2 / 12
過ぐる日々を想う
0.
しおりを挟む(内容紹介必読)
この国が国として成っていなかった時。
周辺国の脅威から逃げ惑う不安定な日々を送っていた遊牧民達の前に、ある日突然神が舞い降りた。
神は偶然見つけたうら若い12人の美しい少年少女に見惚れ、愛を与えた。
神の寵愛を一身に受けた少年少女は、それぞれが類まれなる魔力と武力を持ち、同時に不老の力を手に入れる事となったのである。
やがて、神は天空に浮かぶ神の国へと戻り。
比類なき力を得た少年少女は、協力して『国』を創る事にした。大切な家族や友を周辺国の脅威から護り、安寧を手に入れる為に。
周辺国と戦うことを選んだ少年少女に、遊牧民たちは当然喜んで従った。
1人が万の軍勢の力を誇る少年少女は瞬く間に周辺国を退け、広大な大地を手に入れた。彼等は魔法で巨大な城壁と結界を創り、他者の攻撃が内部へと一切入らぬよう徹底する事で民を護った。
そうして彼等は少年少女から【国創りの神子】となったのだ。
神子達は最初に自分達についてくることを選んでくれた少年を【王】に据え、自分達がその守護者となる事で、国民達から自分達が畏怖の目で見られることを防いだ。同時に広大な土地を12の都市に分け、それぞれが1つずつ都市を治めることにより治安の維持を図った。
忠実を司る神子【ガーネット】は、貴族都市シンビジウムを。
誠実を司る神子【アメジスト】は、学者の街フリージアを。
聡明を司る神子【アクアマリン】は、学園都市アイリスを。
純粋を司る神子【ダイヤモンド】は、王都アルストロメリアを。
幸福を司る神子【エメラルド】は、歓楽街ライラックを。
裕福を司る神子【パール】は、ギルド街ローズを。
威厳を司る神子【ルビー】は、神秘都市リリーを。
和合を司る神子【ペリドット】は、観光都市アマリリスを。
慈愛を司る神子【サファイア】は、港町ダリアを。
希望を司る神子【トルマリン】は、鉱山都市ガイラルディアを。
友愛を司る神子【シトリン】は、農耕都市ブバルディアを。
栄光を司る神子【タンザナイト】は、闘技都市ポインセチアを。
民は神子を崇め敬い、王を慕い。
遊牧民『ジュエル民族』は、『ジュエル王国』として、世界にその名を知らしめた。
なのに。
あぁ、あぁ、許せない。赦せない。
【裏切り者】共め。我欲に狂い、神の意志を騙って国を支配しようなんて愚かなことをどうして思い付いたのか。永い永いーー500年もの時を共に過ごして来た友だからこそ、神を謀る罪は裁かねばならぬ。
きっと、悪魔に取り憑かれてしまったのだろう。ならば我らが清めて神の元へと送り還さねば。
何故逃げる?何故怒る?悪いのは、お前達なのに。『正気に戻れ』などと、よくもそんなことが口に出来たものだ。
ほうら、捕まえた。
さぁ、まずは神殿で穢れたその身体を清めてやろう。至上の快楽は神の寵愛の証。神の寵愛を受けるのは我ら神子の使命であるぞ。ーーおや、まだ駄目か。
では、我らが直接この身で清めてやろう。なぁに、怖がることは無い。我らは清らかな身。お前達如きの穢れなど我らの身体になんの害ももたらさぬ。ーーふむ、これでも駄目か。
ならば、1度拷問にかけてみよう。お前達の身体を乗っ取っている悪魔が痛みで出て行くやもしれぬ。あぁ、な泣くな叫ぶな。これは必要な痛みなのだから。ーーあぁ、可哀想に。まだ駄目か。
『ーーもう、殺して。お願い、お願い』
『成程。では、死して次の生を待つか』
誰よりも友を愛した神子が、断頭台へ。
さぁ、もう一度寵愛を快楽を激痛を。寵愛を快楽を激痛を。寵愛を快楽を激痛を。寵愛を快楽を激痛を。寵愛を快楽を激痛を。寵愛を快楽を激痛を。寵愛を快楽を激痛を。寵愛を快楽を激痛を。寵愛を快楽を激痛を。寵愛を快楽を激痛を寵愛を快楽を激痛を寵愛を快楽を激痛を寵愛を快楽を激痛を寵愛を快楽を激痛をーーーー
『ぁ、あああ、ァ、ーあ、はは、ぁああ』
『おやおや、壊れてしまいましたか。残念残念』
誰よりも慈悲深かった神子が、断頭台へ。
お前は、まだ取り憑かれたままか。悪魔とはなんとしぶといものか。……しかし、このまま同じ事を繰り返しても何も変わらぬ。
ならば、王の寵愛で穢れを落とすか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
『も、う、殺してくれ。もう嫌だ。もう、こんな、』
『どうして変われないのです。もう一度昔のように笑える日が来ると、なぜ分からないのです』
『あぁあああ、あ、ぁ、もう、たすけ』
『……残念です』
誰よりも繁栄を助けた神子が、断頭台へ。
久方ぶりに見る外の景色は美しくて。ボロリと零れた涙に、国民からの罵声が帰ってくる。かつての共に引き摺られるようにして断頭台に固定された俺は。
『ーー……あ、は』
なんて美しい、真紅だろうか。
『……本当に、変われないのですか』
『………………、アストリア。あすとりあ。あぁ、はは、待ってる。待ってるからーーーーーー』
どすっ。
あぁ、神よ。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子
ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。
(その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!)
期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。
噂の聖女と国王陛下 ―婚約破棄を願った令嬢は、溺愛される
柴田はつみ
恋愛
幼い頃から共に育った国王アランは、私にとって憧れであり、唯一の婚約者だった。
だが、最近になって「陛下は聖女殿と親しいらしい」という噂が宮廷中に広まる。
聖女は誰もが認める美しい女性で、陛下の隣に立つ姿は絵のようにお似合い――私など必要ないのではないか。
胸を締め付ける不安に耐えかねた私は、ついにアランへ婚約破棄を申し出る。
「……私では、陛下の隣に立つ資格がありません」
けれど、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「お前は俺の妻になる。誰が何と言おうと、それは変わらない」
噂の裏に隠された真実、幼馴染が密かに抱き続けていた深い愛情――
一度手放そうとした運命の絆は、より強く絡み合い、私を逃がさなくなる。
【完結】私は聖女の代用品だったらしい
雨雲レーダー
恋愛
異世界に聖女として召喚された紗月。
元の世界に帰る方法を探してくれるというリュミナス王国の王であるアレクの言葉を信じて、聖女として頑張ろうと決意するが、ある日大学の後輩でもあった天音が真の聖女として召喚されてから全てが変わりはじめ、ついには身に覚えのない罪で荒野に置き去りにされてしまう。
絶望の中で手を差し伸べたのは、隣国グランツ帝国の冷酷な皇帝マティアスだった。
「俺のものになれ」
突然の言葉に唖然とするものの、行く場所も帰る場所もない紗月はしぶしぶ着いて行くことに。
だけど帝国での生活は意外と楽しくて、マティアスもそんなにイヤなやつじゃないのかも?
捨てられた聖女と孤高の皇帝が絆を深めていく一方で、リュミナス王国では次々と異変がおこっていた。
・完結まで予約投稿済みです。
・1日3回更新(7時・12時・18時)
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる