はじめましては処刑台の上で。

千花 夜

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過ぐる日々を想う

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(内容紹介必読)







 この国が国として成っていなかった時。

 周辺国の脅威から逃げ惑う不安定な日々を送っていた遊牧民達の前に、ある日突然神が舞い降りた。
 神は偶然見つけたうら若い12人の美しい少年少女に見惚れ、愛を与えた。
 神の寵愛を一身に受けた少年少女は、それぞれが類まれなる魔力と武力を持ち、同時に不老の力を手に入れる事となったのである。

 やがて、神は天空に浮かぶ神の国へと戻り。
 比類なき力を得た少年少女は、協力して『国』を創る事にした。大切な家族や友を周辺国の脅威から護り、安寧を手に入れる為に。
 周辺国と戦うことを選んだ少年少女に、遊牧民たちは当然喜んで従った。

 1人が万の軍勢の力を誇る少年少女は瞬く間に周辺国を退け、広大な大地を手に入れた。彼等は魔法で巨大な城壁と結界を創り、他者の攻撃が内部へと一切入らぬよう徹底する事で民を護った。
 

 そうして彼等は少年少女から【国創りの神子】となったのだ。

 
 神子達は最初に自分達についてくることを選んでくれた少年を【王】に据え、自分達がその守護者となる事で、国民達から自分達が畏怖の目で見られることを防いだ。同時に広大な土地を12の都市に分け、それぞれが1つずつ都市を治めることにより治安の維持を図った。

 忠実を司る神子【ガーネット】は、貴族都市シンビジウムを。
 誠実を司る神子【アメジスト】は、学者の街フリージアを。
 聡明を司る神子【アクアマリン】は、学園都市アイリスを。
 純粋を司る神子【ダイヤモンド】は、王都アルストロメリアを。
 幸福を司る神子【エメラルド】は、歓楽街ライラックを。
 裕福を司る神子【パール】は、ギルド街ローズを。
 威厳を司る神子【ルビー】は、神秘都市リリーを。
 和合を司る神子【ペリドット】は、観光都市アマリリスを。
 慈愛を司る神子【サファイア】は、港町ダリアを。
 希望を司る神子【トルマリン】は、鉱山都市ガイラルディアを。
 友愛を司る神子【シトリン】は、農耕都市ブバルディアを。
 栄光を司る神子【タンザナイト】は、闘技都市ポインセチアを。

 民は神子を崇め敬い、王を慕い。


 遊牧民『ジュエル民族』は、『ジュエル王国天の沈まぬ国』として、世界にその名を知らしめた。





 なのに。




 あぁ、あぁ、許せない。赦せない。
 【裏切り者】共め。我欲に狂い、神の意志を騙って国を支配しようなんて愚かなことをどうして思い付いたのか。永い永いーー500年もの時を共に過ごして来た友だからこそ、神を謀る罪は裁かねばならぬ。

 きっと、悪魔に取り憑かれてしまったのだろう。ならば我らが清めて神の元へと送り還さねば。
 何故逃げる?何故怒る?悪いのは、お前達なのに。『正気に戻れ』などと、よくもそんなことが口に出来たものだ。


 ほうら、捕まえた。


 さぁ、まずは神殿で穢れたその身体を清めてやろう。至上の快楽は神の寵愛の証。神の寵愛を受けるのは我ら神子の使命であるぞ。ーーおや、まだ駄目か。
 では、我らが直接この身で清めてやろう。なぁに、怖がることは無い。我らは清らかな身。お前達如きの穢れなど我らの身体になんの害ももたらさぬ。ーーふむ、これでも駄目か。
 ならば、1度拷問にかけてみよう。お前達の身体を乗っ取っている悪魔が痛みで出て行くやもしれぬ。あぁ、な泣くな叫ぶな。これは必要な痛みなのだから。ーーあぁ、可哀想に。まだ駄目か。


『ーーもう、殺して。お願い、お願い』
『成程。では、死して次の生を待つか』
 

 誰よりも友を愛した神子が、断頭台へ。


 さぁ、もう一度寵愛を快楽を激痛を。寵愛を快楽を激痛を。寵愛を快楽を激痛を。寵愛を快楽を激痛を。寵愛を快楽を激痛を。寵愛を快楽を激痛を。寵愛を快楽を激痛を。寵愛を快楽を激痛を。寵愛を快楽を激痛を。寵愛を快楽を激痛を寵愛を快楽を激痛を寵愛を快楽を激痛を寵愛を快楽を激痛を寵愛を快楽を激痛をーーーー


『ぁ、あああ、ァ、ーあ、はは、ぁああ』
『おやおや、壊れてしまいましたか。残念残念』


 誰よりも慈悲深かった神子が、断頭台へ。


 お前は、まだ取り憑かれたままか。悪魔とはなんとしぶといものか。……しかし、このまま同じ事を繰り返しても何も変わらぬ。



 ならば、王の寵愛で穢れを落とすか。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。


『も、う、殺してくれ。もう嫌だ。もう、こんな、』
『どうして変われないのです。もう一度昔のように笑える日が来ると、なぜ分からないのです』
『あぁあああ、あ、ぁ、もう、たすけ』
『……残念です』


 誰よりも繁栄を助けた神子が、断頭台へ。




 久方ぶりに見る外の景色は美しくて。ボロリと零れた涙に、国民からの罵声が帰ってくる。かつての共に引き摺られるようにして断頭台に固定された俺は。


『ーー……あ、は』


 なんて美しい、真紅だろうか。









『……本当に、変われないのですか』
『………………、アストリア。あすとりあ。あぁ、はは、待ってる。待ってるからーーーーーー』




 どすっ。



 


 あぁ、神よ。
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