、それに社交だってやらなければならず多忙である。

 ルディにしても、同学年の王太子の側近候補として抜擢されたこともあり、それなりに忙しくしていた。

 それでもルディはロベルトを好きでい続けた。
 会いたい会いたいと毎日のように思いながらも、迷惑をかけるべきではないと自分を戒めて、ロベルトに会いに行くことを我慢していた。
 気を紛らわために、意識して学園での日々に没頭していたのだった。

 それに。
 この頃になると、さすがのルディにも理解できるようになっていた。想いの強さだけではどうにもならないことが世の中にはあるということを。

 この国では同性婚が認められている。
 けれどルディは伯爵家の嫡子。子を残す義務を持つルディに同性婚は許されない。ロベルトへの想いが成就することはあり得ないのだ。

 それを理解しているからこそ、ルディはこれまでロベルトへの想いを誰にも言わず、自分の中に秘めてきたのだ。

 告白したいと思ったことは何度もある。けれど、ロベルトにしてみれば年下の従兄弟からの告白なんて迷惑なだけだろう。それに、ルディには親が決めた婚約者もいる。

 十才年下の婚約者には、彼女が三才の時に一度だけ顔を合わせて以来、それからは一度も会っていない。想いなど一欠片もないが、それでも婚約者であることには違いない。

 いずれ彼女と結婚してルディは伯爵家を継ぐことになる。その時になってもロベルトを想い続けることは、自分の伴侶に対してあまりにも不誠実だし、失礼すぎる。だから結婚前のどこかの時点でロベルトに対する恋心を断ち切ろうと、ルディはそう決めていた。

 とはいえ、そう簡単には踏ん切りがつかないし、想いがなくなることはない。

 なにせロベルトはルディにとって初恋の人であり、ずっとずっと長い間恋焦がれてきた最愛の人なのだから、それも仕方がない。

 けれどもやっぱりこの恋は捨て去るべきものであり、それが分かっていてさえも心は簡単には変えられない。

 自分の情けなさにため息ばかりが零れる日々。

 そうやってぐずぐずしている内に時は流れて二年が過ぎ去り、ルディは学園の最上級生になっていた。

 ここで学園でのルディの周辺に問題が起きた。

 今年になって入学してきた男爵令嬢に、ルディの友人たち皆が恋してしまったのである。友人たちは高位貴族子息ばかりで、その中には王太子さえも含まれている。

 彼らはルディが誇りに思う大切な友人ばかりであり、貴族としても人としても良識を持った立派な人間ばかりだった。それなのに、なぜか彼らは人目もはばからずに男爵令嬢に愛を囁き、自分たちの婚約者を冷遇し始めたのである。

 これにはルディもかなり驚かされたし、呆れ返りもした。友人たちの豹変が信じられなかった。

 確かに男爵令嬢は儚げで庇護欲をかき立てられる容姿をした、とても見目の良い少女である。けれど、ただそれだけだ。マナーもなってなければ品性にも欠けている。婚約者がいる男性と平気で腕を組もうとしたり、媚びてあざとい態度ばかりとっている。

 はっきり言って、ルディにとって男爵令嬢は不愉快な相手でしかない。
 それなのに、なぜか友人たちは彼女を褒め称えるのだ。狂ったように高価な品を貢ぎ、彼女に常識を教えようとする自分たちの婚約者に侮蔑の言葉を浴びせ、声を荒げて罵倒した。

 友人たちのあまりの非常識さに、ルディも静観してはいられなくなった。このままでは大変なことになってしまうに違いない。

 特に王太子などは婚約者がこの国の筆頭公爵家の令嬢なだけに、今のような態度を続けていれば公爵家の怒りを買うことが目に見えている。場合によっては廃嫡される可能性もあるし、公爵家の出方によっては国が内乱に陥ることも考えられた。

 友人としてだけでなく、この国の貴族としても彼らをこのまま放ってはおけない。

 そう考えたルディは、彼らに煩がられても注意し続けたしいさめもした。それでも友人たちは態度を改めようとはしなかった。

 どうすればいいんだろう、とルディは困り果てた。

 この時、自分では気付いていなかったが、実はかなり精神的にまいっていたらしい。疲れた心が癒しを求めて、ルディにこんなことを呟かせた。

「相談にのって欲しいとお願いして、ロベルト兄様に会いに行こうかな」

 声に出すと、もう我慢ができなかった。

 ロベルトに会いたい。会いたくてたまらない。これはただの私欲ではない。「国の大事となりうることに関する相談事をするため」というロベルトに会うための大義名分があるのだ。だったら会いに行ってもいいんじゃないか? いやむしろ行くべきだろう!!

 もうここ何年も、ルディはロベルトとまともに顔を合わせていない。

 既にルディも成人しているため、社交のために夜会に参加することがあるが、そこで遠目にロベルトを見かけたことなら何度でもある。
 その時にもしも声をかけたなら、きっとロベルトは昔かわいがっていた従兄弟のことを覚えていて、笑顔で受け入れてくれたことだろう。

 しかし、ルディはロベルトに声をかけることなく、ただ遠くから見つめるばかりだった。

 それは、伯爵家嫡子という自分の立場を理解していたからだ。ロベルトへの恋は早く消し去ってしまうべきものだと、ちゃんと分かっていたからである。

 だからこれまで自制して、ロベルトにはなるべく近付かないようにしてきた。会えば想いが膨らむばかりだと分かっていたからだ。

 ところが今のルディには下心のある邪な思いからではなく、ロベルトに会うための正当な理由がある。女に誑かされた友人たちをどう対処すべきかを、頼りになる年上の従兄弟に相談したいというルディの考えは、決しておかしなものではないはずだ。
 だからそれを理由にロベルトに会って、久し振りに仲良く話をしたい。そして癒されて、満足したら……。

 今回の再会を自分の初恋を終わらせるキッカケにしよう。そうルディは決心したのだった。


 早速ルディは相談にのって欲しいと書いた手紙をロベルトに送った。すぐに返事がきて、そこには喜んで相談にのるという優しい言葉が書いてあり、都合の良い日時も書き記されていた。

 ロベルトの優しさに、ルディは涙が出そうだった。


 指定された日時ぴったりに、ルディはロベルトの持つタウンハウスを訪れた。緊張してガチガチのルディを、ロベルト本人がわざわざ玄関まで出迎えてくれて、懐かしい優しい笑顔を見せてくれた。

 久し振りに会ったロベルトは、ルディの記憶の中の彼より何倍も男らしく、また大人になっていた。人を惹きつける笑顔は相変わらずで、ついつい見惚れそうになってしまい、平静を装うのにルディは苦労してしまう。

 通された客間のソファにルディが座ると、すぐ隣にロベルトも腰を下ろした。距離の近さにロベルトからの親しみを感じてルディは感動した。が、表情には出さすにがんばって平静を保つ。

 しばらく互いの近況を語り合い、くだらない雑談などもして笑った後には、疎遠にしていた間にできた二人の間の溝は、あっと言う間に消え去っていた。

 やがて話に一区切りついたところで、ロベルトが言った。

「それで? わたしに相談というのは、どんな話なんだ?」

 水を向けられて、ルディはここに来た目的をハッと思い出した。あまりにもロベルトとの会話が楽しくて、すっかり忘れていたのである。
 いかんいかんと気持ちを切り替えると、ルディは姿勢を正して話し始めた。

 男爵令嬢と彼女を取り巻くルディの友人たちの体たらくについて、なるべく主観を交えずに事実だけを話して聞かせた。

 聞き終わったロベルトは難しい顔をしていて、やはりこれは深刻な問題なのだとルディの中に緊張が走った。膝の上の拳にぎゅっと力を入れる。

「兄様、俺は友人たちをどうやって説得すればいいでしょうか? これまでも散々窘めてきたのですが、聞く耳を持ってもらえないんです」
「……つまり、おまえの友人たちは婚約者がいるにも関わらず男爵家の令嬢に夢中になっていて、その令嬢と添い遂げられるなら貴族籍を捨てて平民になってもかまわない、と、そう言っているワケか」
「そうです。かなり高い身分(含王族)であり、嫡子(含王太子)であるのにも関わらず、そんなバカことを言っているんです」
「おまえの友人で、身分が高く、嫡子……ね」

 ロベルトの形良い眉間に不機嫌そうなシワが寄った。かと思うと、はぁーっと大きく息を吐き、ソファの背もたれにドカッと体を預けた。そのまま天井を見上げて目を閉じる。

「ったく、しばらく会わなかった間に、まさかこんなことになっているとは……」

 ロベルトがなにか小さく呟いたが、それはルディには聞こえない。ただ、その機嫌の悪さはしっかり伝わってきて、難しい顔のロベルトを少しビクビクしながら見ていたルディは、ハッとあることを思いついた。

 近衛騎士と護衛騎士で構成された第一騎士団に所属するロベルトは、最近の王太子の非常識な行動について既に情報を持っていたのではないだろうか。だからルディの話を聞いて、それがすぐに王太子の話だと気付き、国の未来を憂いてあんなにも難しい顔をしているのではないだろうか。

 具体的な名は伏せて話したのに、すぐにそれが王太子のことだと気付いた頭の回転の速さ。そして、国を思う忠誠心。

(さすがロベルト兄様!!)

 ルディはキラキラと尊敬の眼差しでロベルトを見つめた。しかし、そんなルディを見返すロベルトの視線はなぜか厳しい。

 やがてロベルトは不機嫌顔のまま、手を伸ばしてルディの頬に触れた。

「ルディ、知っているか? 人はよく”友達の話”などと誤魔化して、自分のことを相談するものだと」

 突然そんなことを言われて、戸惑いつつもルディは頷いた。

「は、はい。そういうこと、よくありますね」
「その法則で言うなら、平民になってでも男爵令嬢と添い遂げたいと思っている高位貴族家の嫡子とは、ルディ、おまえだということになる」
「――――は?」
「ルディ。わたしは今、自分でも驚くほど動揺しているし、怒りを覚えてもいる。おまえは伯爵家の嫡子という立場に、なによりも誇りを持っているのだと思っていた。それなのに……」
「?」

 なんの話だろうとルディが不思議に思っていると、ロベルトが右手を回してルディの腰をグッと引き寄せた。同時に左手は後頭部に回して逃げられないように押さえつけ、有無を言わさずルディの唇を奪ったのである。

「?!?!」

 もちろんルディは驚いた。五秒ほどは硬直したまま動けなかったくらいだ。

 反射的に逃げだそうとしたものの、腰と頭をがっちりホールドされていて、少しも体が動かない。

 そうこうしている間に口内に入ってきたロベルトの舌に、ルディの舌は絡められた。くちゅくちゅといやらしい水音が響く。舌を吸われてルディの背筋にビリビリとした快感が走った。

「あ……む、くちゅ……はぁ、あ……ん」

 ぬるりとしたロベルトの舌の感触が気持ち良くて、頭がボンヤリとしてしまう。気持ち良さのあまり、成されるがままにロベルトから口内を嬲られた。快感で舌が溶けてしまいそうな錯覚に陥る。

 そうやって散々ルディの口内を味わった後、ようやくロベルトが唇を離した。

 ルディは蕩け切った顔で、息を荒くしながら涙に滲んだ瞳でロベルトを見つめた。

「に、兄さ……なん……? どうしてキスなんて……」

 ロベルトが辛そうな顔をした。

「わたしはな、ルディ。昔からおまえがかわいくて仕方がなかった。わたしに懐き、いつも笑顔で後ろをついて回るおまえを、実の弟のように愛おしく思っていた」

 それは家族に向けるものと同等の愛だった。それが時とともに変化したとロベルトは言う。

 素直でかわいい。
 笑顔を見て和む。
 自分にだけに懐いていることに優越感を感じる。
 他の人に笑顔を見せないで欲しい。
 誰にも触らせたくない。
 自分だけのものにしたい。

