名を忘れた悪役令嬢

御伽夢見

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アリアドネの望み

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 「アリー?」

 戻るなり親友の姿をみて驚き、呟くテーミス。

 「おかえりなさい・・・・・・・テーミス。その様子だと意外とスムーズに解放されたようね。」

 「え?いや、かなりお父様がお怒りですが、私が強い意志で馬車に乗り込みました。そうしたら、ちょうどその場に帰ってきたお兄様が一緒に馬車に乗り込み、お父様が呆気にとらわれてるうちに出発しました。今頃、お母様がお父様をなだめすかす状態かと。」

 「ということは、ヘリング公爵令息が外に?」

 アリーが目をキラキラさせて問いかける。

 「そう、まだ、馬車の・・・あれ?アリー?ちょっと・・・。」

 テーミスが語り終えるより先にアリアドネは部屋の外へ向かった。

 アリーが何を心の奥で望んでいるのか知っているテーミスは止めることもなく、その姿を見送った。

 「・・・テーミス。ヘリング邸は大丈夫だったの?」

 「え?あ・・・みんな心配しておりました。私の顔をみてホッとして泣き出す侍女も。って、え?え?え?シリウス??」

 シリウスはテーミスに近寄るとそのまま抱き寄せた。

 「・・・・・たい。」

 「は?」

 「いや、何でもない。それよりも謁見の事を話してもいい?」

 「はい。勿論です。」

 テーミスは穏やかに返事をした。が、心の中はざわざわしていた。

 さっき抱き潰したいって呟いたように聞こえたのは気のせいよね?シリウスがそんな事を呟かないわよね?私の妄想?


#####################################



 「やあ、誰かと思ったらアリアドネじゃないか。巻き込まれたときは心配していたけど、元気そうで良かった。」

 馬車を降りながらテーミスの兄、フレッドが話しかけた。

 「そんなに心配してくれました?でしたらもう少し態度で示してくれてもいいのに。」

 「テーミスの件でバタバタしてたから、気にはしていたけれど正直忙しくって。ああ、でも僕は手紙を送ったはずだけれど手元に届いてないの?」

 「届きました。嬉しかったですよ。シリウスが外部に情報を流れないようにしていたあの時は、テーミスの状態も私に知らされていなかったから余計に。」

 「そう。そうだったね。ややこしい事が起きちゃって大変だけれど、僕の意志は変わってないよ。アリーは変わっちゃったの?」

 「まさか。私の気持ちは動いてませんよ。陛下達にも伝えるつもりです。その前にテーミスが謁見で何を話すのか気になりますがね。」
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