こんなスローライフは想定外!~いつの間にか、親友を虜にしてしまっていたようで!?~

うみくも

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Step3 心臓がもたない!止まらない押し一手!!

似ている光景

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「んーっ♪ 今日もいい天気ー♪」


 ある日の朝、玄関から外に出たフィレオトールは気持ちよさげに伸びをする。


 畑の世話から始まって、絵を描いたり彫刻をしたりと気ままに過ごす日々が始まって早九ヶ月。


 こんな毎日も悪くないと思いつつ、ちょっと働き始めたいなとも思ってくる頃だった。


「どうしようかなー? また商会を立ち上げてもいいし、ノクスみたいに冒険者ギルドで依頼をこなしてもいいし、野菜が余ってきたからレストランもありかなー?」


「もう仕事のことを考えてるのー?」
「やーい、社畜ー♪」


「言わないで。僕も我に返ってはむなしくなってるんだから。」


 即座にからかってくる精霊たちに言い返しつつも、内心は複雑だ。


 これが染み着いた習性というやつか。


 別に今の生活に不満があるというわけではないのだけど、悠々自適に趣味を楽しめたのも最初の数ヶ月。


 体はともかく頭が暇すぎて、ちょっと物足りなくなってきているのが現状である。


「さてと。今日獲った野菜は、少し川で冷やしてから食べようっと。」


 季節は真冬。


 キシムはすっかり雪に包まれているが、人外の力と瘴気が渦巻く魔領はエリアによって気候が様々だ。


 この幻惑の花園周辺は、気温こそ多少上下するものの基本的に過ごしやすい気候を保っているのが特徴。


 我ながら、とてもいい穴場をすみにしたと思う。


「……あ。」


 川に野菜を盛ったザルを沈めて家に戻ろうとして、足がピタリと止まる。
 川に面した木の下で、ノクスが目を閉じて風を浴びていたのだ。


「ノクス。過ごしやすいとはいえ寒いには寒いんだから、そんなところにいたら風邪引くよー?」


 ノクスの前で少し身を屈めて声をかける。


 すると、微かに震えたまぶたの向こうから現れた澄んだすみれ色の瞳が、まっすぐにこちらを映した。


「……ふふ。この構図、なんだか初めて会った時みたいだね。」


 ノクスと出会った十二年前。
 あの時もこんな風に晴れていて、ノクスは木の下でじっとしていたっけ。


「……ああ。言われてみれば、確かに。まあ、足下に師匠はいないけど。」


「あれにはびっくりしたよー。行き倒れかと思って慌ててお祖父様を呼んだのに、実は眠くなったから寝てただけだったなんてさ。」


「ぶっちゃけ、エルフの感覚は未だによく分からん。『君が未来の勇者だね!? さあ、私と一緒に仲間集めと修行の旅に出よう!』なんて出会い頭に言われた時は、新手の誘拐かと思ったわ。」


「そう言う割には、ちゃんと師匠やお父さんとして信頼してたように見えたけどね。」


 魔王の復活と勇者の誕生。


 それが明るみになったのは、エルフの里を治める巫女みこに神託が下ったことがきっかけだったそうだ。


 いずれは聖剣を手にするとともに莫大な力を得る勇者も、今は吹けば消えてしまう幼き命に過ぎない。


 エルフたちは秘密裏に勇者たる運命を宿した子供を捜し、孤児院で過ごしていたノクスを彼の師匠が見つけたとのこと。


 それからエルフの里で自身を守れる程度の力を身につけたノクスは、師匠と一緒に勇者の使徒となる仲間を捜しながら、さらなる強さを得る修行に明け暮れていたそうだ。


「……やっぱ、お前はいつ見てもすげぇ愛されようだな。」


 じっとこちらを見つめていたノクスが、唐突にそんなことを呟く。


 彼の視線が顔から微妙に外れていたのでその先を追うと、先ほどまでおしゃべりしていた精霊たちがご機嫌で宙を舞っていた。


「……ああ! もしかして、初めて会った時にやけに驚いた顔をしてたのって、この子たちがいたから?」


「いたというか、とんでもなく群がってたんだよ。もはや、お前に後光が差しているように見えるくらいで…。だから、起きた師匠もお前を見て『あら、天使が出迎えてくれるなんて、私もついに寿命かなー?』って馬鹿なことを言ったんだ。」


「だって、あの時のフィルは本当に傷だらけだったんだもん。一秒でも放っておけなかったの。」


「だからね、みんなで守ってあげようって、ずーっと傍にいたんだー。」


「ふふふ、そっか。僕はいつも助けられてばかりだね。本当にありがとう。」


「フィル、大好きー♪」


「見た目だけじゃなくて、心も魂も綺麗だから好きー♪」


 精霊たちに飛びつかれて、明るい声で笑うフィレオトール。
 そんな彼を見つめるノクスは、いささか複雑そうな表情をしていた。
   
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