こんなスローライフは想定外!~いつの間にか、親友を虜にしてしまっていたようで!?~

うみくも

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Step2 バグった距離感は、矯正不可のようで……

このまま流されろ

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「………っ!?」


 ぼんっと。
 その瞬間、フィレオトールの顔が沸騰する。


「ちょっ……ちょっと待って! さすがに、そこまでは覚悟してなかった!!」
「キスは平気だったんだろ?」


「そっ……それはそうだけど…っ」
「ならもう、このまま流されろ。」


 言うや否や、ノクスが首筋に顔をうずめてきた。


(わ―――っ!?)


 理性と羞恥心しゅうちしんが一緒になって大絶叫を奏でる。


「ノクス! お願いだから待って!」
「こっちはもう、かなり待たされてんだよ。」
「そんなこと言われても……んっ……」


 フィレオトールは、びくりと体を震わせる。


 ノクスが首筋に舌をわせてきたからだ。


 それと同時に、彼の指がカーディガンとシャツのボタンをどんどん外していってしまう。


「あ……う……う…っ」


 本気でやめる気がないんだと悟り、フィレオトールは思わずノクスから顔をらした。


(どうしよう……どうしよう……)


 ここ数日で何度目のパニックだろうか。
 十中八九、もう逃げられない。


「ふぇ…っ」


 無意識のうちに、涙が込み上げてきてしまった。


 脳裏によみがえるのは、ほとんどかすんだはずの遠い過去。
 服にかかる大きな指が、あの日の恐怖を強く呼び起こしてしまう。


「―――フィル。」


 思わず両腕で顔を隠した瞬間、優しげな声が世界を揺らした。


「過去じゃなくて、今を見てくれ。」


 怯えさせないように、そっと腕に触れる体温。
 それが、閉ざしたはずの視界を明るくする。


「フィルの前にいるのは誰だ?」
「……ノクス。」


「そうだ。おれが怖いか?」
「……怖くない。」


「だろ? じゃあ、おれを信じろ。怖い記憶なんか、全部上書きしてやる。」
「……あっ」


 再開された少し強引な愛撫を拒む余裕なんてなかった。


 先ほどのキスの余韻もあるのだろうか。
 ノクスの唇や舌が首筋をなでる度、体が否応なしに反応して跳ねてしまう。


 とっさにノクスを遠ざけようとした手も、あっという間に抵抗する力を失ってしまった。


 そして、体だけではなく、どうしようと焦る理性でさえも、この妙な心地にさらわれそうになる。


 このままだと、ノクスが言ったように本当に流されることになってしまう。


 こんな中途半端な気持ちでノクスに身を委ねてしまったら、それは彼の気持ちに失礼なんじゃないか。


 まだかろうじて残っている理性が、そんなことを訴えながらどうにかして逃げろと警鐘を鳴らしている。


 反応する体と焦る理性に挟まれて狼狽うろたえていると、たまたまノクスの息がふっと耳にかかった。


 それはタイミングの悪戯いたずらだったのか、それともこうなるのが必然だったのか……


「んんっ…」


 耳に生温かい息が触れた瞬間、今まで以上に体が大きく震えた。


(な……何、今の声―――っ!?)


 フィレオトールは、慌てて自分の口を両手で塞ぐ。


 果たして、今のは本当に自分の口から零れた声だったのだろうか。


 知らない。
 あんな、熱に浮かされたような甘ったるい声なんて……


「え…? え…?」


 混乱したフィレオトールは、おろおろするしかない。
 そんな彼に対して……


「ふーん……なるほどな。」


 ノクスはいっそ冷静だった。
 目を細めたノクスはフィレオトールの耳元に唇を寄せ、そっと耳朶じだを舐める。


「ふあっ……あっ…!」


 その刺激に、フィレオトールの体が過敏なほど大きく跳ねた。


「やっ……ノクス、だめ…っ」


 思わず逃げようと身をよじらせるも、ノクスは器用にその抵抗をかいくぐって耳を攻め立ててくる。


「あ……う……ああっ……」


 だめ。
 頭が溶けそう。


 耳に刺激が与えられる度、腰から後頭部にかけてを強烈な電流が駆け抜けていって、頭が真っ白になる。


 ノクスの気持ちに失礼なんじゃないかという不安も。
 逃げなきゃという焦りも。
 脳内で鳴り響いていた警鐘も。


 全部全部、この電流に掻き消されていく―――……


「お前、こんな分かりやすいところに弱点あったのか。」
「あ……あああ…っ」


 笑みを含んだ声でささやかれだだけ。
 それだけで、体の末端までがしびれてしまうようだった。


 その刺激をやり過ごすことに精一杯で、他のことなんか意識できない。
 だから、気付かなかった。


 いつの間にか、ノクスがカーディガンとシャツを綺麗に取り去っていたことになんて……


「んんっ!」


 別の場所から襲ってきた衝撃のようなしびれに、また体が大袈裟なほど反応してしまう。


 ノクスの手が素肌を滑って、胸の尖りに触れたからだった。


「あう……やだ……やだぁ…っ」


 フィレオトールが必死に頭を振るが、ノクスはそんなことお構いなしに、フィレオトールの白い肌へ唇と指をわせていった。


(だめ……なんか、ふわふわする……)


 貴族の教養として、ねやの授業なら散々受けた。


 だから、こういう行為が快感を生むものだということは知っているけれど、机上の知識だけじゃ理解には到底及ばないんだと思い知る。


 だって……こんな風に誰かに強制的に体がたかぶらされていく津波のような快楽なんて、経験しないと分かるわけがないじゃん。


 鈍麻していく意識の中、体だけが狂ったように熱い。


 未知の感覚に全然ついていけないのに、もうそれに焦ることができるような理性もない。




 そんな理性を簡単に溶かしてしまうほど、ノクスの手つきが優しくて……



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