こんなスローライフは想定外!~いつの間にか、親友を虜にしてしまっていたようで!?~

うみくも

文字の大きさ
94 / 125
Step9 今さらの初デートは、何かがおかしいような…?

盲目への片道切符

しおりを挟む

「嬉しい……の?」


 こちらの言葉に対し、フィレオトールはきょとんと首を傾げる。
 どこかあどけなさを感じる不思議そうな反応に、自然と笑みが零れた。


「当たり前じゃん。」


 正直な心境を告げて、ノクスはフィレオトールの頬をなぞる。


「そりゃ、なんだかんだと嫌がってないのは分かってるけどさ。でも、素直に言葉で言ってもらえると何倍も嬉しい。だから……余計に興奮しちまってるのが分かるだろ?」


「あっ……」


 ちょっと動いてやると、途端に過敏な反応を示すフィレオトール。
 そんな恋人が、本当に可愛くて仕方ない。


「おれにはもったいないくらいだな。こんなに健気で可愛くて……愛さずにはいられない。」


 これは、嘘でも冗談でもない。
 心の底からの本音だ。


 どっぷり惚れているとは自覚していたが、こうして月日を重ねるにつれて、溺愛したくなる気持ちは増す一方。


 ヴァリアにいた時によく押し倒さずにいられたなと、自分で自分に感心してしまうくらいに。


 ―――どこまでも愛しい宝物。


 あまりにも愛しいものだから、自分の手に収めて閉じ込めてしまいたい。
 誰にも見せず触らせず、自分だけが愛情を注いで慈しんでいたいんだ。


「……ふえぇ…っ」


 あっという間に泣き出すフィレオトール。
 こんなに涙もろいところも、愛しくてたまらない。


「あーあー…。お前は、まーた勝手に不安になってたな? 素直に甘えてくれれば、何度だって言ってやるのに。」


 ……まったくもう。


 これまで無意識で寂しさを押し込めて散々我慢してきたからか、反動でものすごい欲張りになっているじゃないか。


 態度や仕草で〝もっと愛して〟と言っているなんて、フィレオトールには自覚すらないんだろうけど。


 でも、こういう面も自分にピッタリだ。


 言葉でも仕草でも構わないから、自分を求めてほしい。
 よそ見なんかせずに、自分だけを―――


「愛してる。愛してるよ、フィル。」


 これまで、フィレオトールを落とすためにたくさんの物語を読んで、たくさんの人の話を聞いてきた。


 そういった経験の末、この言葉は呪いと紙一重の甘い毒だと思った。


 真実の愛を示す言葉だと言えば聞こえはいいけれど、その反面で人を闇に落とすために簡単に口にされてしまう言葉であるのも事実。


 まさに、幸福と破滅を背中合わせにした盲目という名のおりへの片道切符だ。


 だけど、ただ一人と定めた相手にはどうしても告げずにはいられない言葉。


 本当に愛しているから、自然と口から零れてしまうのだ。


「………っ」


 両目から絶え間なく雫を零すフィレオトールが、感極まったようにぎゅっと目をつぶる。


 次の瞬間、首に細い腕が回ってきた。


「嬉しい。」


 その一言と共に、その細さからは想像もつかないほどの力が込められる。




「―――僕も、愛してる。」




 くらくらするほどに濃厚な甘い香りを伴って届けられる言葉は、心どころか全身をも揺らした気がした。


「愛してる…。僕には、最初からノクスしかいないの。これからも、ノクスしかいらないの。好き……大好き…っ」


 ああ……やっぱり、これはとんでもない毒だ。


 しかも、一度取り込んだら取り返しがつかない、強力な依存性をはらんだ厄介なやつ。


「そっか……」


 気付けば、頬がほころんでいた。


「嬉しいよ。もっと言ってくれ。」
「ん……愛してる……」


「そう、いい子だ。もっと溺れろ。」
「あ……う……」


「そのまま、どん底まで落ちてこい。おれとおんなじとこまでさ。」
「ああっ!!」


 赤い耳朶じたに甘い吐息を吹き込む度、表情と声の甘さが濃度を増す。
 それがたまらなく嬉しくて、さらに濃い甘さが欲しくなる。


「は……あ……そん……な、こと……言っても……」


 必死に言葉をつむごうとするフィレオトールが可愛くて、思わずいじめてやりたくなったが、ここはぐっとこらえることに。


「何?」


 少し動きを緩めて、続きを待ってみる。


「とっくのとうにどん底まで溺れてるのに……これ以上、どうやって溺れるの…?」


 ああもう。


 とことん口が素直になってしまった可愛い天使は、どこまで嬉しいことを言ってくれるんだか。


 誕生日プレゼントとして、満点に何点加算すればいいのか分からないくらい。


 こんなの、夢中になるなと言う方が無理だ。


「ふふ……気にするな。どん底まで行ったら、さらなる深みが待ってるだけだ。」


 今の自分がまさにその状況なので、ノクスは自信満々にそう断言。
 すると……


「そっか……そうだね。」


 綺麗な微笑みを浮かべて、フィレオトールが小さく頷いた。


 ちょっと待ってくれ。
 今ので、核爆弾何発分だ。
 幸せすぎて、そろそろ心臓が止まる気がする。


「くそ……なんだかなぁ……」


 思わず毒づいてしまう。


「ぜってー溺れさせてやるって躍起になるんだけど……毎度毎度、溺れさせられるのはおれなんだよな……」


 本当に、悔しい限りだ。


 どんなに雰囲気作りを頑張って言葉を尽くしたって、天然の一撃には敵わないんだから。


「あー、やべ…。そろそろ、我慢できねぇ。」


 すっとわるすみれ色の双眸。
 そこから何かを感じ取ったのか、フィレオトールが再度ノクスの首に手を回す。


 お互いに貪り合うような深い口づけ。
 それは、永遠のようで一瞬のようにも感じる時間だった。


 しばらくして、唇が離れた直後―――


「あ……だめ………気持ちいい……」


 そんな一言が、フィレオトールの唇から漏れた。


「!?」


 瞬間、ノクスがカッと両目を見開く。


「フィル! お前、今なんつった!?」


 慌てて肩を掴んで詰め寄るも……


「ほえ…?」


 頭がぽややん状態のフィレオトールは、赤らんだ顔で首を傾げるだけ。


「マジか! そこまでぶっ飛んでるのか!? なあ、頼む! もう一回! 今の、もう一回!!」


「………?」


 何度も肩を揺さぶるが、フィレオトールはつい先ほどの発言が全然記憶にない様子。
 どこかぼうっとした表情でくうを見るだけである。


「~~~っ! ああもうっ!!」
「んあっ」


 衝動に任せ、深くあいを貫く。
 その耳朶じだに歯を立てたノクスの瞳に、鋭い光が宿った。


「何がなんでも、もう一回言わせてやる。」


 そんな決意を述べたノクスの動きが、一気に激しさを増した。


「あっ……やっ……」
「もう聞かねぇ。」


「ああっ!! だ……だめ…っ。激しくしちゃ…っ」
「そういやさ……」


 ふといいことを思いついて、ノクスはフィレオトールの唇に触れる。


「いっつも〝だめ〟とか〝いや〟とかばっかだけど、何がそんなに嫌なんだ?」
