恋文らいたー

misaka

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本編 壱

末吉とおフミ

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最近町内で噂になっている「恋文屋」。
俺は恋文屋の存在を知っていたし、店主だって知っている。
初め、与太郎が
「恋文屋を始めようと思う。」
なんて言った時は猛反対したが、与太郎が俺の言うことを聞くわけもなく開業した。すぐ潰れちまうなんて思っていたら、意外なことに繁盛しているらしい。

今日はその与太郎と町の団子屋に行く約束をしていた。
……2時間も前に。
まったく、与太郎の奴は変わらない。幼い頃から約束にはぴったり来たことはない。
困ったものだ。もしかして客にもそんな事をしているのではなかろうか。
少し心配になる。

「末吉。待たせた。」

客が増えてきたようだったし、一人の客の約束をやぶれば客足も低迷するに決まってる。そういう事をちゃんと与太郎に言ってやれる嫁は見つからないのだろうか。

「…おい。末吉、悪かったよ。」

…2時間も待たせておいて悪いで済むのかはわからないがまぁ、いいとしよう。

「ほら、与太郎。団子屋に行くぞ。俺はもう腹が減った。」

俺が腹をさすってげんなりした顔をすれば与太郎は少し落ち込む。
へっ。この位してもいいよな。

「…団子2本」

与太郎は静かに呟き笑った。

「いや、4本だ。」

俺も負けじと交渉していく。

「…3本」

与太郎は悩みながら言った。

「乗った!3本だ。」

交渉が決まると俺達は何処からともなく笑い出した。

「バカみてぇだな、与太郎。」
「あぁ、そうだな。末吉」

団子屋についてから俺達は団子を5つ頼み、外の椅子に腰掛ける。
すると、すぐ団子が運ばれてきた。

「団子は5つで、よかったですか?」

運んできた女子おなごを見た時、俺は恋に落ちてしまった。

後ろで団子にした艶やかな黒髪、長いまつげ、白くふわりとした肌、ピンクの唇___。

彼女の全てを俺は好きになったんだ。

俺は彼女に見とれてしまった。
「末吉、おい、末吉。…帰るぞ。」
気付かないうちに時間が経ったようで与太郎は俺に声を掛ける。
「…ぅ…うん。」
俺はぼーっとしたまま与太郎の後ろを歩く。

「…末吉。お前もしかして先程の女子おなごが好みか。」

与太郎は平気で俺に聞いてくる。

「っ!べ、別に何もねぇんだ!団子が美味かったなぁ、とか思っただけだ!決してそんな心は持ってねぇ!!これから毎日通ってあわよくばあの女子おなごの名前を知りたいだなんて思ってねぇ!」

与太郎は俺の答えを聞いてふっ、と笑った後「そうか。悪かったな。」と言った。

それから一ヶ月、その団子屋に通って女子おなごの名がおフミだということ、そして良く話すようになった。

「おフミさんよ、団子2本!」

今日も俺はおフミさんのいる団子屋にいく。

「はいよ!いらっしゃい末吉さん。」

おフミさんは優しく笑う。
団子を待っていて持ってきたのは団子を作っている佐助だった。

「…ちぇ。佐助かよ。俺がおフミさん目当てなの知ってるだろう?」

俺が佐助に愚痴ると無口な佐助は言った。

「…おフミ、さっき 急いで、帰った。彼女…今週でお店、辞めてしまう…かもしれない。」

俺は佐助に団子2本分の金を渡し、受け取らないまま与太郎の店まで走った。

「…末吉…団子…。」
佐助は哀しそうに末吉の頼んだ団子を見て店の中に入った。

「与太郎!!!」
恋文屋に入った途端、俺は叫んだ。
「…何だ?末吉か。どうした。…団子屋の女子おなごの事か。」
与太郎は俺の事なんてお見通しの様で笑って言った。

「あ、…あぁ!そうだ!おフミさんへの恋文を書きたい」
あぁ、バレていたからにはもう、ヤケだ。
これまでのこと、おフミさんがお店を辞めるかもしれないということを全て話した。

「…そうか。俺がお前の恋を成就させる。」
与太郎はそう言って筆と紙を取り出した。

「俺が言った事を考えて、そのまま考えた事をかけ。それだけでいい。」
与太郎の言葉は何故か安心感があった。

「わかった。」
俺は静かに座って筆を握った。

「…どうしてこの手紙を書こうと思った?」
そうして与太郎の仕事が始まった。





「…できた。」
「そうか。良かったな。」
与太郎の言った通り恋文を作った。
「渡してきたらどうだ?銭はその後でいい。」
与太郎は笑って言った。
「…与太郎、俺渡して来る。」
俺はもう一度団子屋に行っておフミさんの家を聞き、恋文を届けようと走った。

「…あれ?…末吉さん?」
一人の女子とすれ違った時、おフミさんの声が聞こえた。
振り返るとそれはおフミさんだった。

「…おフミ…さん。」
俺が名前を呼ぶと「はい、何でしょう。」と笑った。
「…俺…おフミさんに…渡すものがあったんだ。」
俺がおフミさんに恋文を渡すとおフミさんは中身がわかったのか少し頬を赤くした。
「…末吉さん。…これが…もし、私の勘違いでなかったら…恋文、でしょうか。」
頬が赤いまま上目遣いで俺に問うもんだから可愛くて仕方が無い。抱き締めたい、なんて思ってもはしたねぇからできない。
「…あ、あぁ。」
俺が頷くと彼女は恋文を開いて読み始めた。…恋文とは、一人で読むものではないのか。これでは恋文ではない気がしてきた。

「…っ。」
読み終わったのか、俺の方を見た。そして目にたくさんの涙を浮かべた。

「!!お、俺はおフミさんを泣かせてしまったかい?…すまなかった。」

そんなにも俺からの恋文が嫌だったのか。
与太郎。ごめんよ、君が手伝ってくれたのにこの恋はダメだったみたいだ。

「…はい。泣かされてしまいました。末吉さん…私も貴方様が好きです…。」

おフミさんの答えは凄く意外で、聞きたかったんだけれど、なんか聞きたくなかったような、でも聞いてよかった。とおもった。

そうして俺達は恋人、というものになった。
与太郎にはたくさんのお礼を言った。銭を払おうとしたら幼なじみびいきだ、と言って受け取ろうとしなかった。

おフミと俺は上手くいって去年の夏、夫婦となった。再来月には子供が生まれる。

それも与太郎のおかげだ。恋文屋にお世話になった事はおフミは知らない。
きっと知っても怒ったりはしないだろうが、秘密を持っていてもいい気がした。

これからの人生を、おフミと過ごすことの出来る幸せを____感じている。
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