こんなスローライフは想定外!~いつの間にか、親友を虜にしてしまっていたようで!?~

うみくも

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Step2 バグった距離感は、矯正不可のようで……

兄の助言

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「―――と、いうわけで。それ以降、ノクスは里帰りの度にオレの前で発狂するのがお約束になってだな。それが八年も続くんだから、本気でお前にぞっこんなんだろうよ。」


「………」


 アイザックの話を聞き終えたフィレオトールは、顔を赤くして縮こまるしかなかった。


 まさか、自分が知らないところでノクスがそんな大変なことになっていたなんて。
 自分の前では至って普通だったから、全然気付かなかった。


「あの……僕の行動って、ノクスがおかしくなっちゃうくらい変だった…?」


 思いきって訊ねると、アイザックはまた難しそうに眉を寄せた。


「うーん…。オレは気を許した奴には距離が近いなって思うくらいだけど、ノクスにはたまらなかったんじゃないか?」


「ええぇ…?」


「そうだな…。踏み込むようで悪いけど、ノクスに告白された時はドキドキしなかったか?」


「すっごくしたよ! 心臓が止まるかと思った!!」


「ノクスの場合、そういう状況に陥るのが日常茶飯事だったわけだ。どうだ? きつくないか?」


「ひえ…っ」


 自分のことに置き換えられた瞬間、ノクスのしんどさが身に染みるようだった。


「そもそも、ノクスと出会ってからのお前は、行動基準がかなりノクスにかたよってんだぞ。自覚してるか?」


「……ん!?」


 まるで自覚がないと言わんばかりに身を強張らせるフィレオトール。
 そんな彼の前で、アイザックはすっと指を立てる。


「まず一つ。お前、ノクスに呼ばれると散歩に行く子犬ばりの速さで駆け寄っていくよな?」


「そ、そうだっけ…?」


「二つ。ノクスのことと他のことが天秤てんびんに乗った時、絶対にノクスを優先しないか? キシムにいた頃もそうなら、ヴァリアに行った後もそうだったって聞いてるけど?」


「そ、それは…。キシムでノクスたちを拾ったのは僕だし、お祖父様とノクスが結託した結果とはいえ、居心地の悪いヴァリアについてきてもらっちゃったし、当然の配慮というか……」


「まあ、それも分かるけどな。じゃあ、こう考えてみたらどうだ?」


 そう告げた直後、やけに真剣な表情になるアイザック。


「今さら、ノクスがいない毎日なんて考えられるか?」
「あ、無理だ!!」


 そこは盲点だった、と。
 心底驚いたフィレオトールの表情は、そう物語っているようだった。


「なあ、フィルよ。これはいい機会なんじゃないか?」


 フィレオトールに気付きをうながすことに成功したアイザックは、そこで表情を穏やかにする。


「ここからは、兄の助言として聞けよ。今までは常に一緒にいることが普通だったけどさ、それが永遠に続くかっていうと違うんだぜ? 魔王討伐は終わった。オレとセレンが結婚してお前たちと離れたように、ノクスだって自分の生き方を見つけてお前から離れる可能性だってあるんだ。」


「う…っ」


「今少しでも〝嫌だ〟って思ったんなら、ノクスの気持ちと自分の気持ちを整理してみろ。お前は、他人からの好意だけじゃなくて自分の好意にもにぶいみたいだからさ。」


 言葉どおり、兄のような包容力をかもしてアイザックは語る。


「オレは、対人恐怖症で人付き合いがまともにできなかったお前を近くで見てきた。だから、そんな過去を持つお前がノクスにあっさりと気を許したことには、それだけの理由があったと思うんだよ。」


「理由…?」


「そう。その理由をひもいて、そういう人がノクスの他にいないって思えたなら……ノクスの気持ちを受け入れてもいいんじゃないか? 案外、それを自覚したらガッチリはまってラブラブになるかもな?」


「ううぅ……」


「そんな追い詰められたような顔をするなって。オレが言ったのは、単なる一つの選択肢に過ぎない。ノクスだって、答えを強要する気はないって言ってたんだろ? フィルはフィルのやり方で、これからのノクスとの向き合い方を見つけたらいいんだよ。どんな答えを出そうとも、オレはフィルの味方だ。」


「………」


 アイザックの言葉に、何を返したらいいのか分からない。


 理性も感情もまだ混乱のなかで、アドバイスをもらったからといってすぐに答えは見つからないのだ。


 それでも、アイザックが自分の味方であり続けてくれると分かったことは嬉しくて……


「……ありがとう。」


 今は、こう告げる以外にできることがなかった。

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