「あ……う……そ、れは…っ」


「それは?」
「ふああっ!!」


「ほら、正直に言ってみな? そうしたら、少し手加減してやる。」


 ねっとりと耳に舌を絡めるノクスは、完全にドSモードである。


 ごめんな、フィル。
 おれには、これ以上王子様モードの継続は無理だわ。
 こっちの方が断然性に合うし、楽しいんだ。


「う……だって……」
「ん?」


 とびきりの優しい声で、先をうながしてやる。
 すると、薔薇ばら色の唇が薄く開いた。


「ただでさえ怖いくらいに気持ちいいのに、これ以上よくなったら……全部がおかしくなっちゃいそうなんだもん。変な癖になって、〝もっとして〟とか……そんなわがままばっかになったら、どうするの…?」


 理性は飛んでも恥ずかしさは健在なのか、顔を真っ赤にして瞳を潤ませるフィレオトール。


 その言葉と態度の破壊力はすさまじく……


「大歓迎なんだよなあぁぁー……」


 思わず全身から力が抜けて、両手で顔を覆ったノクスはベッドの上にひっくり返ってしまった。


 可愛さって、人を簡単に殺せるんだな。
 もう、このまま死んでもいいや。
 誕生日と命日が同じとか、ある意味締まりがよくね?


 あまりの可愛さといじらしさにノックアウトされて白旗を振るしかないノクスに、フィレオトールは小さく首を傾げる。


「ノクス…?」


 不思議そうな声が聞こえてきたので、とりあえず大丈夫と伝えてやろうと、顔から手をどける。


 瞬間、綺麗に思考が固まった。


(あ、めっちゃいい眺め。最高かよ。)


 浮かんだ感想はそれだけ。


 まさか、あのフィレオトールが自分の上にまたがる姿を拝む日が来ようとは。
 いくら誕生日だからって、ご褒美が過ぎませんかね?


 ―――プツン、と。


 とうとう、最後の理性がはち切れる。
 その後の展開は、言うまでもない。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

異世界転生した双子は今世でも双子で勇者側と悪魔側にわかれました

陽花紫
BL
異世界転生をした双子の兄弟は、今世でも双子であった。 しかし運命は二人を引き離し、一人は教会、もう一人は森へと捨てられた。 それぞれの場所で育った男たちは、やがて知ることとなる。 ここはBLゲームの中の世界であるのだということを。再会した双子は、どのようなエンディングを迎えるのであろうか。 小説家になろうにも掲載中です。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった

水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。 そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。 ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。 フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。 ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!? 無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。

冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる

尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる 🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟 ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。 ――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。 お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。 目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。 ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。 執着攻め×不憫受け 美形公爵×病弱王子 不憫展開からの溺愛ハピエン物語。 ◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。 四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。 なお、※表示のある回はR18描写を含みます。 🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました! 🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。

完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?

七角@書籍化進行中!
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。 その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー? 十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。 転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。 どんでん返しからの甘々ハピエンです。

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

【完結】白豚王子に転生したら、前世の恋人が敵国の皇帝となって病んでました

志麻友紀
BL
「聖女アンジェラよ。お前との婚約は破棄だ!」 そう叫んだとたん、白豚王子ことリシェリード・オ・ルラ・ラルランドの前世の記憶とそして聖女の仮面を被った“魔女”によって破滅する未来が視えた。 その三ヶ月後、民の怒声のなか、リシェリードは処刑台に引き出されていた。 罪人をあらわす顔を覆うずた袋が取り払われたとき、人々は大きくどよめいた。 無様に太っていた白豚王子は、ほっそりとした白鳥のような美少年になっていたのだ。 そして、リシェリードは宣言する。 「この死刑執行は中止だ!」 その瞬間、空に雷鳴がとどろき、処刑台は粉々となった。 白豚王子様が前世の記憶を思い出した上に、白鳥王子へと転身して無双するお話です。ざまぁエンドはなしよwハッピーエンドです。  ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。

処理中です...