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第1章
広域量販営業部
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「じゃあいつも通り順次報告お願いします。」
会議室に広域量販営業部の面々が集まった。
先週の活動報告と今週の活動予定を報告する毎週のミーティングだ。
「報告致します。先週は社内で先方から送られていた資料の作成…」
其々が淡々と報告と予定を読み上げる。
新商品が出たわけでも新規の客先が出来たわけでもなく、これといって目新しい事がない。
広域量販営業部全員の報告でも30分はかからない。
各自の報告をつまらなそうに聞いている若者の姿があった。
あくびをごまかすために口元を手で隠したり、目を見開いて聞いているアピールをしている。
誉田弘人。
新卒で廣川に入社して3年目の若手社員だ。
上司から頼まれた事は確認を怠らず無難にこなし、量販店の巡回もマメに行っているので客からも評判が良い。
社会人になると嫌と言うほど言われる「報・連・相」の報・連は完璧なタイプだ。
その一方で仕事に対する熱意があるかと問われれば別だ。
誉田は入社してから大きなトラブルを起こす事はないが、自分から率先して何かをやりたいと周りに投げかけた事はない。
まだ3年目と「フレッシュ」な若手社員の筈なのに、言動も行動も妙に達観している。
(まぁ…俺が他人の事どうこう言える義理じゃないか…)
康太郎は客先よりも喫茶店に長く居る自分を情けなく思った。
ミーティングが終わり、各自が自分のデスクに座り業務に取り掛かる。
広域量販営業部が新設された当初はどの部よりもチームで動く営業部になる予定だった。
それがいつの間にか「個人で動く形だけの組織」になっていた。
営業部長の西本はつまらなそうに書類を眺めている。
その横で営業課長の川瀬が大きな声で先週のゴルフのスコアについて周りと談笑している。
川瀬は営業課長であるが、西本より年上だ。
社内営業が上手く、経験は豊富であるため転勤族の西本にとってはやり辛い面もあるのだろう。
部下の相談も全て「俺じゃなくて西本さんに聞いて」が口癖だ。
基本的には人当たりは良いので康太郎も嫌いではないのだが、川瀬の管理職としての能力は疑問に思っていた。
デスクワークもそこそこに康太郎は外回りの準備を始めた。
「今日は埼玉か…渋滞がなけりゃいいな」
黒板に予定を書き込み営業車の鍵を受け取る。
またいつもの運転時間が大半の営業活動が始まる。
「久我山。今日戻ったら話があるんだ。」
西本から不意に呼び止められた。
「はい。話ですか…?」
「おう。大した事じゃないんだけどさ…まぁよろしく頼むよ」
「はぁ…」
康太郎は嫌な予感がした。
(大した用事じゃないのにこの場で言わずに帰ってきてから話すって事は大した用事だよな…)
康太郎は重い足取りで埼玉へ向かった。
会議室に広域量販営業部の面々が集まった。
先週の活動報告と今週の活動予定を報告する毎週のミーティングだ。
「報告致します。先週は社内で先方から送られていた資料の作成…」
其々が淡々と報告と予定を読み上げる。
新商品が出たわけでも新規の客先が出来たわけでもなく、これといって目新しい事がない。
広域量販営業部全員の報告でも30分はかからない。
各自の報告をつまらなそうに聞いている若者の姿があった。
あくびをごまかすために口元を手で隠したり、目を見開いて聞いているアピールをしている。
誉田弘人。
新卒で廣川に入社して3年目の若手社員だ。
上司から頼まれた事は確認を怠らず無難にこなし、量販店の巡回もマメに行っているので客からも評判が良い。
社会人になると嫌と言うほど言われる「報・連・相」の報・連は完璧なタイプだ。
その一方で仕事に対する熱意があるかと問われれば別だ。
誉田は入社してから大きなトラブルを起こす事はないが、自分から率先して何かをやりたいと周りに投げかけた事はない。
まだ3年目と「フレッシュ」な若手社員の筈なのに、言動も行動も妙に達観している。
(まぁ…俺が他人の事どうこう言える義理じゃないか…)
康太郎は客先よりも喫茶店に長く居る自分を情けなく思った。
ミーティングが終わり、各自が自分のデスクに座り業務に取り掛かる。
広域量販営業部が新設された当初はどの部よりもチームで動く営業部になる予定だった。
それがいつの間にか「個人で動く形だけの組織」になっていた。
営業部長の西本はつまらなそうに書類を眺めている。
その横で営業課長の川瀬が大きな声で先週のゴルフのスコアについて周りと談笑している。
川瀬は営業課長であるが、西本より年上だ。
社内営業が上手く、経験は豊富であるため転勤族の西本にとってはやり辛い面もあるのだろう。
部下の相談も全て「俺じゃなくて西本さんに聞いて」が口癖だ。
基本的には人当たりは良いので康太郎も嫌いではないのだが、川瀬の管理職としての能力は疑問に思っていた。
デスクワークもそこそこに康太郎は外回りの準備を始めた。
「今日は埼玉か…渋滞がなけりゃいいな」
黒板に予定を書き込み営業車の鍵を受け取る。
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「久我山。今日戻ったら話があるんだ。」
西本から不意に呼び止められた。
「はい。話ですか…?」
「おう。大した事じゃないんだけどさ…まぁよろしく頼むよ」
「はぁ…」
康太郎は嫌な予感がした。
(大した用事じゃないのにこの場で言わずに帰ってきてから話すって事は大した用事だよな…)
康太郎は重い足取りで埼玉へ向かった。
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