 ルディへと向けるロベルトの気持ちは、深く特別な想いへと変化していった。
 そのことに気付いた時、ロベルトはやるせない気持ちになった。

 ルディは伯爵家の跡継ぎである。未来へと血を繋ぐため、いずれ妻を娶って子を成す使命を持っている。そうあるように育てられてきたルディは誇り高い志を持っていて「立派な伯爵になります」と幼い頃から胸を張って宣言していたくらいだ。

 そんなルディにとって、自分の気持ちは迷惑なものでしかない。そのことに気付いたロベルトは、ルディから少しずつ距離を取ることに決めた。自分のエゴがルディの幸せを壊さないよう、騎士学校に入学後は長期休暇で帰省した時以外は会わないようにした。
 たまに会った時は、あくまでも年上の頼れる従兄弟として接するよう心がけた。

 ルディが学園に入学し、ロベルトが子爵邸に居を移してからは、二人が会う機会はほぼゼロになった。
 夜会で遠目に見かけることはあったが、友人たちと楽し気に語らうルディの姿を見れただけで満足するよう、自分を戒めてきた。

 声をかけたい。そう思いはしたが、必死に耐えた。

 一度でも接してしまうと、親しく会話をしてしまうと、自分の気持ちを抑えきれなくなりそうで怖かったからだ。

 そんな中、突然ルディから手紙が送られてきた。相談事があるから会って欲しと書かれたそれを読んだ時は、どんなに嬉しかったことか。もうここ何年も疎遠にしている中、今でも頼りにしてもらえることを本気で喜んだ。

 しかし、会うことには迷いがあった。かわいいルディを目の前にして、はたして自分は冷静でいられるのか。

 散々迷った末、会うことを決めた。
 ルディへの特別な想いをいつまでも燻らせたままでいるわけにはいかない。このままずっと避けているわけにはいかないのだから。

 会って話をして、自分の気持ちにキリをつけようと思った。そして今回の再会を、ルディへと向ける特別な思いを消し、仲の良い従兄弟に向ける普通の身内愛へと戻すキッカケにしようと思った。

 そこまでの覚悟をもって再会を決めたのに……。

 それなのにルディは友人のことだなどとワザとらしい前置きをつけて、自分に好きな女がいることや、その女のためなら貴族籍を捨てる覚悟があることをロベルトに告げたのだ。

 あのルディが、自分にかわいい笑顔を見せ、懐き、いつも後ろから付いてきていたあのルディが、自分ではない誰かに恋をしているという。しかも、その女のためなら貴族という身分を捨ててもいいなどと言っている。

 だったら、今まで我慢してきた自分はなんだったのだ!

 ロベルトの中に激しい怒りが湧いたのも当然のことだろう。

 まさかルディにとって貴族という地位が、伯爵家の跡継ぎであるという誇りが、それほど取るに足らないものでしかなかったとは。

「幼い頃のおまえは言っていた。叔父上の後を継いで立派な伯爵になると。そんなおまえの夢を壊してはならないと、わたしは自分の気持ちを封印することにした。おまえを誰よりも愛しているのに、その気持ちを殺すことにしたんだ」
「あ、愛している? 兄様が俺を?!」

 思いもよらないロベルトの気持ちを知って、ルディの顔が瞬時に真っ赤に染まった。激しく波打つ胸を抑えて瞠目する。

「そ、それは本当ですか?」

 その凛々しく整った顔に寂し気な笑みを浮かべ、ロベルトが頷いた。

「そうだ。それなのに、おまえは出会ったばかりの男爵令嬢だかに恋焦がれ、貴族籍を捨ててもいいと言う。爵位を継承することにおまえがこだわらないと言うのなら、だったらわたしがおまえを貰う。もう遠慮はしない」
「ちょっと待って下さい、兄様! 俺が男爵令嬢に恋焦がれ……? いや、俺はあの令嬢のことなんて、なんとも思ってな――」
「隠さなくていい。友人のことだなどと言っていたが、あれは本当はおまえのことなのだろう?」
「ち、違いますっ! だって、俺が好きなのは兄さ――」
「もういい。その先は聞きたくない。おまえの気持ちがどうであろうと、わたしはもう決めた。どこの馬の骨とも分からない女にくれてやるくらいなら、わたしが今からおまえを奪う!」
「いや、ですから俺はそんな女のことはどうでもよくて、兄様のことが好――」

 言いかけたルディの唇をロベルトが噛みつくように塞いだ。荒々しく口内を蹂躙されながら、ルディの胸は信じられない思いと喜びでいっぱいになる。

 俺を愛している? ロベルト兄様が?!
 本当に? 信じられない!!!

 しかし、ロベルトの言葉が嘘ではないとルディには信じられた。そんな大切なことで嘘をつくような人ではないと知っているからだ。それに、今まさにキスされていることからも、ロベルトの言葉が本当のことだと信じられる。

 嬉しくてたまらなかった。
 だって、ずっとずっと、昔から好きだったのだ。

 あの股のゆるい男爵令嬢のことを自分が好きだとかいう勘違い。あれは絶対に訂正しなければならないが、取り合えず今はそんなことはどうだっていい。

 それよりも、早く、早く自分の気持ちを伝えたい。自分も兄様を好きだと伝えたい。そう思っているのに、キスをされているせいで言葉が出せず、告白させてもらえない。

 だったら、とルディは両腕をそっとロベルトの首に回した。そして、自ら身体をロベルトに密着させて、キスにも積極的に応え始めた。これならきっと、言葉に出さずとも自分の想いが伝わるに違いないと、そう信じて。

 一方ロベルトは、ルディの態度の変化に戸惑いを感じずにはいられなかった。

 信頼していた従兄弟に突然キスをされたのだ。嫌がって暴れられても仕方がないと思っていたのに、なぜかルディは嫌がるどころか、むしろ積極的にキスに応え始めた。

「ルディ……?」

 戸惑いながら唇を離すと、ルディは潤んだ瞳でロベルトを熱く見つめた。

「俺は……俺もずっとロベルト兄様のことが好きでした。子供の頃からずっとです」

 驚きにロベルトが目を大きく見開く。

「そんな、まさか……本当に?」
「はい。でも俺なんかじゃ兄様には不釣り合いだし、それに俺は伯爵家の跡継ぎだから、両親の決めた婚約者だっている。だから、諦めるしかないって思ってました。でも俺はずっと兄様のことが好きで、だから本当は嫡子になんて生まれたくなかった。もし俺が次男や三男だったら、たとえフラられるにしても兄様に告白することはできたのにって、ずっと思ってたから」

