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Step3 心臓がもたない!止まらない押し一手!!
自分だけの、特別な笑顔
しおりを挟む(初めて会った時の話から、妙なことを思い出しちまったな……)
川から野菜を引き上げるフィレオトールを見つめながら、ふいにそんなことを思った。
あの後に師匠が何を話したのかは知らないが、自分たちはジェアンの計らいで客人として子爵邸に身を置かせてもらえることになった。
そこから始まった他愛もない日々の記憶は、ヴァリアに行ってからの忙しなさに流されて、これまでは思い出す暇もなかった。
それが今になってこんなにも鮮やかによみがえってくるのは、この景色がキシムのものと重なるからなのだろうか。
それとも……自分たちの関係が、一歩踏み込んだものに変わったからなのだろうか。
(あの頃に比べたら、おれ以外にもよく笑うようになったもんだよな。)
田舎とはいえ、貴族は貴族。
こなすべき教育が多かったフィレオトールは、外に出て他人と触れ合うという機会がぐんと少なかった。
騎士団長の息子であるアイザックとは交流する機会も多かったようだが、それも毎日というわけじゃない。
そんなフィレオトールにとって、一日に何度も顔を合わせる同年代の相手は自分が初めてだった。
師匠との訓練に目を輝かせて飛び込んできたかと思えば、懐かれてからは当然のように授業にも同席させられ……気付けば、四六時中一緒にいるようになっていた。
さらにはフィレオトールが使徒になったこともあり、自分も彼も共に生きていくことが普通になっていた節があったと思う。
そのせいなのかは分からないけれど、対人恐怖症を克服していくフィレオトールが周囲に笑顔を見せるようになっていくにつれて、なんだか面白くないという気持ちが大きくなっていった。
そして、フィレオトールが自分に見せる笑顔と他に見せる笑顔が違うと気付いてからは、自分は特別なんだという優越感に浸りたくて、彼を可能な限り甘やかすようになったものだ。
(でも……今はまた、この笑顔はおれだけのもんだよな。)
アイザックに大丈夫かと言われてかなりビビっていたフィレオトールとの二人暮らしだったが、いざこの暮らしが始まってみると案外悪くない。
一番のメリットは、どんなフィレオトールの姿も独り占めできること。
魔領なだけあって、自分が不在の時にヴァリアの連中が彼を連れ戻すこともない。
定期的に悶絶して死にそうになることはきついけれど、今後それを我慢する必要はないと思うのだ。
告白の答えは保留状態だけど、フィレオトールは自分の告白に顔を赤くして動揺した。
何度か関係を持った今だって、変わらずに無邪気な雰囲気で慕ってくれている。
掴みも経過もバッチリなのだから、あとは押し負かして落とすだけだろう?
だから……―――
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