恋文らいたー

misaka

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本編 壱

佐助と一子

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俺は一子いちこが好きだ。
一子は強くて、かっこよくて、俺の持っていないものをたくさん持っている。
小さい頃からずっと助けられてきた。今度は俺が守ったりしてみたい。そう思っていた。

でも、もうそれは遅くて___。
一子は一昨年の春、病気で亡くなった。
原因不明の病気だった。治せないと言われていたのに、一子は治るなんて平気な顔して笑っていた。

「…佐助、あたしはあたしを大切にしてくれる人とあの桜を見に行きたいんだ。でも、同じように佐助も佐助を大切にしてくれる人と桜を見て欲しいって思うんだ。」
一子は桜を見る度に楽しそうに笑って言っていた。今年も桜の季節になり、一子が微笑んでいるように感じる。

一子がなくなって2年、心の傷が癒えた訳じゃないが毎日を過ごしている。
今は団子屋をしていて毎日団子を作っている。接客はあまり得意じゃないから巷で美人と噂のおフミさんに任せてずーっと団子をつくっている。

でも最近、不思議なお客さん達がいてひとりは多分おフミさんのことが好きで毎日 団子屋ここ通っている。その人は結構話しやすくて、あまり人とはなさない俺でもちゃんと話せる人だ。たしか…末吉とか言う名前だった。

もう1人は与太郎さん。多分末吉さんの幼馴染みでおフミさんと末吉さんをくっつけたいんだと思う。
この前なんかおフミさんに
「…末吉って来ていないかい?」
とか
「…この前話してくれた末吉はどんな奴だ?」
とかたくさん質問してて、おフミさんは満更でもないような感じで答えていたけど。
そしていつも俺のところまで来て話をする。でも今日はいつもと違う言葉を言った。
「…佐助、君も恋をしているの?」

俺は驚いたよ。誰にも言ったことがないしましてや一子を知っているわけでもなさそうなのに。

「…なぜ。そう思った?」

俺は動揺を隠せなかった。ちぇ。

「…会いたい人が居そうだ。」

またバレてる。何でだろう。俺は表情に出るって一子に言われた気がする。本当みたいだ。

「…いるよ。逢わせてくれる?」

なんて意地悪言ってみるのも図星だったからだ。

「……それは無理そうだね。」

お見通しみたいだ。

「…そうだね。今…雲の上。」

彼は少し「やってしまった」と思ったのか顔をしかめた。

「…恋文屋に手伝わせてくれないか。」

彼はそんなことを言い出した。人と話さない俺でも聞いたことのあるくらいの噂、恋をしている人の手伝いをするという恋文屋は若い者達にとても人気なんだそうだ。
でも一体どうやって俺の恋を叶わせるんだ…?

「…できるなら。」

俺の口は知らない間に動いてしまっていた。心の中では助けて欲しいのか…。

「明日、 団子屋ここは定休日だな。 未の刻に呉服屋の前で待っている。」
彼は静かに席を立って店を出ていった。余りにも簡潔だったから何だか不思議な気持ちになったものだ。

俺が時間より早く呉服屋で待っていたら店主の弥一が話し掛けてきた。
「…佐助さんよ、いったい誰を待っているんだい?」
「与太郎さん…」

俺が答えると弥一は笑った。
「…女子おなごかと思へばちがったんですかい。」

余計なお世話だ。なんて言えないから少し呉服屋を離れた。

「…どうして離れていくんですか?佐助さん」
後ろから与太郎さんの声がした。振り向くと少し焦った顔をしていた。

「…いや、何でもないですよ」
俺は繕うように言った。与太郎さんも納得してくれたようだ。

彼が俺を連れていった所は町内で一番大きな桜の樹の下だった。
___一子と来たことがあった。

「…恋文屋は何をしてくれるんだ?」
一子の事だから言葉がスラスラ出てきた。与太郎はそれに少し驚いたようで。

「恋文屋は恋を手助けする。佐助さん、恋文を書かないか?」
彼は何もかもを知ってるかのように優しく言った。

「…あぁ。」
せっかくここまで乗った舟なら言うことに従うことにした。

彼の指示に従って恋文を認めるしたためる

___一子、君は見目も良くて強くて優しくて俺にとってとても大切な人だよ____

心に残った一子への想いを恋文に書く。もう、届きはしない一子へ__

俺が恋文を書き終えた時桜と共に手紙のようなものが舞った。はて、あれは一子が持っていた紙ではないか。俺は知らない間に手を伸ばして取っていた。

それの中には俺宛の手紙と桜の花弁が入っていた。桜の花弁はもう色褪せて茶色くなっていたが、俺の目には綺麗な桃色に見えた。

手紙には俺のことと一子の病気への思い、一子からの俺への恋文があった。

___佐助。もうあたしは先がないよ。
先がないのに佐助への想いが止まらなくて辛い。
佐助には幸せになってもらいたいんだ。
私なんかが想いを伝えるべきじゃないかもしれないってずっと思っていたんだ___

俺と一子はやっと願いを叶えたんだ。

満開の桜が舞い散る中、
桜の木の裏で恋文屋がそっと微笑んだ。
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