 泣くなんて軟弱なところをロベルトに見られたくない。そう思いながらも胸が熱く感極まってしまい、ルディの瞳には涙が滲んできてしまう。

「こ、こんなことを言うと兄様に呆れられてしまうかもしれない。でも俺、今だって本当は……嫡子の地位なんて捨てたいくらいなんです。だって、伯爵になるよりも……おっ、俺はっ、俺は兄様の恋人になれる方がずっと嬉しいから……」

 ボロボロと涙を流して泣き出したルディを、ロベルトが抱きしめる。

「信じられない……本当にわたしのことを……?」
「好きです、兄様。ずっと昔から兄様のことだけが好きでした」

 その言葉に嘘の色は感じられない。
 ルディが本当のことを言っているのだと、やっとロベルトにも信じられた。あまりの嬉しさに胸が高鳴り、喜びに全身が震えた。

「愛してる、ルディ」
「俺も……俺もです、兄様」
「どうかルディ、俺の妻になって欲しい。嫡子の座を弟のヴィクトルに譲り、どうか俺の妻に……」
「なりたい、兄様の妻になりたいです。でも、嫡子の座を弟に譲るなんて、そんなことが可能なんでしょうか」

 濡れたルディの目元に口を寄せ、ロベルトが涙を吸い取った。そしてまた強く抱きしめる。

「説得する。わたしがおまえの父を、叔父上を必ず説得してみせる」
「……もし説得できなかったら?」
「その時はおまえを攫って駆け落ちする。一緒に来てくれるか?」

 その言葉の中に、家族や友人、騎士とういう職業、他にもロベルトがこれまで生きてきた軌跡のすべてをルディのためなら捨てられるのだと、そんな強い覚悟が見てとれた。
 これほど深く想われていることにルディの心は感動に震え、止まりかけていた涙がまた溢れだす。

「連れて行って下さい。兄様とならどこにだって行きます。兄様のためなら、俺だってすべてを捨てられる!」

 ロベルトは立ち上がると、ルディの腕をつかんで居間を出た。そのまま足早に寝室へと向かい、ベッドの上にルディを押し倒す。

 上から覆いかぶさるようにして自分を見下ろすロベルトの瞳に、欲情の色をルディは見つけた。その途端、体がカッと発情して熱く火照る。

「兄様、どうか俺を兄様のものにして……」
「言われるまでもない」

 言いながらルディの額に口付けると、次にロベルトは優しくルディの唇にキスをした。顔の角度を何度も変えて唇を重ねるたび、その深さが増して濃厚になっていく。ロベルトの舌で喉奥まで犯され、その熱にルディの体がぞくりと震えた。
 流し込まれる唾液を、それがまるで甘い蜜であるかのように飲み込むルディの衣服を、ロベルトはキスをしながら器用に脱がせていく。

 やがてルディが全裸になると、ロベルトは膝立ちになり、高い位置からルディをうっとりと見つめた。

「ああ、とても綺麗だ」

 ゆるく勃ち上がったルディのペニスの先端からは、既に先走りの汁が滴っている。

「は、恥ずかしい。兄様、見ないで下さい」
「なぜ。こんなに美しいのに」

 ロベルトはルディの胸から腹までを指先でそっと撫でた。ルディの体がびくっと震える。その感じやすさが愛しくて、ロベルトの口元に笑みが浮かんだ。唇をそっと近付けてルディの乳首をちゅっと吸う。

「んんっ」

 ロベルトが乳首を吸うたびルディの体がびくんと跳ねた。その反応に気を良くしたロベルトが、執拗に乳首への愛撫を重ねていく。

 ちゅっちゅっと唇で優しく啄まれ、くすぐったいような甘い刺激にルディの乳首が固くしこった。より敏感になったそこを強く吸われたまま舌先で舐めまわされると、あまりの気持ち良さにルディの首がのけぞってしまう。

「あ……や、兄様、そこ……んんっ!」
「気持ちいいか? 乳首がまるで石のように硬くなった」
「ふっ……だって、あっ……ん」

 片方の乳首を乳輪ごと吸われたまま、もう片方は指できゅうと引っ張られる。乳首を両方同時に愛撫されるとたまらなく気持ち良くて、ルディのペニスからは汁がとろとろと零れ続けた。

「ルディ、こんなに濡らして、そんなに善いか?」
「うん、兄さま、いい……俺っ、すごく気持ちい……んぁっ」
「かわいいな。はぁ、もっと善くしてやりたくなる」

 ロべルトは乳首から口を離すと、ルディの股間に顔を移動させた。ペニスを根元まで一気に口に含み、じゅるっと強く吸い上げる。
 急に与えられた強すぎる刺激に、ルディの体が大きく跳ねた。

「あっ、ああ―――っっ!!!」

 ルディのペニスを深く咥えたまま、ロベルトは舌で舐め回し始めた。敏感な亀頭を熱い舌で舐められて、ルディの尻奥がずくんと疼く。鈴口に舌先を入れてくすぐられると、痺れるような快感に腰が勝手に浮いてしまい、首を反らせて嬌声を上げた。

「ああ、すごいっ、兄様っ、あ、ああっ、それっ、そこ気持ちいっ! はあっ!!」

 裏筋を上下に舌でなぞられた後、根元部分をチロチロとくすぐられれば、もどかしいような甘い快感に耐えきれず、ルディは泣きながら叫んでいた。

「ああっ、やっ、それじゃ足りない、もっと……もっと激しいのがいいっ!」
「激しく? こうか?」
「ああああっ!! いいっ、気持ちいっ! 兄様のお口がすごくて……はぁ、あそこが溶けそう、ふあっ!」

