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Step3 心臓がもたない!止まらない押し一手!!
やっぱりお前が悪い
しおりを挟む「ノクス……本気できっつい!!」
ベッドの上でうつ伏せになって枕を抱き締め、フィレオトールはたまらずそう叫んだ。
さすがに、もう言っていいよね!?
これまでの鬼修行より、よっぽどきついんですけど!?
「悪い……」
無茶をさせた自覚はあるのか、フィレオトールの体に手を回すノクスは気まずげに視線を明後日の方向へやった。
「正直、フィルがここまでツボだとは思わなくて……」
「何それ、どういう意味?」
「だってよぉ……」
ノクスはどこか嘆かわしげに額に手をやる。
「お前、マジで可愛いんだもん。告白する前からそれは変わらないけど、告白してからはさらにっていうか……」
「う…っ」
「今まで気を許した相手からアプローチをかけられたことがなかったのは分かるけど、ちょっと迫っただけで真っ赤になって震え出すとか、完全に小動物じゃねぇか。普段の鉄壁ガードが消えると、免疫ゼロなのが丸分かり。」
「ううぅ…っ」
「その上、限界突破で大泣きだもんな? マジで可愛い。本当に最高。あれをお預けとか絶対に無理。」
「もうやめてぇー…っ」
訊くんじゃなかった。
訊くんじゃなかった!
そんな懇切丁寧にあれもこれもを思い返さなくていいのに!!
体がしんどい上に精神的にも追い打ちをかけられ、フィレオトールは撃沈するしかない。
「僕に可愛いって言うのは、ノクスくらいだよ……」
「そうか?」
「そうだよ。綺麗とは腐るほど言われてきたけど、可愛いとは……」
「んんー…。そうは言っても、おれはお前のことを可愛いとしか思ったことがなくてだな……」
「え…? そうなの?」
これは意外な事実だ。
思わず顔を上げてノクスを見ると、彼は至って真面目な表情で虚空に目をやっていた。
「正直、容姿の綺麗さはエルフで見慣れてて、お前を見ても普通としか思わなかったんだよな。それに、出会った時のお前ってじいちゃん仕込みの口の悪さと暴走癖が今以上に際立ってたし、ちょっと破滅思考にはまってたし、そっちの方が気になったっていうか……」
「あ、あはは……当時は色々とご迷惑を……」
「別に、迷惑をかけられたとは思ってないぞ? あれがあったからお前を放っておけなくなったんだし、常に一緒にいたおかげで可愛いって思い始めた結果、今はべったり惚れ込んでるわけだし。」
「う……うーん……」
ノクスの言葉を途中から戸惑いがちに聞いていたフィレオトールは、再び枕に顔を埋める。
なんてこったい。
話を逸らすことに成功したと思ったのに、結局自分が恥ずかしがる展開になっているのはどうしてなの?
多分ノクスも今は無自覚だったと思うけど、無自覚で口説かれるのも心臓によろしくない。
(でも……確かに、ノクスって出会った時から僕の容姿には触れたことがなかったな……)
今は大の仲良しになったアイザックやセレンだって、出会ってまず言及したのは自分の容姿に関すること。
成長してから第一印象の大半は見た目だから仕方ない割り切れたけど、幼い時はそれが不愉快でまたらなくて、容姿に言及した人には明確な一線を引いていたっけ。
(ああ…。だから、僕はノクスにすぐ気を許したのか……)
ノクスとしては、自分の容姿が特別目を引くものじゃなかっただけで、そう接しようと意識したわけじゃない。
でも、理由がどうであれ、最初から中身だけを見てくれた他人はノクスが初めてで、自分はそんな人に出会えたことが本当に嬉しかったんだと思う。
(待って。この流れは、ノクスに落ちるルートに引きずり込まれてないかなぁ…っ)
なんだか、自分の気持ちや行動原理を一つ自覚するごとに分からなくなってきた。
対人恐怖症時代にすんなりと受け入れることができて、いつしか隣にいることが普通だと思うようになっちゃって。
その上、アイザックが言ったようにずっとノクス最優先で行動していたんだとしたら、自分の方が先にノクスを大好きになっていた可能性だってあるんじゃない?
その結果、無自覚のうちにノクスを落としちゃってたんだとしたら、こうやって迫られているのは単なる自業自得では?
考えるほどに恥ずかしさが込み上げてきてしまい、枕から顔を上げるに上げられなくなるフィレオトール。
その様子を見て何を思ったのか、ノクスはバツが悪そうに頬を掻いた。
「とはいえ、毎度のように無茶をさせちゃいかんよな。」
「………っ!」
珍しく反省モードらしいノクスの声に、フィレオトールはピクリと震える。
これはちょうどいい。
不満をぶつけるなら今だ。
そう思ったフィレオトールは、大袈裟な態度で肩を落とした。
「本当にそれ。別に、今さらこういうことをしないでとは言わないけどさぁ…。毎回こうだと、身がもたないよ。」
「だから、ごめんって……」
「むー…」
さすがにつらいです。
そんな意思を示すように、フィレオトールは枕に顔を突っ伏したまま無言になる。
すると、ノクスがにわかに慌て出した。
「ほんとに悪かったよ! 今度から、少しはセーブをかけるって。」
「本当?」
「ほんとだって!」
よし。
ちゃんと言質はもらった。
別に本気で怒っていたわけではないので、フィレオトールは枕から顔を上げてノクスを見つめた。
「もう~……約束だからね?」
ほんのりと頬を染めて、唇を尖らせるフィレオトール。
ごく自然な流れで繰り出された、上目遣いと膨れっ面のコンボ。
それを見た瞬間、ノクスの瞳が鋭い光を宿した。
「―――前言撤回。やっぱりお前が悪いわ。んな約束できるか。」
ノクスは真顔で宣言。
それに、フィレオトールはきょとんと目をしばたたかせて……
「舌の根も乾かぬうちにーっ!?」
小動物のように飛び上がった。
「お前こそ、それマジで素でやってんのか? 三回戦目、いきたいか?」
「~~~っ」
まさかの問いかけに、フィレオトールはぶんぶんと全力で首を横に振る。
無理無理無理無理!
絶対に無理!!
「どうしてそうなるの!? 僕が悪いって言うなら、何をやめればいいのか具体的に教えてくれる!?」
「うーん、そうだな……」
問われたノクスは、フィレオトールをまじまじと見つめる。
「そうやっておれを見るな。ついでにしゃべるな。あー……でも、だからって下手に周りをうろちょろされてもなぁ……」
「僕、何もできなくない!?」
「ああ。だから、お前はそこにいるだけでアウトなんだって。」
「そんなぁっ!!」
フィレオトールは顔を覆って縮こまる。
フィレオトールがノクスの欲情を煽らない行動を取れるようになる日は、おそらく来ない。
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