こんなスローライフは想定外!~いつの間にか、親友を虜にしてしまっていたようで!?~

うみくも

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Step7 旅行なの?仕事なの?新天地は波乱続き!

ギルドマスターとの対面

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「日頃から、オーナーに本気で魔法を使わせたらおっかないと聞いていましたが……あれがゼク様の冗談じゃなかったんだって、身にみて理解しました。」


 全ての用事を終えたフィレオトールたちが雪原に帰還すると、レアルが開口一番にそう言った。


 話を聞くに、ノクスとゼクが大仰におどすので、他の従業員たちは最初から林には入らず、念視が得意な一人が能力を使って偵察するにとどめていたという。


『だめ。あれは死ぬ。レベルがおかしい。』


 ノクスやゼクがメインで暴れた序盤の戦闘の時点で顔色を青くしていた彼だったが、フィレオトールが雪電せつでんを発動させた瞬間、半泣きになりながら首を大きく横に振りまくったらしい。


 そんな彼の記憶をテレパシーで共有された皆も、想像を絶する戦闘映像に震え上がったそうな。


 結局、ノクスが聖剣で吹き溜まりを浄化した際の光を確認し、フィレオトールの魔法が解除されたことを確信してから魔獣の運び出しを始めたという。


 別に隠していたわけじゃなくて、可愛い君たちを相手にあのレベルの魔法を使う必要なんてなかっただけだもん。


 フィレオトールは唇を尖らせてそう述べたが、自分が彼のもとで道を踏み外せばこうなるという見本を見たばかりだ。


 これはとてつもなく頼りになる人を味方につけたのだと喜ぶべきか、彼を怒らせたら恐ろしい制裁が待っていると胸に刻んで気を引き締めるべきか。


 カラカラと笑うフィレオトールに、従業員たちは曖昧あいまいな愛想笑いでその場をごまかすしかなかった。


 特に、フィレオトールが魔王を倒したパーティーの一員であることを知っている魔族の皆は、より一層の複雑さを噛み締めたという。


 そんなこんなで怯える従業員たちのフォローもそこそこに、フィレオトール、ノクス、ゼク、レアルの四人は雪原に一番近い冒険者ギルドへ。


 もちろん、依頼達成の報告をしに行くためだ。


「はじめまして。ギルドマスターのジオンド・ベンダと申します。ゼクからよく話を聞いていたので、お会いできる日を楽しみにしてたんですよ。」


 受付から最速で通された応接室に現れたのは、三十代後半くらいに見える眼鏡をかけた細身の男性。


 実力主義の冒険者ギルドでマスターを務めているくらいだから、ただの優男というわけではないのだろう。


 というか……


「なんか、随分と仲がいいんだね。」
「ああ。話してみると、結構気が合ってな。最近は週一で飲んでる。」
「うん。とりあえず、ものすごくお酒に強い人だってことは分かった。」


 馬鹿みたいな大酒飲みであるゼクと週一で飲み交わせるとは恐れ入った。
 その肝臓の強さは、どこで鍛えられたものなのだろう。


「いきなり脱線して申し訳ないです。こちらこそはじめまして。フィリオル・リリシアと申します。」


「ノクス・レオリアです。」


 ジオンドと初対面のフィレオトールとノクスは簡単に名乗り、彼と握手を交わす。
 その後、フィレオトールはどこか気まずげに頬を掻いた。


「それにしても、ルルウェル語がお上手ですね。恥ずかしながら、ブルペノン語はまだまだ勉強中でして…。ジオンドさんのご配慮は、とてもありがたいです。」


「いえいえ、お気になさらず。ここ数年でチェノール大陸からいらっしゃる人が増えて、職業上覚えるしかなかったんです。ギルドには、一攫千金を求めて各国の猛者もさが集まりますから。」


「なるほど…。よければ、うちで依頼書の翻訳作業でも請け負いましょうか? チェノール大陸の国の言語になら、あらかた翻訳できると思いますよ。契約次第では、通訳要員の派遣も可能かと。」


「これはこれは、抜け目ないお方だ。嫌いじゃないですよ、そういうの。その件は後日改めて検討するとして、どうぞお座りください。」


「ありがとうございます。こちらとしても軽いご提案ですので、気楽に検討なさってください。」


 ジオンドに勧められたとおりに全員がソファーに座ると、後ろで待機していた女性が温かいお茶を出してくる。


 その女性が応接室を出ていってから数分後……


「―――では、本題に入りましょうか。」


 眼鏡を軽くかけ直したジオンドが、すっと口調を変えた。


 やはり、部外者がいたから当たりさわりのない世間話で時間を稼いでいたのか。
 情報管理を徹底しているところには非常に好感が持てる。


「ご依頼どおり、魔獣の討伐は完遂いたしました。ところが、ゼクが依頼達成の証拠品について聞きそびれておりまして…。倒した魔獣は別の従業員に管理させているのですが、こちらには何をお持ちすればよいでしょうか?」


「ああ、証拠品はすでに受け取りましたよ。」


「……やはり、隠密にけた諜報員に見張らせていましたか。」


「何せ、私たちの仕事は信用が第一なもので。ご不快にさせたなら申し訳ありません。」


「いえ、当然の対応かと。むしろ、新参者に手放しで大型案件を任せることの方が不快に思います。だからこそあえて諜報員を放置しましたし、そちらにも聞こえる声で〝自信がないなら林に入るな〟と従業員に伝えたんです。」


 あの時は、いち早くこちらの狙いを察したノクスとゼクが声の大きさを合わせてくれて助かった。


 諜報員も馬鹿ではないようで林の中まではついてこなかったし、そのおかげで魔獣討伐に全力を出すことができた。


「……お見逸みそれしました。報告どおり、あなた方の実力はSランク級のようですね。うちのスタッフを危険から遠ざけてくださり、ありがとうございました。」


「気になさらないでください。単に見張らせていたのではなく、状況によっては手助けに入らせるつもりだったのでしょう? こちらは、あなた方の誠意に誠意でお応えしたまでです。」


「やれやれ…。初対面でこう言うのもなんですが、隙がなくてイビりようがないですね。」


「お褒めの言葉として受け取っておきます♪ なんなら、もっとイビってくださっていいんですよ? これも、新参者が通る道ですからね。」


 口調は穏やかなはずなのに、何故か空気がピリつく二人の会話。


 それは、フィレオトールが爽やかな笑顔でチェックメイトを叩きつけたことで終了となった。

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