 両の乳首を赤く尖らせ、快感に身をよじって喘ぐルディが堪らなくいやらしくて、次第にロベルトのペニスも反り返っていく。

 ロベルトは自分の指を舐めて唾液で滑らせると、ルディの硬くすぼまった後孔を解し始めた。まずは指一本だけを何度もアナルに出し入れし、次に弧を描くように指を回しながら穴を広げていくように柔らかくしていく。

「あっ……んっっ……」

 指を入れられた違和感は、ルディのアナルが柔らかくなるにつれて快感をへと変わっていく。次第に指を出し入れされるだけの刺激でルディは感じ始め、やがてはおねだりするかのように自分から腰を動かし始めた。

「う……あぁん、兄様、指が……指が気持ちいっ。もっといっぱい指動かしてっ、お尻いっぱい擦って。あああ、お尻っ、気持ちいっ、んんっ!」

 いつの間にかルディのアナルは、ロベルトの指を三本余裕で飲み込めるようになっていた。ルディのペニスからはトロりと汁が淫らに流れ落ちて、アナルをべちゃべちゃに濡らしている。

 ロベルトが指を動かすたびにアナルからグチャグチャと音が響く。その音とルディの嬌声がたまらなく淫猥で、ロベルトの欲情を煽り立てた。

「ルディ、もう挿入れるぞ」

 指を引き抜くとルディの解れたアナルがヒクついて、早く入ってきてと淫乱にロベルトを誘惑する。服の中から屹立を取り出すと、ロベルトはそれに香油を垂らしてルディのアナルに押し当てた。ルディのアナルがロベルトの亀頭を嬉しそうに吸い込もうとする。

「はぁ……熱い、それすごく熱いです」
「ああ、今すぐにこの熱いのを挿入れてやる」

 ぐちゅり、とエラの張ったロベルトの亀頭がルディの中に入っていく。少しずつペニスが奥に埋まっていくにつれて、ルディの幸福感と満足感が大きくなっていく。

 やがてロベルトのペニスがすべてルディの中に飲み込まれた。ギチギチのそこが切れないよう馴染ませるため、一旦ロベルトは動きを止める。

「……はぁ、全部入ったぞ。大丈夫か?」
「あ、んっ……すごい、お腹の奥まで……兄様がきてる、うれ、し……」 
「くっ、あまり煽るな……はぁ、おまえの中……熱くてたまらなく気持ちいい」

 強張ったルディの体の緊張を解くため、ロベルトが体を倒して乳首を舐めた。胸からの快感が背筋を通ってルディの尻まで届き、奥を疼かせるのと同時にきゅんきゅん締まった。

「はぁ……中、締まる」
「乳首されると、お尻、じくじくする……あ、んぁ、んっ」

 ルディが乳首で感じると、奥がうごめいてロベルトのペニスに甘い快感を与えてくる。あまりの気持ちよさに耐え切れず、ロベルトは腰を動かし始めた。

「はぁ、ん……兄様っ、ああっ!」
「ルディ、痛くないか?」
「だいじょ、ぶ……ああ……んぁあっ、いいっ……はぁ、いいっ、兄様っ!」

 ロベルトが腰を動かすたびに、亀頭がゴリゴリと腸壁を引っ掻いて刺激する。ごりごりと擦られる感じがたまらなく気持ち良くて、気付けばルディは必死に腰を振っていた。

「は、ううっ、あ……きもちぃ……きもちぃよぉ……あ、そこ、いやぁ」
「いや? もっとして欲しいの間違いじゃないのか」
「うん、もっとして……兄様、もっと奥ゴリゴリしてぇ、ああ、すごい、そこっ」
「はぁ、かわいいな、ルディ。いいぞ、もっと善くなれ」

 腰を小刻みに動かして前立腺をカリでぐりぐりと刺激しながら、ロベルトはルディのペニスを扱き始めた。
 前と後ろから同時に沸き上がる強い快感に、ルディは激しく腰を動かし嬌声をあげる。

「ああ―っ! やっ、そこ、両方されたら、すぐイッ……やぁっ」
「イくのは嫌か?」
「嫌じゃない……けどっ、兄様と一緒がいいっ……一緒にイきたい、一緒が……いいからっ……まだいやああっっ」
「……はぁ、ったく、かわいいことを。分かった、ルディ、一緒にイこう」

 先ほどまでとは比べ物にならないほど激しく、ロベルトが腰を早く強く前後に振る。熱い怒張が後孔を出入りするたび、ルディのイイところがごりごり刺激された。それが信じられないほどの快感を生んで、ルディは気が狂わんばかりに見悶える。

「すごっ、いいっ! 兄様のおちんちんがぁ……ぎもぢぃ…っ…あっ、あっ、当たる、いっ、あっっ、そこっ、ああっ」

 体を揺さ振られて中を擦られながら、ペニスも激しく扱かれる。肉体的な快楽と精神的な多幸感で、ルディは快楽を得る以外のことを考えられなくなってしまう。

「ああっ、そこすごいっ……いいっ……あっあっ、ダメ、もうイくっ、もうイくからぁっ!」
「はぁっ、そうだな、ルディ。わたしもイきそうだ」
「兄様もイく? 兄様もイきそ……?」
「ああ、わたしももう……もたなっ……」
「あっ、あっ、イぐっ、ああ、あっ、あ゛ぁあ~~っっ!」
「くっ!!!」

 感じやすい部分ばかりを重点的に責められて、ついにルディは体を痙攣させて絶頂した。ペニスの先から精液が勢いよく噴き出す感覚がたまらない。
 ロベルトもルディの中からペニスを引き抜くと、先端から熱い白濁を思いっきり吐き出して、ルディの腹の上を汚したのだった。

 二人はその後もしばらくベッドの上で互いの肌を感じ続けた。抱き合い、キスして、少し話して笑う。そしてまた互いの熱を感じ合う……といった感じでずっと離れず抱き合っていた。

