94 / 218
2章 満たす白 空っぽの黒
14話
しおりを挟む――場所は雪合戦と同じ場所。デパート前の大通り。
そこに立つ二人には、以前見られた楽しげな雰囲気など一切ない。
知らない者が見れば、彼等が仲間だなどとは到底思わないだろう。
それほどまでに濃密な、殺気、基魔力の衝突。
「……思えばお前のcellを見んのは初めてだな。どうせ持ってんだろ?」
首の骨を鳴らしながら、東条は離れた位置に立つノエルに話しかける。
「見せた奴は全員殺してきた」
「怖ぇ~」
表情の変わらない彼女の目が、それを事実だと言ってのける。
人間も、モンスターも、彼女にとっては有象無象に過ぎない、と。
「準備は?」
「いつでも」
東条は全身を漆黒で武装し、戦闘形態に入る。
一瞬で身体強化を完了し、膝を曲げ前傾姿勢になった。
「そんじゃ、スタートッ」
今まで本気を見せ合ってこなかった二人が、遂にその牙をぶつけた。
弾丸の如く飛び出した東条は、とりあえずノエルに真っ向から突っ込む。
彼のcellありきの、脳死の突撃。先ずは敵の攻撃方法を炙り出す。
「ん」
「――っ」
初動無しに大地から突き出した棘を掌で受け止め、足場にして再度跳躍。
その一瞬で、今度は全方向から土棘が東条に迫った。
「しゃらくせぇ」
しかし全身から放った衝撃波で棘は砕け散り、何事も無く着地。
と同時に真下からものすごい勢いで石柱が生え、彼を空へ誘った。
「――おぉ、高ぇ」
グングンと離れていく地面に、一種のアトラクション的楽しさを覚える。
本来なら上空に打ち上げられるか、耐えたとしても上からの風圧で押さえつけられ身動きが取れなくなるほどの速度。
しかし東条に物理攻撃はほぼ無効。
石柱の直撃だろうと風圧だろうと、彼には痛くも痒くもない。
何処まで伸びるのか、と石柱の上でヤンキー座りをしていると、
「おっと」
下方から超速で槍が飛来。苦も無く掴んで止めた。
遥か下では、投擲のフォームを崩すノエルがしかめっ面をしている。
槍の飛来と同時に止まった石柱の全長は約十五m。加えて、ここまで伸びるのに一秒とかからなかった。
その速度と距離にドンピシャで合わせ、東条を射殺さんと槍を放ったのだ。
そんなノエルの魔力と動体視力、膂力は、正にモンスター級と言える。
「やっぱ普通じゃねぇな、あいつ……ん?」
彼女の底知れ無さに戦慄する東条だが、ふ、と、自分が持つ槍の形状の不可解さに気付く。
「……木製か?これ」
てっきり土魔法の類だと思っていたが、どうやら違ったらしい。
槍は数本の枝がギチギチに捻り合わされ作られた様な、違和感極まりない形をしていた。
「……これか」
彼女のcellの一端に触れ、新しい能力に心を躍らせた。
「出鱈目すぎ」
目の前で見せられたあまりに反則過ぎる力、流石に溜息が漏れてしまう。
しかし、とノエルは思う。
テントで彼の話を聞いた時、漆黒が使えるようになった後も、何度も死にかけたと言っていた。
あの時は、「いつか自分と模擬戦する時の為に内緒だ」とか言って能力の詳細は教えてくれなかったが、要するにあれを解除させる方法があるということだろう。
今まで彼と過ごしてきた経験から、あれが光や音、衝撃までも吸収することは分かっている。
見た感じ、顕現できる漆黒の量にも限界がある。
だとしたら、エネルギーの貯蓄量にも許容限界があって然るべきだろう。
どの程度の漆黒が、どの程度のエネルギーを溜められるのか分からない今、手探りで行くしかないのだが、少なくともそこいらのモンスター数十匹を殺せる程度の攻撃では、毛ほどの意味もない事が分かった。
正直、安心した。
……自分が本気を出しても、きっと彼は死なない。
ビックリさせてやろう。
そんな無邪気な想いで、彼女は己が力に手を伸ばした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる