雪も積もれば冬となる~悪役公爵家に愛されちゃった!?~

コータ

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公爵家編

11.カワイ?

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 ルダンさんのお陰で体温が安定し始めたので、リハビリと言葉の勉強することになった。
 言葉の勉強が始まると、グレイさんが通訳してくれなくなってしまったから、もう俺は覚えるしか無い。

 ベッドの上で、背中側にクッションを置いて身体を起こす。今日、教えてくれる先生になるのはメルさんだ。
 先生役になってくれるのは、1番はメルさんで、2番目はグレイさんだ。

 服は勿論、キチンと着ている。白くもこもことしていて、フードもあって、ちょっと寒いなって時に被ると暖かくなる。
 ただこの服はちょっと乙女っぽいような気がする。でもせっかく用意してくれたんだから、文句を言ったら罰が当たるか。そう思って気にしない事にしている。

 俺は彼女の真似をしながら、身体を動かしていく。例えば、目を指で指しながら彼女が「目」といえば、俺は真似して自分の目を指して「目」と言う。
 そうして、ゆっくりと身体を動かしながら言葉を覚えていく。

 しかし彼女が、教えてくれる言葉の中で唯一分からない言葉がある。
 彼女は、ちょくちょく俺を指さして「かわい」と言うんだ。そして自分を指して同じ言葉を言う。それを真似すると、凄く喜ぶんだけど……。どんな意味なんだろう?

「ウェイン、かわい」
「ウェイン、カワイ」
「メル、かわい」
「メル、カワイ」

 ほら、また始まった。俺が真似すると、パチパチと拍手してくれる。
 俺が思うに、この言葉は褒め言葉なんじゃないかな。俺は早く覚えられるように何回か繰り返していると、メルさんが抱きしめてきた。ギュウギュウと抱きしめられると、まるで自分がぬいぐるみにでもなった気分になる。

「カワイ、カワイ」
「本当に可愛いわぁ」

 メルさんが耳元で呟いていた。でも、何を言っているかは分からない。ちょっと長い言葉はまだ難しい。

「そうだわ!お茶会しましょ!」

 そう言ってメルさんは、パッと身体を離した。俺は首を傾げると、今度はゆっくりと話してくれた。

「お、ちゃ、か、い」
「オ、チャ、カ、イ?」
「おちゃ、かい」
「オチャ、カイ」
「おちゃかい」
「オチャカイ」

 うまく発音出来ると、メルさんは俺の頭を撫でながら、グレイさんに話しかける。

「グレイ、お茶会の準備をお願いね」
「場所はいかがなさいますか?」
「そうね。今日は天気も良いし……アカネバラのパーゴラにしようかしら。丁度、見頃じゃなかった?」
「えぇ、そうですね。では、準備いたします」
「私達は先に向かうから敷物だけ敷いといて頂戴。それとアビーに、ウェインが食べれるものも聞いて用意して」
「かしこまりました」

 何かいっぱい、喋ってるけど全然分からない。俺はメルさんとグレイさんの聞きながら、ボケッとしていた。
 グレイさんが頭を下げて部屋を出ていくと、メルさんはベッドから降りた。

「さぁ、ウェイン。一緒にお外に出ましょうね」
「?」
「お茶会よ、お茶会」
「オチャカイ!」

 さっき覚えた言葉だったので、俺は得意気に繰り返す。
 メルさんは、また「かわい」と呟くと、俺をヒョイっと持ち上げた。
 確かに俺はメルさんより小さいけども、それでもほんのちょっとだよ!?まるで重さを感じてない様子に驚愕する。
 まぁ、お姫様抱っこじゃないからまだ良いか。なけなしのプライドが傷ついたような気がした。

 抱っこされたまま扉の前に来ると、メルさんの御付きのメイドさんがスマートに扉を開けた。
 廊下も階段もメルさんは、グラつくこと無く、安定して俺を運んでいく。
 流石に階段の時は怖くて、目をギュッと瞑り、メルさんに抱きついたんだけど。そしたら、メルさんは楽しそうにまた「かわい」と言って鼻歌交じりに階段を降りていった。
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