 しばらくして興奮が落ち着いてくると、ルディの体を抱きしめながらロベルトが真面目な顔で言った。

「こんなに感じやすくて快楽に弱いなんて……もう二度と他の男に会わせられない。学園の卒業式まで、あと一ヵ月ほどか?」
「はい。といっても授業はすべて終了していて、今は自由登校の時期に入っています」
「だったらもう登校はせず、ずっとこの屋敷にいればいい。そして、卒業式が終わったら即結婚だ」
「そ、即結婚?!」
「嫌か?」

 悲しそうな顔をしたロベルトに、慌ててルディは首を横に振る。

「嫌じゃありません。そうできれば俺だって嬉しいです。でも、まずは俺の廃嫡を父上に認めてもらわないと。婚約者のこともありますし」
「その辺のことは、すべてわたしに任せておけばいい」

 ルディの頬に優しくキスをすると、ロベルトは自信に満ちた笑顔をみせた。




 その後、ロベルトはルディが学園を卒業するまでの一ヵ月間で、諸々の問題を手早く処理していった。

 まずはルディの三才年下の弟であるヴィクトルに会い、伯爵家を継ぐ意思の有無を確かめた。
 ヴィクトルの答えは明解だった。

「それはもちろん、伯爵位をもらえるものならもらいたいですよ。だって、このままだと僕は平民になるか、家を継ぐ令嬢に見初められて婿入りするしかないですからね」

 ヴィクトルの意思を確認した上で、ロベルトはルディの父親である伯爵に面会を申し出た。そして、ルディとの結婚を願ったのである。

 その場にはルディは当然のことヴィクトルも同席していて、三人でタッグを組んで伯爵を説得した。

 結果、伯爵は思ったより簡単に二人の結婚を認めてくれて、跡継ぎをヴィクトルに変更することも承諾してくれたのだった。

 その理由としては、できることなら自分の子供には好きな人と結婚して幸せになって欲しいと、そういう考えを伯爵が持っていたからだ。更にはルディの婚約者が同門の分家の令嬢であることから、婚約者の変更の話し合いが円滑に進むだろうと予想できたこともある。

 実際、数日後に伯爵と婚約者の父親との話し合いが持たれ、特に問題なくルディの元婚約者はヴィクトルの婚約者となった。この婚約者問題の決着を見て、ロベルトとルディの結婚は正式に許されることとなったのである。

 とはいえ、すべてがロベルトが望むようになったわけではない。ルディの学園卒業と同時に入籍――というのは、さすがに許されなかった。最低でも半年は婚約期間を設けるようにと、両家の親たちから諭されたからである。

 ルディはともかく、ロベルトはかなり不本意そうにしていたが、それでも結局は渋々ながらも受け入れた。そして婚約から半年後、二人は晴れて婚姻式を挙げるに至ったのである。



 それからの二人は、社交界でも知らぬ者がいないほどのオシドリ夫婦となった。というか、有名だったのは主にロベルトのルディに対する溺愛っぷりである。

 まず、夫婦揃っての参加が義務である王家主催の催し以外、ロベルトは滅多なことではルディを人前に出そうとはしなかった。勿体なくて他のヤツには見せたくない、というのがロベルトの主張である。

 おかえでほぼ軟禁のような生活を送るようになったルディだが、本人はそのことを苦に感じてはいないようだった。それどころか。

「兄様にそれほどまで強く愛してもらえるなんて、俺、とても幸せです」

 ルディは頬を赤く染めて、少し恥ずかしそうにしながらロベルトにそう言った。

 そんなかわいいことを言われたロベルトが我慢できるはずがない。
 右手で目を抑えて上を向き、無言で見悶えていたロベルトは、やがて落ち着きを取り戻すと長椅子で自分の隣に座っているルディの両脇に手を入れた。そして体をヒョイと持ち上げると、自分の膝の上に向かい合うようにしてルディを座らせたのである。
 わざとらしく眉間にシワを寄せてルディを睨む。

「さっきわたしを兄と呼んだな? わたしはルディの夫だ。兄と呼ぶのは禁止だと前に言ったはずだろう?」
「あっ、ついクセで……すみません。これからは気を付けます」
「敬語もやめるように」
「わかりま……わ、分かった」
「さて、では仕置だ。禁止事項を守れなかったのだから、仕方ないな?」

 楽し気なロベルトに反し、ルディは困ったように頬を赤らる。仕置きの種類がどういったものなのか、分かっているからだ。

「あの、俺、なにをすればいい?」
「今ここでわたしたちのモノをおまえの手で一緒に扱いてくれ。キスしながらがいいな。上手にできたら許してやろう」
「……う、うん」

 顔を赤くしたルディは、言われるがままに二人のペニスを下穿きの中から取り出した。両手で包み込むようにして扱き始める。

 二本のペニスはすぐに芯を持ち、やがてどちらともなく先走りが流れ始め、その滑りのおかげで沸き起こる快感が大きくなった。

「はあ、ルディ、上手いな、気持ちがいいよ」
「ふっ……うん、お、俺も……」
「キスを忘れてる。ホラ、舌を出せ」

 ルディがペニスからの快感に熱い息を吐きながら、ふるふると首を横に振った。

「キスしたら、そっちに気をとられて、手……動かなくなっちゃ、から……無理っ」
「だからキスはできないと?」
「ちがっ……そうじゃ、な、くて……」

 ルディは涙目で首を振った。

「扱くのを……ロベルトにも、手伝って欲しい。そしたらきっと、キスもできると、思、から……」

 潤んだ目でペニスを一緒に扱いて欲しいとおねだりされて、ぞくりとロベルトの発情が促される。

「ふっ、だったらルディの後ろの口でわたしのモノを飲み込むといい。それなら手を動かさなくていいから、きっとキスも上手くできる」
「えっ、で、でも、俺の後ろほぐしてないし、まだ入らないんじゃ……」
「大丈夫だ。今朝も起きてすぐから愛し合った。きっとまだ柔らかいからすぐに入るだろう」
「で、でも俺、自分で入れるのは、なんだかちょっと……」
「ルディ、これは仕置きだと分かっているか?」

