Circus

01.羽

2人は独りでふたりだけ ２

｢…レイチェル。どこに行くの。｣
俺はレイチェルに問う。今更だが何だか悪い予感がした。

｢………。｣
レイチェルは答えない。…今までこんなにレイチェルは冷たかっただろうか。

｢なぁ、どこに行くんだよ。｣

俺は廊下を歩くあいだずっとレイチェルに問いていた。

＊＊＊

｢…レイチェル。どうしたのかなぁ。すごく怖い顔してたね。｣
ナツは俺に聞いてくる。クソ、俺に聞くな！ナツはいつも迷惑だ。

｢…そうだな｣
｢ノラ…元気ない？｣
ナツはいつも…迷惑だ。小さな雰囲気にまで気づいてしまう。

｢…何でもねぇ。部屋に戻る｣

｢わかった！…｣

＊＊＊

｢遅かったね。｣
俺とレイチェルが部屋についた時、白髪の園長が居た。

｢…フェズ君。私はロバート・クラーク。君に伝えたい事がある。｣

そう言って笑顔で俺にとっての死刑宣告をした。その笑顔は悪魔のように怖かった。

＊＊＊

｢君の住処いばしょはここには無い。｣
そう言われた様に、俺の心は黒く…深く沈んでいった。

｢フェズ。聞こえていたの？｣
レイチェルが俺を少し叱る。俺は聞き間違いだと希望を持ってしまった。

｢…ぃ…いや…聞こえ…なかった｣
俺が控えめに言うとレイチェルは面倒だ、とでもいうような顔でため息をついた。

｢私が言うわ。聞いておきなさい。｣
緊張してつばを飲み込む。

｢貴方の新しい居場所が決まったわ。｣
俺は息が詰まる。…居場所…はここだ。俺の居場所は…ここだ。

｢…ぉ、俺は｢何を言っても変わらないわ。貴方はアルトロ伯爵に引き取られるのよ。｣

＊＊＊

売られると分かってからの時間は速く過ぎた。それほど俺にとって孤児院ここは大切だった。レイチェルは俺の道具をもう準備していて、ノラに会うのもナツに会うのもダメだと言った。

そして俺は孤児院ここを出た。

＊＊＊

｢ナツ…俺は…。｣
小さな少年ノラは、一人部屋になった自分の部屋のベッドの上でうずくまっている。

｢…ノラ…｣
その部屋の前に座ったナツが小さく呟いた声は弱々しかった。