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2章

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「カオナシさん今どれくらい稼げてるんですか?」

「んー?そーだな。両手に女性侍らせて、料亭に行ってラグジュアリーホテルに泊まれるくらいは稼げてるぜ?」

「えー!?めっちゃ稼いでるじゃん!」

「まぁ、それこそこいつのおかげなんだがな」

「ん」

 ドヤ顔をするノエルの髪をわしゃわしゃする。

 交渉も製作も、全て彼女がやっているのだ。今ある金は彼女が稼いだと言っても過言ではない。

「やっぱりノエルちゃん凄いね!」

「当然」

「よっ、才色兼備!」

「最強ロリ!」

「ロリじゃない」

 皆がやんややんやと彼女を持ち上げている最中、

「お楽しみ中失礼」

 東条の背中に嫌みったらしい声がかけられた。
 振り向けば、高年の男性と数人の大人が立っている。

「随分大きな声だったからね、注意しにきたよ」

「?あぁ、それはすみま「……なんだよおっさん。仲間集めて嫌がらせかよ」

 さっきまで優しかったギャルっぽい子の、苛立たし気な声に驚いて振り返る。

「……動画投稿者か何だか知らないが、他人の迷惑を考えた方がいいな」

 しかし当の高年は彼女の声を無視し、東条とノエルの二人を見下ろし続ける。

 彼の後ろにいる大人達も、「最近の若いのは」だの「気味が悪い」だの「はしたない」だの、こそこそと言いたい放題言っている。

 ムカつきはするが、迷惑になったのなら自分にも落ち度はある。

 別に静かに食う必要などないと思うし、注意と称すなら、なぜここより騒がしい男子学生の方に行かないのかなど、はたはた疑問は尽きないが、さっさと謝って済ましてしまおう。

 そう考えた東条を、無視されて怒りを露わにしたギャルっ子が遮った。

「ちッ、カオナシっち、このおっさん戦ってくれてる人に感謝もしない老害だから、無視していいよ」

(あぁ、そーゆう感じの……)

 ここまで大きなコロニーなんだ、そういうのがいるのは予想していた。

 彼女達の反応を見るに、今までも何度かやり合ってきたのだろう。だいぶ面倒なのに絡まれたもんだ。

「今は大人同士で話してるんだ、黙っててくれないか?」

「はっ、自分の事しか考えられない奴が大人なんて笑わせる。子宮からやり直せ」

(言うね~)

 立てられた中指に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる高年は、口喧嘩では勝てないと悟ったのか、彼女から目を逸らし再び東条を見下ろした。

「時間がもったいない。単刀直入に言う。我々を安全な場所まで送ってくれ」

 成程そうきたか。

「……ここは充分安全だと思うけど?」

「安全なもんか!俺達は特区から出たいんだっ、さっさとこんなところ出たいんだよ!」

 気持ちは分からないでもないが、それを自分達に頼むのはお門違いというものだ。

「無理だね。俺達もこう見えて、冒険するのに忙しいんだ」

「人命よりそんなものが大事だって言うのか!」




「……当然だろ」




「――っ」

「……はぁ……」

 東条は立ち上がり、高年を上から見下ろす。

「俺達は冒険に命を懸けてる。つまり冒険には俺達の命と同じ価値がある。それがあんたらの命と等価値なわけがないだろ」

 東条とノエルにとっては確認するまでもない、大前提の決定事項。

 しかしこんなことを、「お前らの命など興味もない」などと、堂々と、迷いなく答える彼という人間に、大人達だけでなく、今まで一緒に談笑していたJK達も言葉を詰まらせた。

「……わ、分かった。ならそれは諦める。代わりに食料を分けてくれないか?配ってるんだろ?」

 高年の焦ったような作り笑顔に、そろそろ本格的に面倒臭くなってきた。

「なんであんたが『代わり』を要求してんのか知らねぇが、それも無理だな。もう全部ここのリーダーに渡したし」

「くっ……」

 俯く高年を見て、早くどっか行ってくれないかなー、などと考えていると、新しく此方に向かって来る一行が目に入った。
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