 にっこりと黒く笑うロベルトに、ルディはしばらく困った顔をした後、立ち上がってズボンと下穿きを脱ぎ捨てた。あらためてロベルトの膝の上に跨ると、ロベルトのペニスに手を添えて亀頭の位置を確認しながら、それを自分のアナルにペトリと当てた。それだけでルディの中をずくんとした快感が突き抜ける。

「は……ぁ……」
「いいぞ、そのままゆっくり腰を落として、わたしのモノを飲み込んでごらん」
「…………ん、ふっ……んぁ……あっ、ああっ」

 ロベルトの言った通り、たいした抵抗もなくルディの後孔にロベルトのペニスが埋まっていく。やがてあともう少しで全部入るといったところで、ルディが膝の動きを止めた。

「どうした、あと少しだ」
「だって、これ以上入れたら……すごい奥まで入る、から……自分でするのは……怖い」
「仕方ないな、わたしが手伝ってやろう」

 ロベルトは服の上からルディの乳首を爪で引っ掻き始めた。敏感な乳首を爪でカリカリと弄られるたび、ルディの内股が快感でびくりと震えた。

「やっ、それダメっ……ああっ、力がっ、足、入らなくなっちゃ……」

 感じすぎて足の力が抜けると、一気に腰が落ちてペニスが最奥まで入ってしまう。そうならないようルディは必死に足に力を入れようとするのだが、ロベルトからの乳首への愛撫が気持ちよすぎて、少しずつ力が入らなくなっていく。

 乳首を指できゅっと強く摘ままれたり、そのまま引っ張ってコリコリと弄られると、乳首からの快感が全身へと伝わって感じすぎるあまり、膝がガクガクして力が抜ける。

「はぁ、ああ、もうだめ、もう無理……乳首がよすぎて……力、抜け……あっ!」

 ルディの膝から力が抜けた。その瞬間、ロベルトの腰の上にぺたんと座り込んでしまい、勢いよくロベルトの硬くて熱い亀頭がルディの結腸の奥まで入り込んだ。

「はぁん~~~~~~っっ!!!!!!!」

 びくびくびくっとルディの体が痙攣した。

「どうだ? 奥まで入ったか?」
「あああっ、入った! 奥まで入った!」
「奥、気持ちいいか?」
「うんっ、ロベ、トのおちんちんが、あっ、当たってるっ、ずっと奥のイイところにっ、ああっ、あたって……奥っ、ああっ、いいっ、奥すごいっ!」

 夢中になって腰を振りだした妻の淫靡な姿を、ロベルトは黙ってウットリと見つめた。こうなると、何度か雌イキを繰り返して気を失うまで、ルディが止まらないことをロベルトは知っている。

「自分で好きなように動いていいぞ。わたしにかわいいイキ顔をたくさん見せろ」
「んっ……はぁぁ、んっ……あ、あっ」

 嬌声を上げるルディの口から舌がのぞいている。その舌をロベルトが自分の舌を伸ばして絡め取った。そうしながら爪で指でルディの乳首を引っ掻くと、ルディは恍惚とした顔でいやらしく喘ぐ。

「ああっ、舌っきもちー……乳首も……んっ、乳首も気持ち、いっ、あっん……んふっ」
「もっとして欲しいか?」
「してっ、乳首もっとしてっ……ああ、んっ……乳首気持ちいと、お尻も気持ちくな、から……んあっ」

 やがてルディは筋肉を硬直させてブルリと体を震わせると、胸をのけぞらせて精を出さずに気をやった。そのまましばらくは荒い息を整えていたが、またすぐに快楽を求めて腰を夢中で動かし始める。

「はぁっ、とまらない……きもちー、どうしよう……お尻、硬いの当たって……ああ、すごいっ」

 腰を激しく上下に動かしながら、ルディは何度も何度も雌イキを繰り返す。そして最後に強い絶頂に体をガクガク震わせたかと思うと、ルディは泣きながらロベルトに謝った。

「ごめっ……ごめんなさい、兄様っ、俺、こんな淫乱……お願い、嫌いにならないでっ……ううっ、好きです、兄様、好き」
「嫌いになんてなるものか。わたしの前で乱れるおまえは最高だ。更に好きになることはあっても、嫌いになど絶対になるものか」

 ロベルトはルディのペニスを握ると、ぐちゅぐちゅといやらしい音をたてて素早く上下に扱きだした。ルディは驚愕の表情で絶叫する。

「あ――――っ、だめっ、おちんちんダメっ!! いじっちゃダ……あーっ、ああ――っっ!」
「ずっと雌イキだったからな。最後に射精してすっきりするといい。ほら、思いっきりイけ!」
「んあっ、おちんちん、弾ける! もうイくっ、すぐでる! ああっ、いいっ、お尻も気持ちいっ」
「はっ、そうだな、奥も締まる。わたしも……もう出る、ぞ」
「出して、兄様っ、お尻にいっぱい……熱いの……あ、イく、イくっ、あっ、ああっ、あっ、あ……ぁんん~~~~~っっっ!!!」

 ほぼ同時に二人は射精した。

 その後、疲れ果てたルディは、ロベルトの腕の中で気を失うように眠りについた。ロベルトは優しくルディを抱きしめると、とても幸せそうに目を細めたのだった。



 ルディを起こさないよう静かに後処理を終わらせたロベルトは、寝息をたてて眠るルディの隣に横になった。そのまま優しくルディを抱きしめると、額にそっとキスを落とす。

「こうしてルディと愛し合えるようになったのは、考えようによってはくだんの男爵令嬢のおかげと言えるかもしれないな」

 約一年ほど前、男爵令嬢とその取り巻きたちの仕出かした醜聞は、国政をも揺るがす大事件として、国内外に一気に広がった。

 学園の卒業パーティーという公衆の面前で、王太子と側近たちが自分たちの婚約者を断罪して一方的に婚約破棄を突きつけた上、あろうことか国外追放を言い渡したのである。

 断罪した側が大貴族の息子なら、断罪された側も大貴族の娘である。しかも後に詳しく調べたところ、断罪の内容すべてが男爵令嬢の虚偽による冤罪だったことが分かったことから、問題は更に大きくなった。

