こんなスローライフは想定外!~いつの間にか、親友を虜にしてしまっていたようで!?~

うみくも

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Step2 バグった距離感は、矯正不可のようで……

自業自得の展開

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 なんだろう…?


 ものすごく温かい。
 布団とは違うぬくもりが全身を包んでいる。


 こんな感覚で眠るなんて、いつぶりのことだろう。
 なんだか、とても気持ちが安らぐ。


 すごく幸せな夢だな……
 どうせ覚めてしまうなら、もう少しだけ……


 そんな気持ちから、今感じているぬくもりにすり寄る。
 すると―――




「―――はぁ……」




 そんな溜め息が耳朶じだを叩いた。
 それで、意識が微睡まどろみから浮上していく。


「ん…」


 目を開くと、視界は薄い闇に覆われていた。


 夢だと思っていたぬくもりは確かに自分を包んでいて、自分の手はそのぬくもりにきちんと触れている。


 それがじろぎする気配に顔を上げると、こちらを見つめるすみれ色の双眸が。


「あれ…?」


 思わず手を突っぱねて、そのぬくもりと距離を取る。


 なんで自分はベッドの中にいるんだろう。
 なんで目の前にノクスがいるの?
 なんで自分は、ノクスに腕枕なんかされてるわけ?


 頭の中が〝なんで?〟の大渋滞を起こす。


 きょとんとして目をまんまるにするフィレオトールの肩に、ノクスがゆっくりと手を置く。




「フィル……―――覚悟はできてるんだろうな?」




 こちらを見るノクスの目は、完全にわっていた。


「か、覚悟…?」


 冷や汗を流して、肩を震わせるフィレオトール。


 何が起こったのかさっぱり分からないけれど、とりあえず今のこの状況が非常によろしくないことだけは分かる。


「お前なぁ……起きたらくっついて寝てるってなんなの? ぜんか、こら?」
「~~~っ!!」


 言われてようやく思い出す。
 眠る前に、自分がどんな状況にいたか。


(ばれた―――――っ!!)


 何をしてるの、ポンコツな自分!


 ノクスが起きる前に起きなきゃと思っていたのに、安心しきって普通に爆睡していたじゃないか。


「あわわわわ…っ」


 顔を真っ赤にして唇を戦慄わななかせるフィレオトールの頬を、ノクスがつねる。


「おれが寝てる間ならセーフって思ったか? やるなとは言わんが、せめてばれないようにやれよな。」


「は…はい……おっしゃるとおりです……」


「お前まで寝てたら、意味なくないか?」


「返す言葉もありません……」


「じゃあ、おれがこうなってることに文句はないな?」


「はい! 全部、僕が悪いです!!」


 フィレオトールは、ぎゅっと目を閉じて身を強張らせた。


 こればかりは弁解の余地なしだ。


 ノクスにあんなことを言われていたのに、それでも近寄った自分が圧倒的に悪いんだもの。


 この際、キスの一つや二つくらい甘んじて受け入れろ。


 自分が腹をくくったことを察したのか、頭の下にあったノクスの腕が動いた。


 大きな手が後頭部をしっかりと押さえると同時に腰をぐっと引き寄せられ、先ほど離れたはずの距離がゼロになる。


「ん…っ」


 覚悟したとはいえ、唇が触れ合った瞬間に体がびくりと痙攣けいれんしてしまった。


 思わず身を引きかけたが、それを見越した上での手の配置だったのか、後頭部と腰に回されたノクスの手がそれを許さない。


 そして、ガチガチになって硬直する唇を、ノクスがぺろりと舐めてくる。


「わっ…」


 びっくりして口を開けば、その隙をのがすことなく、ノクスの舌が口腔内に忍び込んできた。


「んう…っ」


 戸惑いは、すぐに深いキスにさらわれてしまう。


 あんなにすごみのいた雰囲気をかもしていたのに反して、そのキスはとても優しかった。


 自分の戸惑いを溶かすようにゆっくりと舌を絡め、何かを探るように上顎うわあごや歯列をなぞられる。


「ん……ふ……」


 なんだろう。
 この変な気分は。


 強張っていたはずの体から、力が抜けていく。


 舌を誘い出されて吸われると、それと一緒に酸素も持っていかれてしまうようで、視界がおぼろげになって息が上がってしまう。


 甘いしびれが全身を走って、まともな思考を押し流していってしまうような。


 どうしよう……
 こんな感覚、知らない―――


「フィル?」
「………へ?」


 ぼんやりした世界に響くノクスの声。


 いつの間にか、長いキスから解放されていたようだ。
 目の前には、こちらを気遣わしげに見つめるノクスの顔があった。


「大丈夫か?」
「あ、うん……」


 意識がすでに危ういけれど、体は全く問題ない。


「そうじゃなくて。」


 ノクスは、緩やかに首を横に振る。


「おれとこういうことをして平気かって訊いてんの。」
「あ…」


 それで、意識が少しえる。
 改めてノクスと目を合わせると、途端に熱が顔に集まってくる気がした。


 やってしまった。


 ノクスの気持ちに応えられるかどうかも分からないのに、彼からのキスを受け入れてしまった。


 ちょっと前まで、こんな空気じゃなかったのに。


 これまで普通に直視できていたはずの親友の顔を見るのが、唐突に恥ずかしくなってくる。


 でも……


「あの……その……」


 フィレオトールは、視線をさまよわせながらもごもごと口ごもる。


「これくらいなら……平気、かも……」


 ノクスに問われたからとはいえ、自分は何を言っているのだろう。


 これくらいなんて言葉では簡単に言ったけど、これまでの関係からはかなり踏み込んでますよ?


 だけど、意外とすんなり受け入れられたのは事実だし……


 気持ちの整理がなかなかつかないフィレオトールは、自分の唇に指をわせて赤くなっている。


 そして、それを見せられたノクスが平常心を保てるわけがないのであった。


「あのなぁ……」


 ノクスは上半身を少し起こすと、フィレオトールの体をころりと仰向けに転がした。


「え…?」


 パチパチとまぶたを叩くフィレオトールの上に覆い被さり、ノクスはフィレオトールのカーディガンに指をかける。




「このくらいじゃ終わらないから、わざわざ忠告したんだけど?」




 言葉の信憑性しんぴょうせいを示すように、ノクスの指がカーディガンのボタンを一つ外した。

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