こんなスローライフは想定外!~いつの間にか、親友を虜にしてしまっていたようで!?~

うみくも

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Step9 今さらの初デートは、何かがおかしいような…?

盲目への片道切符

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「嬉しい……の?」


 こちらの言葉に対し、フィレオトールはきょとんと首を傾げる。
 どこかあどけなさを感じる不思議そうな反応に、自然と笑みが零れた。


「当たり前じゃん。」


 正直な心境を告げて、ノクスはフィレオトールの頬をなぞる。


「そりゃ、なんだかんだと嫌がってないのは分かってるけどさ。でも、素直に言葉で言ってもらえると何倍も嬉しい。だから……余計に興奮しちまってるのが分かるだろ?」


「あっ……」


 ちょっと動いてやると、途端に過敏な反応を示すフィレオトール。
 そんな恋人が、本当に可愛くて仕方ない。


「おれにはもったいないくらいだな。こんなに健気で可愛くて……愛さずにはいられない。」


 これは、嘘でも冗談でもない。
 心の底からの本音だ。


 どっぷり惚れているとは自覚していたが、こうして月日を重ねるにつれて、溺愛したくなる気持ちは増す一方。


 ヴァリアにいた時によく押し倒さずにいられたなと、自分で自分に感心してしまうくらいに。


 ―――どこまでも愛しい宝物。


 あまりにも愛しいものだから、自分の手に収めて閉じ込めてしまいたい。
 誰にも見せず触らせず、自分だけが愛情を注いで慈しんでいたいんだ。


「……ふえぇ…っ」


 あっという間に泣き出すフィレオトール。
 こんなに涙もろいところも、愛しくてたまらない。


「あーあー…。お前は、まーた勝手に不安になってたな? 素直に甘えてくれれば、何度だって言ってやるのに。」


 ……まったくもう。


 これまで無意識で寂しさを押し込めて散々我慢してきたからか、反動でものすごい欲張りになっているじゃないか。


 態度や仕草で〝もっと愛して〟と言っているなんて、フィレオトールには自覚すらないんだろうけど。


 でも、こういう面も自分にピッタリだ。


 言葉でも仕草でも構わないから、自分を求めてほしい。
 よそ見なんかせずに、自分だけを―――


「愛してる。愛してるよ、フィル。」


 これまで、フィレオトールを落とすためにたくさんの物語を読んで、たくさんの人の話を聞いてきた。


 そういった経験の末、この言葉は呪いと紙一重の甘い毒だと思った。


 真実の愛を示す言葉だと言えば聞こえはいいけれど、その反面で人を闇に落とすために簡単に口にされてしまう言葉であるのも事実。


 まさに、幸福と破滅を背中合わせにした盲目という名のおりへの片道切符だ。


 だけど、ただ一人と定めた相手にはどうしても告げずにはいられない言葉。


 本当に愛しているから、自然と口から零れてしまうのだ。


「………っ」


 両目から絶え間なく雫を零すフィレオトールが、感極まったようにぎゅっと目をつぶる。


 次の瞬間、首に細い腕が回ってきた。


「嬉しい。」


 その一言と共に、その細さからは想像もつかないほどの力が込められる。




「―――僕も、愛してる。」




 くらくらするほどに濃厚な甘い香りを伴って届けられる言葉は、心どころか全身をも揺らした気がした。


「愛してる…。僕には、最初からノクスしかいないの。これからも、ノクスしかいらないの。好き……大好き…っ」


 ああ……やっぱり、これはとんでもない毒だ。


 しかも、一度取り込んだら取り返しがつかない、強力な依存性をはらんだ厄介なやつ。


「そっか……」


 気付けば、頬がほころんでいた。


「嬉しいよ。もっと言ってくれ。」
「ん……愛してる……」


「そう、いい子だ。もっと溺れろ。」
「あ……う……」


「そのまま、どん底まで落ちてこい。おれとおんなじとこまでさ。」
「ああっ!!」


 赤い耳朶じたに甘い吐息を吹き込む度、表情と声の甘さが濃度を増す。
 それがたまらなく嬉しくて、さらに濃い甘さが欲しくなる。


「は……あ……そん……な、こと……言っても……」


 必死に言葉をつむごうとするフィレオトールが可愛くて、思わずいじめてやりたくなったが、ここはぐっとこらえることに。


「何?」


 少し動きを緩めて、続きを待ってみる。


「とっくのとうにどん底まで溺れてるのに……これ以上、どうやって溺れるの…?」


 ああもう。