 当然、事は子供たちだけの問題に留まらず、その親たちの責任問題にまで発展した。

 この事件により最も怒り狂ったのは、王太子の婚約者の父親であるこの国の筆頭公爵家の当主だった。国内でも指折りの権力者である公爵に溜飲を下ろさせるため、王命により王太子は廃嫡され、生涯を幽閉塔で拘束されることとなった。
 また側近の令息たちも廃嫡されたり、家門から縁を切られたり、地方に飛ばされたりと、犯した愚行の償いをさせれることになったのである。

 次代の国政を担うはずだった高位貴族令息たちを誑かし、失脚させた原因となった男爵令嬢は、身分が遥かに上位の令嬢たちを虚偽により陥れ、またそれに王族を騙した罪も重なって極刑に処された。当然、男爵家は取り潰されることとなった。

 ルディは王太子の側近候補の一人だったが断罪には加わらず、それ以前も王太子を必死に窘めようとしていたことや、ロベルトからの助言に従って王太子たちの不穏な行動について国王に報告し、指示を仰いでいたことによりお咎めなしとなった。

 そういった経緯があったため、ルディが学園に通っていた間に作った友人たちは、その地位を失って王都から姿を消している。友人のほとんどを失くして一人になってしまったこともあって、ルディは子爵邸での軟禁生活を難なく受け入れることができたのだった。

 そう考えると、ロベルトの今の幸せな毎日があるのは、例の男爵令嬢のやらかしのおかげといっても過言でないのである。

 ただひとつだけ予想外だったのが、第一王子が廃嫡して第二王子が立太子したことにより、ロベルトの仕事が忙しくなったことだろうか。

 実はロベルは数年前から第二王子付きの近衛騎士に任命されてる。王太子となったことで第二王子の公務が増た結果、当然ながらロベルトの職務時間も以前より長くなり、なかなか家に帰れなくなってしまったというワケだ。

 子爵領から入ってくる税収や事業による売上だけで、それなりに裕福な暮らしはできている。いっそ騎士団を退団してしまおうかと真剣に考えていたロベルトだったが、ルディからの何気ない言葉を耳にして、その考えをあらためた。

「騎士服に身を包んだロベルト、すごく格好良くて素敵だと思う」
「そうか、そんなに気に入ったか」
「うんっ。見るたびに惚れ直すよ!」

 なにがあっても絶対に退団しない。ロベルトはそう心に誓ったのだった。

 さておき残業をしたくないロベルトは、警護担当を替えて欲しいとの届けを上司に提出した。もっと楽な仕事がいい、できれば七才になったばかりの第三王女担当か、あるいは国を訪れた要人警護の担当になりたいと願い出たのである。

 しかし、その届け出は第二王子から即座に破り捨てられた。

「僕だってこの頃あまり婚約者に会えていない生活を送っているのに、自分ばっかり奥さんとイチャイチャするつもり? 絶対に許さないからね!」
「わたしは新婚です。そこは考慮していただかないと」
「そんなこと言ってるけど、どうせロベルトのことだ。新婚の時期を過ぎてもルディを溺愛し続けるに決まってるよ」
「……わたしの妻の名を呼び捨てるのはやめていただきたい」
「うわっ、殺気? 僕、これでもおまえの主だし、次期国王だよ?!」
「はぁ、面倒くさい。やっぱり退団するか」
「ちょ、ロベルト?!」
「冗談です。ですが、新婚旅行には行かせて下さい。期間は一月ひとつき。それだけは譲れません」
「一月ぃ? ちょっと長すぎない?!」
「やはり退団するか……」
「分かった、分かったから! もうっ、仕方ないなぁ」

 長期休暇の許可はでたものの期間が一ヵ月と長いだけに、現在、他の騎士団員たちとスケジュールを調整中である。旅行先には貴族に大人気な海辺の観光地にある父親の別荘を借りて、そこに二人でずっと籠もろうと思っている。

 最高の旅行になる予感に、ロベルトの心は少年のように弾んでしまうのだった。

 その楽しい新婚旅行をロベルトとルディが満喫している間に、王都では第二王子が策略を巡らせて、国王からも信頼の厚いルディを自分の側近に抜擢しようと目論むことなど、この時のロベルトは知るよしもない。

 またこの話をもらったルディが「だったら昼間も仕事しながらずっと近くにいられるね」なんて笑顔で嬉しそうに言うものだから、ダメだと言いたいのに言えなくなることも、この時のロベルトはまだ知らないのである。

 そしてその後、どうにも腹に据えかねたロベルトが、仕事中でも関係なく執務室でわざとルディとイチャつきまくり、赤面して目を反らさずにいられないほど際どいことを第二王子に見せつけるというちゃちな復讐を果たすことを、この時の第二王子もまた知らないのだった。

 また、これより十年ほど先の未来、第二王子の息子王子がルディに惚れ込み、娘王女がロベルトに一目惚れしてプロポーズするというかわいらしい騒ぎを起こして第二王子を大絶叫させることも、この時の第二王子はまだ知らないのだった。

 もちろん、二人は微笑んで王子、王女からの求婚を丁重にお断りすることになる。

 なぜならその頃の二人は相変わらず相思相愛のオシドリ夫婦であり、他の人間が入り込む隙のないほど深く深く愛し合っていたからだ。

 そしておそらく、二人はその先の未来もずっと、互いを大切に思い合いながら幸せに暮らすことになるに違いない。





 そうきっと、死が二人を別つその瞬間まで、ずっと……。



end
 
感想 2

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みんなの感想(2件)

パンちゃん1号
2024.05.06 パンちゃん1号

よかったです✨たのしく読ませていただきました~🤭

解除
ゆなちな
2021.04.26 ゆなちな

最高ー!
キュンキュンした(灬º 艸º灬)♥

2021.06.12 鳴海

わー、ありがとうございます。
すごく嬉しいです。

読んで下さってありがとうございました。m(_ _)m

解除

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