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Step6 事件発生!思いつきの船旅で大ピンチ!?
まさかのおねだり!
しおりを挟むあの免疫ゼロで超絶恥ずかしがり屋なフィレオトールが、人目も憚らずに自分を慰めているなんて……
天変地異レベルの衝撃的な光景に、ノクスの理性は完全にパンクしていた。
いやもちろん、これがフィレオトールの意志でないことは分かりきっているのだ。
こんなに苦しんでいるんだから、早く楽にしてやれよ。
あまりにも可哀想だろうが。
そう思うのに、体が石のように動かない。
見ちゃいけないと頭が叱咤するも、目はめっちゃフィレオトールをガン見。
ごめん!
本当にごめん!
でも許してくれ。
おれも、こんな状況は初めてなんだ!!
見てはいけないものを見てしまった罪悪感が、フリーズした脳内で言い訳じみた絶叫をあげる。
これまで、女性に言い寄られた経験は数知れず。
中には超大胆な色仕掛けで迫ってくる奴もいたし、フィレオトールと一緒にバカ皇太子のお楽しみ現場に出くわしたこともある。
しかしながら、それらを見たところで精神は一ミリも揺らがなかった。
騎士団や冒険者ギルドでそういう話題になっても無表情でスルーしていたので、周囲に鋼の精神かと言われたことも。
だから、自分でも情事絡みの耐性は高いと思っていたのに……相手がフィレオトールだというだけで、こうも免疫が変わるのか。
正直、焦りやら興奮やらがない交ぜになったような混乱で硬直している今の自分に、他でもない自分自身が一番狼狽えている。
(……もうちょっと見ていたい。)
そんな気持ちが脳裏をかすめて、そこでハッと我に返る。
(馬鹿ーっ!!)
誘惑に負けそうになった心を、なけなしの理性で全力をもって殴り飛ばす。
大変貴重なシーンは、もう十分に目に焼きつけただろ。
いい加減にしろ!
これ以上の放置は、マジでフィルに嫌われるやつだぞ!?
「えっと……フィル…?」
ひとまず声をかけてみたが、この後どうすればいいのだろう。
今下手に触れると、フィレオトールにとっては地獄なはず。
ここはフィレオトールの頼みどおり、聖魔法で薬を抜いた後、そのまま寝かせてやった方がいいか。
―――だめだ。
混乱しまくった今の頭では、全然魔法に集中できない。
結果として、おろおろとするだけのノクス。
そんなノクスをぼうっと見つめていたフィレオトールは、ふとした拍子にキッと目元に力を込めた。
「―――っ!?」
突然ネクタイを強く引かれ、ノクスはその勢いに負けてバランスを崩す。
されるがままのノクスを引き寄せたフィレオトールは、強引にその唇を塞いだ。
「!?」
目を白黒とさせるノクスに構わず、フィレオトールは動かないその舌に自分のそれを絡める。
「ノクスの馬鹿ぁ……」
唇を離して低く呟いたフィレオトールは、次の瞬間、癇癪を起したかのようにノクスのネクタイを何度も揺さぶった。
「フィル…っ。絞まる! 首が絞まる!」
「何ぼけっと固まってんのさ! 早く助けてよ! こっちは死ぬほど苦しいんだからね!?」
「わわわ、悪い! テンパって魔法が使えなくて…っ」
「もう! 魔法が使えないなら、いっそのこと早くやってよ! お願いだから、さっさとキスして! 触って!」
涙声で必死に訴えるフィレオトール。
それは、苦しさから逃れたい一心で放たれた切羽詰まった口調ではあったのだが……
(まさかのおねだり!)
ノクスには効果抜群だった。
ちょっと待ってくれ。
可愛すぎるんだが!?
予想外の美味しい展開に、混乱していた頭が今度は急速で沸騰する。
今のって、本当に現実か?
しばらく感動に浸っていてもいいだろうか。
これは脳内リピート不可避だ。
片手で口元を覆い、ノクスが震えていると……
「笑ってる場合じゃない!!」
怒鳴ったフィレオトールが、急かすように再びネクタイを引っ張ってきた。
「ううぅ…っ」
目が合うと、フィレオトールは濡れた瞳でこちらを睨んでくる。
ああもう、こんなの反則だ。
怒った顔ですら、こんなにも可愛いだなんて。
先ほどから滅多にお目にかかれない姿を拝んでばかりで、危うい理性が弾け飛ぶ寸前。
そして、胸からあふれてくるのは尽きない愛おしさで―――
「ごめんって。」
柔らかく微笑んだノクスは、可愛いおねだりに応えて優しく唇を重ねた。
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