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我が子として育てた子供から溺愛される子魔女は惚れさせてみせろと課題を出した 10

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ゆっくりと落ちていく。意識の底へと。もう、目覚めたくはないのよ。悪夢のような現実なんて生きたく無いわ。
あなたは……。
「…………………………。」
あの子と幸せになりなさい……。
「…………………………。」
それが私の願いよ。
「…………………………。」
もう現実なんて見たくない。ジャック君が他の子に笑う姿なんて見たくなんて無い。誰かの声も何も聞きたくないのよ。酷い悪夢のような現実を見せつけられて。絶望した私は甘い夢の、私が望む夢に堕ちていった。
「蘭夏。」
「……………………。んん……。」
此処、どこかしら。知らない部屋にいた私にジャック君は心配した顔して
「大丈夫?魘されていたよ?」
魘されてた……。………………。こんな風に優しくされたのは。何時から無かったかしら。
「ええ、そうね。酷い悪夢を見てたのよ。あなたが他の誰かを愛するのを見せつけられる夢。」
すると夢の内容を聞いたジャック君は
私に欲しい言葉をくれる。
「なに、それ。辛かったね。俺なら夢でも他の誰かを愛したりなんかしないよ。」
「…………。そうよ。」
そうよね。私が愛したジャック君は私だけと言ってくれる。現実のジャック君はそうではなかった。私に飽きたと言い放った。ならもう良いわ。
「俺が忘れさせるから。」
「うん……。」
夢の中くらいなら、素直になろうかしら。此処で、永遠に目覚めない夢の中にいるわ。だけど
1つだけ後悔があるなら。
私もあなたと永遠を生きたかったと言いたかった。だけど望んではいけない、いけなかった願いだから。これで良かったのよ。

「…………。これが最後の説明だよ。」
「はい。…………………………。」
夢に入るのは自分の精神。つまり心。
夢の中から現実に連れ戻すという意思が最後まで保てば助けられる。もう先生には時間が無かった。
「夢の最下層までに行くまででも、異分子であるアンタの排除をする為に精神攻撃してくる。そして最下層でアンタが愛してる蘭夏もアンタを排除しようと容赦なく攻撃してくる。」
「分かりました。それでも連れ戻します。」
偽りの夢を見て、偽りの願いをした。自分の気持ちさえも偽った。ウソだらけなまま、それで幸せなわけがない。
「そう。現実に連れ戻す。最後までその意思を貫きな。最後に。絶対に絶望に堕ちるな。」
「え……。」
「永久の夢想の中で、絶望に堕ちていった奴は助からない。絶望しても諦めるんじゃないよ。出来るかい?」
「出来ます。」
先生、あなたが偽りの夢にいる。俺の為にと偽りの願いをした。自分の気持ちにも嘘付いて。あなたはそれで幸せですか?
それに俺はまだ。あなたと永遠を生きたいと言ってない。あなたの本当の気持ちを聞いてない。だから俺は偽りに満ちた夢に囚われたあなたを助けに行くんだ。
「俺は先生に言わないといけない事がある。だから助けに行きます。」
「……。その顔なら大丈夫だね。」
ねえ、ウィルプス。こいつを、頼んだよ。そう思いながらジャックの額に指を置くと
「これで準備は終わった。蘭夏の夢の最下層に行くイメージをすれば入れるよ。」
これが私の最期の仕事だ。もう後悔はしたくはないのさ。やれることは全てやった。夢に入った者のダメージを最低限にするようにさせたり。夢の侵食度を遅らせた。
「…………。ありがとうございます。」
行ってきます。と言ったら言われた通り夢に入るイメージをしたジャックは何も言わずに蘭夏の側で倒れた。
「…………………………。さて。」
最後まで気は抜けない。あの二人が帰ってこれるようにする。絶対にするからね。
「偽りの夢見て何が楽しいんだい!蘭夏!」

