追放されし『異端者』、レオンの異世界革命奇譚

露月ノボル

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【第二章】私の、悪夢

第53話 母の出身

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 「やめて!!」という声で目が覚める。「はぁっ!はぁっ」とがばっ上半身を起こし、またもやあの夢を見たのかと思う。スタンピード以来、ずっと見続けてる。

 目が覚めると朝日が差し込んでいた。天気は、空は、太陽は、残酷なほどの蒼さと明るさを放っている。私はその、眩しい陽から身を護るように、窓の横の、影になっている部分へと、起き上がって椅子を持ち移動する。カーテンを閉めればよかったのか。

  そう夢での怒りに対して、昨日の食事の栄養が、カロリーが身体に脳に染み渡り、ろくに寝ていなかった7日間で、ぐっすりと寝る事で回復した私の頭は回転を少しずつしてきた、夢のようなことは実際にはなかった、それなのにずっとこんなに思い込んで……リィズに、あんな、こと、を…。

 急速に猛烈な自責の念を、猛烈な罪悪感を、自己嫌悪を、取り返しのつかない喪失感を、言い尽くせないほどの……「私が悪かった」、その答えが、私を強く、押しつぶそうとし、潰れそうになった。

 コンコンコン。ノックの音だ!頭を手で抱えていた私は一縷の望みを声に託すように、「どうぞ…?」と声を絞り出した。するとドアを開けて来たのはやはりフェブリカ先生だった。

「レニーナ君、おはよう。よく眠れたかい?」

 そう優しくも弱弱しく、微笑みながら私に先生は挨拶をし尋ねた。私は、先生だったことで、とても失礼な事に、リィズでなかったという大きな失望と、リィズでなかったという大きな安堵感と、反する感情の板ばさみとなりながらも、先生へと返事をしようと、「はい…眠れました…」とだけ答えた。

「……そうかい。これ、朝ごはん。ここに置くよ?」そういい、テーブルの上にトレーにのったベーコンエッグらしきものとパンを置く。私はもそもそと、布団の外へ出るのが怖いような、そんな気をしながら、おずおずと、のたのたと、ベッドから出て、先生が座り食事のトレーが乗っているテーブルの席へと座った。

「さぁ、食べなさい。レニーナ君、今の君の仕事は、食べる事。そう、食べ終わったら、次の仕事が与えるよ。安心して、食べなさい」

 私は頷く。昨日、あの栄養も睡眠も完全に足りず摩耗した状態でとんでもない事を言ってしまった。それに、本当に身体が引き裂かれるような、奇妙な、完全に相反する感情や考えが、私を引き裂こうとするような、そんな異常な状態だったから、確かに今の私の仕事は、「食べる事」だ。

 私はそう、食事を昨日よりはがっついてはないが、無作法に無造作に食べ、「ご…ごちそうさま、でした…」と言った。

 フェブリカ先生が「そうか、頑張ったね」と言いながらトレーを下げてくれる。本当に先生は優しい。先生は優しいから、昨日リィズに最後に様々な悪い事をした数々を知らないふりをしてくれているのではないか…その不安で胸が締め付けられそうになる。

「今後の…こと、だけどね」とフェブリカ先生も食事をしながら言葉を紡ぐ。

「レニーナ君は…お父さんか、お母さんの、親戚とか知らないかい…?本来なら、やはり家族が身内が、育てるべきだ。他の子たちは、幸いこのウェスタ市や、他の地方に身内親族がいるようで、なんとかできそうだけど…」

「そう、レニーナ君にまず親戚がいないか、調べたいんだ。お父さんかお母さんから、親戚、おじいちゃんやおばあちゃん、お父さんにお母さんに兄や妹から兄弟が、いないかどうか、知らないかい…?」

 私は答えたかったが知っている事は父との馴れ初めの話…。

 しかし、母は、ある時言っていた。貴族の出で、色々と生活の縛りがきつかったため、家出して冒険者へと登録した、と。

 それをフェブリカ先生につたえると先生は、「なるほど…」と言った。

「貴族なら貴族年鑑とかに乗ってるかもしれないが…レニーナ君、お母さんの旧姓、って分かるかい…?」

 確かに旧姓が分からなければ、母の父親が、おじいちゃんが誰か分からない。どうしよう…と思ったが、ふとと思った事があり尋ねてみた。

「先生、父と母の結婚届とか、そういう書類は、村に保管されるんですか?」

  すると先生は、なるほど!という顔をして答える。

「いや、書類関係は市庁舎に原本は保管されているらしいよ。そこから婚姻届けを探し出して、ちょっと見てみようか」

 そうフェブリカ先生は微笑んでいい、「ご馳走様」と朝食を食べ終えた。

「それじゃレニーナ君。今ならもう市庁舎は開いてると思うから、行ってみよう」

 とフェブリカ先生はいいながら、荷物を色々と準備しながらしている。

「わかりました、ついてきてくれて、フェブリカ先生、ありがとう!」

 と私はお礼を言って、同じく軽く鏡台に向かって………鏡台。二度と、その後彼女は現れていないし、鏡を見ても、私のロングまで伸びたのでポニーテールにした銀髪と、生気ない死んだ目のエメラルドの目をした私がいるだけ…。

 もう、鏡が…繋がらないのかな…と虫が良さ過ぎる事を考えては罪悪感で、止められなかった自分に彼女に会う立場がないと浮かび、苦しくなる。

「レニーナ君。大丈夫かい?顔色が悪いよ?」と先生はいうが、気が付かれないよう笑顔を維持して「大丈夫です。すぐに用意、終わります」と身の回りの用意をする。

「それでは行こうか、レニーナ君」

 そう、フェブリカ先生は手を差し出してくれて、私はその手を掴んで離さすまいという衝動に駆られ悩んだ。


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