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12話

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「殿下、俺はずっと、貴方のことをお慕い申し上げておりました。
入学式の時、平民で1人、心細い思いでいる私を励ましてくださったあの時から、ずっと……お慕い申し上げております……っ!」


おいコラ。
そこまでド直球に言うんじゃない、このすっとこどっこい平民が。

こんな大衆の目線がある中で、堂々とてらいなく言うとは思わなかった。
周囲の貴族たちも思わぬ発言にザワつく有様だし……俺としたことが、気を遠くにやりたい気分になってしまう。まあ、こうなる気持ち自体は初めてではないのだが。


「嘘だっ!だったらどうして、あんな男のことを庇い立てするんだ!」


なんだこの痴話喧嘩は。頭お花畑か。

……さらに俺の後ろにいる奴の殺気がどんどん高まってる気しかしないの、なぁぜなぁぜ??




「事実、ケニー・トランスウェル様が素晴らしいお方だからです」

この空気を混沌とさせた張本人こそこのド平民ではあるが、俺を立てる役をするのもまた、この庶民出身のルイ・パターソンなのである。
略奪相手である俺に対して敬意を表し続ける彼に対し、殿下を含めた周りの人々が戸惑う中、さらに言葉を続ける。



「トランスウェル様は、殿下の婚約者となられるだけの、気品と礼節、知識が豊富なお方です。それに加え、私のような庶民に対して厳しくも寛大なことに、色々教わって頂いて参りました。
俺の想いが、トランスウェル様に対する裏切りということもわかっています、ですが……っ!」


さらにまた、擦り付けていた額を押し付けるように、低い姿勢でルイが、ザイアス殿下に嘆願する。



「どうか、どうか殿下……っ!俺、もっと頑張りますから!勉強も、マナーも、何もかも……っ!貴方の隣に相応しいと、言って貰える人間になれるように、頑張りますから!

だから、こんな形で、貴方の素晴らしい婚約者であるお方と、婚約破棄するようなことはなされないでください……お願いします!!」




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