「っ。…………。」
「は……。どうしたの……?」
「…………。邪魔者なだけだよ。」
現実から誰かが入ってきたと聞いた蘭夏は
「なにそれ、どこの誰なの?」
「現実の俺だよ。」
侵入者が入ってきただけでも顔をしかめていた蘭夏。しかもその侵入者が現実のジャックと知って
「ずいぶん不愉快ね。身の程を分からせないと。私の夢に入ってきたこと後悔させてやらなきゃ。」
ふん。と笑う蘭夏。かつて現実のジャックを愛してた彼女はいなかった。
「まあ、此処まで来ることはないよ。しっかり攻撃してるから。え。イレギュラーだったよ。アイツの精神を守って攻撃してた奴ら消し飛ばしてるのがいる。無傷で此処に来るよ。」
「え……。一体誰が守ってるの?」
私は此処にいたいのに。そう苛立たせていたら。夢想のジャックは
「まあ最下層まで無傷で来たって絶望に堕としてやれば良いんだよ。そうすれば現実の俺は衰弱して死ぬからね。そうしたら邪魔者はいなくなるよ。」
「それもそうね。どうやって絶望させてやろうかしら。」
此処に来るなら来てみなさいよ。此処に来た時が本当の絶望の時よ。

「……………………。もう少し。」
聞こえるかい!とジャックの頭に響いてきたのは胡蝶の声だ。ジャックを夢の最下層に行かせないように精神攻撃しようとしてきた夢想のジャックは
「この、邪魔なんだよ!」
とジャックが邪魔するなと攻撃したら簡単に消し飛んだ。どういう事だと考えてたら
あんたに欠片を置いておいた。ソイツはアンタを守ってくれるからね。そう聞こえた。それからも
「俺は先生の所に行くんだ!」
邪魔してきた夢想のジャックを消し飛ばしては奥まで進んだ。異分子の自分を拒絶するように抵抗の力は強くなり
《さっさと私の夢から出ていって!》
《なんで来たのよ!!》
《私は此処にいたいのに!邪魔しないでよ!!》
「…………………………。」
どれだけ拒絶されても、俺は。知っているんだ。あなたの本当の願いを。俺の気持ちを言うまで
「帰るかーーーーーっっ!!!!」
「着いた……。ここからだからね。」
現実の、眠ってる蘭夏も。何故、来たのと怒りを滲ませながら言っている。
「…………。何故来たの。」
邪魔よ!と怒りを滲ませながらジャックに言い放った蘭夏に胸が痛んだが
「いくら邪魔と言われても関係ない!あなたを連れ戻しに来たんだ!!」

抵抗を受けながら奥へと向かった先。そこは先生の心であり、夢の部屋だった。
「…………う。この部屋。」
間違いない、夢の最下層だ。先生が見ていた夢で先生がいたのはこの部屋だったから。
「……………………。あ。」
今いる場所が夢の最下層だよ。ここからだからね。しっかりやりな。そう聞こえたら何も聞こえなくなった。
「…………。先生は……。」
やっぱり此処が夢の最下層か。最下層だから誰か邪魔するのかと思ってたけど。誰もいないし、何もしてこない。まさか迷わせるのかと思ったら先生と俺がいた。さしずめ、夢想の俺と言ったところだろ。先生は怒りを滲ませた顔をしている。これまでこんな目を向ける先生を見たことはあったか?いや、無かった。
何故来たの、そして間髪入れないで邪魔よ!と叩き付けるように拒絶する先生に。
『そんなの決まってる。』
俺もあなたに似たみたいだ。どこか頑固に育ったみたいです。あなたが絶対に出るつもり無いなら、俺は絶対連れ戻すと決めたから。だからあなたを連れ戻しに来たんだと叫んだ。