 とことん口が素直になってしまった可愛い天使は、どこまで嬉しいことを言ってくれるんだか。


 誕生日プレゼントとして、満点に何点加算すればいいのか分からないくらい。


 こんなの、夢中になるなと言う方が無理だ。


「ふふ……気にするな。どん底まで行ったら、さらなる深みが待ってるだけだ。」


 今の自分がまさにその状況なので、ノクスは自信満々にそう断言。
 すると……


「そっか……そうだね。」


 綺麗な微笑みを浮かべて、フィレオトールが小さく頷いた。


 ちょっと待ってくれ。
 今ので、核爆弾何発分だ。
 幸せすぎて、そろそろ心臓が止まる気がする。


「くそ……なんだかなぁ……」


 思わず毒づいてしまう。


「ぜってー溺れさせてやるって躍起になるんだけど……毎度毎度、溺れさせられるのはおれなんだよな……」


 本当に、悔しい限りだ。


 どんなに雰囲気作りを頑張って言葉を尽くしたって、天然の一撃には敵わないんだから。


「あー、やべ…。そろそろ、我慢できねぇ。」


 すっとわるすみれ色の双眸。
 そこから何かを感じ取ったのか、フィレオトールが再度ノクスの首に手を回す。


 お互いに貪り合うような深い口づけ。
 それは、永遠のようで一瞬のようにも感じる時間だった。


 しばらくして、唇が離れた直後―――


「あ……だめ………気持ちいい……」


 そんな一言が、フィレオトールの唇から漏れた。


「!?」


 瞬間、ノクスがカッと両目を見開く。


「フィル! お前、今なんつった!?」


 慌てて肩を掴んで詰め寄るも……


「ほえ…?」


 頭がぽややん状態のフィレオトールは、赤らんだ顔で首を傾げるだけ。


「マジか! そこまでぶっ飛んでるのか!? なあ、頼む! もう一回! 今の、もう一回!!」


「………?」


 何度も肩を揺さぶるが、フィレオトールはつい先ほどの発言が全然記憶にない様子。
 どこかぼうっとした表情でくうを見るだけである。


「~~~っ! ああもうっ!!」
「んあっ」


 衝動に任せ、深くあいを貫く。
 その耳朶じだに歯を立てたノクスの瞳に、鋭い光が宿った。


「何がなんでも、もう一回言わせてやる。」


 そんな決意を述べたノクスの動きが、一気に激しさを増した。


「あっ……やっ……」
「もう聞かねぇ。」


「ああっ!! だ……だめ…っ。激しくしちゃ…っ」
「そういやさ……」


 ふといいことを思いついて、ノクスはフィレオトールの唇に触れる。


「いっつも〝だめ〟とか〝いや〟とかばっかだけど、何がそんなに嫌なんだ?」
「あ……う……そ、れは…っ」


「それは?」
「ふああっ!!」


「ほら、正直に言ってみな? そうしたら、少し手加減してやる。」


 ねっとりと耳に舌を絡めるノクスは、完全にドSモードである。


 ごめんな、フィル。
 おれには、これ以上王子様モードの継続は無理だわ。
 こっちの方が断然性に合うし、楽しいんだ。


「う……だって……」
「ん?」


 とびきりの優しい声で、先をうながしてやる。
 すると、薔薇ばら色の唇が薄く開いた。


「ただでさえ怖いくらいに気持ちいいのに、これ以上よくなったら……全部がおかしくなっちゃいそうなんだもん。変な癖になって、〝もっとして〟とか……そんなわがままばっかになったら、どうするの…?」


 理性は飛んでも恥ずかしさは健在なのか、顔を真っ赤にして瞳を潤ませるフィレオトール。


 その言葉と態度の破壊力はすさまじく……


「大歓迎なんだよなあぁぁー……」


 思わず全身から力が抜けて、両手で顔を覆ったノクスはベッドの上にひっくり返ってしまった。


 可愛さって、人を簡単に殺せるんだな。
 もう、このまま死んでもいいや。
 誕生日と命日が同じとか、ある意味締まりがよくね?


 あまりの可愛さといじらしさにノックアウトされて白旗を振るしかないノクスに、フィレオトールは小さく首を傾げる。


「ノクス…?」


 不思議そうな声が聞こえてきたので、とりあえず大丈夫と伝えてやろうと、顔から手をどける。


 瞬間、綺麗に思考が固まった。


(あ、めっちゃいい眺め。最高かよ。)


 浮かんだ感想はそれだけ。


 まさか、あのフィレオトールが自分の上にまたがる姿を拝む日が来ようとは。
 いくら誕生日だからって、ご褒美が過ぎませんかね?


 ―――プツン、と。


 とうとう、最後の理性がはち切れる。
 その後の展開は、言うまでもない。

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