「ふん、誰も連れ戻してなんて言ってないわ。あなたが勝手に土足で入ってきて助けるなんて言ってるだけよ。」
私は彼さえいれば良いのよ。あなたなんて要らないの。と夢想の俺にすり寄る。夢想の俺は先生だけで良いと判断してるようで何もしないし、言ってこない。
「嘘だ。」
「あら、ショックを受けたの?」
クスクスと笑う蘭夏に俺は
「俺は知ってるんだ。今見ているこの夢も、あなたが願った事も。あなたは自分の気持ちさえ、全部偽っているくらいな。」
どう出る。その事実さえ覚えてないなら思い出させる。それだけだ。するとどうだ。バキッ!と回りから割れる音がした。
「…………。」
亀裂が入ってる。ということは。此処は先生の夢の中だ。つまり先生の心の中で先生は今動揺してる。つまり覚えている。
「私が?偽っている?都合の良い妄想もここまできたら笑えるわ。」
「そうなのかな。あなたは今動揺してるでしょう?」
実際に言ってみたらあからさまに顔を変えた。そんな蘭夏にこれまで何もしなかった夢想の俺は
「俺がいくよ。俺が仕留めてやるから安心して。」
「ええ。あの子を痛め付けてやって。トドメは私が刺してやるわ。」
「っ。」
やっぱり避けては通れないか。自分の想いを強く持つ。それだけが、先生を助ける手段なんだから。
「はあ、ホント。随分好き勝手に言ってくれるよなお前。俺は全部知ってんだよ!」
「ぐっ!」
ドガッ!!と思い切り蹴りを受ける。
「無傷で入ってきたお前に良いこと教えてやるよ。夢に入ってきた現実の奴らが受けた身体の傷はな。現実でも身体に受けるんだよ。」
「は……?」
ウソだろ。入るのは自分の精神。心だけだ。なら現実の俺に何も影響は受けない筈だ。俺を動揺させるつもりか?
「は、は。お前が動揺させるつもりなの分かってるんだよ。」
「ちっ、引っ掛からないのかよ。まあいい。お前さ。何回蘭夏を傷付けるんだよ。勝手に入ってきて助ける?望んでもいねぇのに?挙げ句になんだよ。こうなったのはお前のせいなのに。蘭夏がなんでこうなったのかも全部知ってんだよ!」
「ぐ、ぅっ!」
「此処に来た時蘭夏は悪夢を見たって言ってた!悪夢みたいな酷い現実だったってな!お前はあの幻影の奴といたら良かっただろが!!お前も飽きたって言っただろ!言われた時の蘭夏の顔を見てもいねえで!蘭夏の気持ちを何も考えないで!だから蘭夏は俺を選んだんだよ!自分が望む夢を!望む事を言ってくれる俺をな!!お前なんか要らないなんてのいい加減分かれよ!」
容赦なく蹴り付ける夢想のジャックは怒りのまま蹴りを止めない。確かに現実の身体には影響は無いが、精神には効いてくる。
現実ではジャックの身体に幻影の蘭夏が精神の回復と防御の回復を必死にしていたが。それでもすり減っていく一方だった。回復が追い付けないほど攻撃を受けていたジャックはぐったりして動けていなかった。
「動けないみたいね。私がやるわ。」
「好きにしなよ。蘭夏の心に土足で入って好き勝手にする奴なんだから。」
「ええ。…………。ふん!」
ガスっ!と顔を蹴り飛ばす蘭夏。
「う、ぁ……。」
「邪魔よと言った時点であのまま帰ったら見逃してあげたのに。もう止めたわ。此処に来たことを後悔させて死なせてあげるわ!私の気持ち!?本当の願い!?何も知らないで知ってる風に言わないで!」
「……。知って、るんだ。」
「しつこいわね!まだ」
あなたが、俺のせいで、不老不死になった事。
そう言うと蹴りを見舞ってた蘭夏の足が止まった。
「え…………。いつ、それを……。」
回りからさっきよりもより大きくバキッと音が響いた。
「…………。胡蝶、という魔女……。」
ボロボロで、身体が痛むけど。そんなの。先生の心は痛かった筈だと我慢した。何とかフラフラとしながら立ち上がると
「先生……。先生は……。」
俺の為だと言うけれど。あなたの願いはなんですか?
「っ……。そんなの!あなたが他の!」
「違う。あなたも……。」
俺と永遠を生きたかった筈です。それが、あなたの本当の願いだって知ってます。そう言うと
「あ、あ……。違う!違うのよ!」
夢が崩壊する!今ここで仕留めないとと焦った夢想のジャックは
「は、は……。邪魔だぁっ!!!!」
夢想のジャックが消えたら偽りの夢の崩壊は加速していき
「蘭夏。俺は。」
あなたと、永遠を生きたい。俺の為を思うなら。俺の願いを叶えて一緒に生きて。
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