こんなスローライフは想定外!~いつの間にか、親友を虜にしてしまっていたようで!?~

うみくも

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Step11 勇者沈没!? ドキドキの看病タイム!

瘴気病

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「―――こりゃ、瘴気病だな。」




 緊急助っ人としてフィレオトールに魔王城から引きずられてきたジノンと、精霊たちに呼びつけられて魔領に戻ってきたゼク。


 二人は、ノクスの容態を見るなりそう告げた。


「ああ?」
「瘴気…病?」


 毛布にくるまって荒い呼吸を繰り返すノクスと、そんな彼を抱いて涙目のフィレオトール。


 双方を眺めるジノンとゼクは、特に深刻そうな雰囲気を出すわけでもなく冷静だ。


「魔族の中では割とポピュラーな病気よ。そんなに気張るほどのもんじゃないわ。」


「え…? 魔族なのに、瘴気で病気になるの?」


「あー…。そこからなのね。」


 フィレオトールの反応で何かを察したジノン。
 彼女は一度ゼクの顔を見合わせると、再びフィレオトールたちに向き直る。


「魔族や魔獣は瘴気に満ちた魔領で暮らす中で独特の進化をした生き物なんだけど、瘴気を完全に克服してるかというと、そうでもないのよ。」


「そうなの…?」


「そうなの。瘴気を養分に変換したり無毒化したりする能力とか、害になる前に体外に排出する能力とか、そういったもので瘴気と上手く付き合ってるわけ。瘴気が魔力並みのエネルギーを宿しているからバンバン使ってるけど、自分の限界を超えて使いすぎたり、瘴気に対抗する能力が下がったりすると、こんな風に体調を崩すわ。だから、瘴気の影響をほとんど受けないゼク様は魔族の中でも別格ね。」


「そうなんだ…。程度に差はあれど、瘴気は魔族にも有害なんだね。僕、ゼクの守りがあるから平気だろうって、気楽に考えすぎてた。」


「そこは、守りをつけた時にきちんと説明しなかった俺も悪い。ごめんな。」


「それは大丈夫。で、ノクスってよくなる?」


 ぶっちゃけ、これまでのことよりも今後のことが重要である。


 不安そうに眉を下げるフィレオトール。
 そんな彼と目を合わせた二人は、あっけらかんと笑った。


「大丈夫、大丈夫! 熱や汗で体内に溜まった瘴気を吐き出したら、自然とよくなるわよ。それに、ノクスの症状は全然軽い方よ?」


「そうそう。魔族連中が瘴気病にかかったら、情緒が不安定になってその辺を暴れ回ったり、逆に死んだかってレベルで昏倒したりだからな。多分俺の守りがあるのと、こいつ自身が聖属性のかたまりだから瘴気をある程度浄化できてるってことが幸いしてんだろうな。」


「よ、よかった…。ちなみに、薬なんてものは……」


「んな都合のいいもん、魔族の世界にあるとでも?」


「ですよねー。ノクス、つらいかもしれないけど、自然に治るまでは辛抱だね。」


「ん…」


 ぽんぽんと背中を叩くと、ノクスはこくりと頷く。


 ああ、なんて新鮮な反応でしょう。


 ノクスが体調を崩すことなんて滅多にないので、丸くなった彼が新鮮でたまらない。


「……あれ?」


 どっと安心したら、とあることが気になった。


「じゃあ、僕はなんでピンピンしてるんだろ? ゼクたちの話をもとに考えるなら、ノクスより先に僕が瘴気病にかかってたはずだよね? 僕は聖属性なんて持ってないし、ノクスよりもよっぽど長くここにいたのに…。精霊の加護があると、また違うのかな?」


「んー……お前の場合は、また特殊だからな……」


 難しげにうなるゼクは、ふとフィレオトールの手を取る。


「物は試しだ。今から少量の瘴気を流してみるから、何もせずにリラックスしてろ。先に断ってるんだから、反射的に魔法を使うなよ?」


「うん、分かった。」


 頷いたフィレオトールは、一つ深呼吸をして肩の力を抜く。
 それを確認したゼクは、握った手にゆっくりと瘴気を集めた。


 全員が無言になる時間が、約一分。


「―――うん。よーく分かった。」


 目を閉じて何かに集中していたゼクは、すっきりとした表情でフィレオトールの手を離した。


「日頃のお前を見ていて疑問に思っちゃいたが、いよいよ人間離れしてきたなー。」
「えっ!? 急に何さ!!」


 突然そんなことを言われ、フィレオトールは声をひっくり返す。
 しかし、ゼクの表情は真剣そのものだ。


「フィルお得意のあれ……同期魔法だったか? 参考までに聞きたいんだが、それに瘴気を取り入れるようになったのはいつの話だ?」


「え? えーっと……構想自体は九歳の時にはあったけど、実際に使い始めたのは十二歳くらいからかな…?」


「つまり、十年くらい瘴気を体内に取り込んできたと。そのせいで、お前独自の進化でも起こっちまったんじゃねぇか? 多少の瘴気なら、特に意識せずとも自分の魔力に自動変換できるようになってるみてぇだぞ。」


「……はいぃっ!?」


「いやはや、面白かったぜ? 瘴気がお前の魔力に吸い込まれたと思ったら、あっという間に消えちまったんだからよ。それどころか、俺の体内に巡る瘴気まで吸い取ろうして―――……ん?」


 先ほどの検証結果を述べていたゼクが、そこで片眉を上げる。


「なあ、ノクス。お前、最近フィルと長らく離れていたことがあったりしたか?」
「離れて……ああ。」


 ぼんやりとくうを見上げたノクス。
 普段の倍以上の時間をかけて思い当たる記憶を探り当てる。


「そういや、めんどくせぇ依頼に巻き込まれて、しばらくそっちに缶詰めだった時が…。たまに家に帰れてもあまりゆっくりとできなくて、ストレスが溜まったのなんの……」


「ははーん? そういうことか。」


「そういうことかって何? まさか、普段は僕が無意識でノクスの瘴気を吸い取ってるから平気だけど、この前の依頼で僕と触れ合う時間が減ったせいで、病気になるレベルまで瘴気が溜まっちゃったなんて言わないよね?」


「まさにそのとおりだけど? 説明する手間が省けたわ。」


「えー……本当にそうなのぉ……」


 ゼクがノクスに話を聞き出した時からこの流れを察していたので、先ほどのように飛び上がるほど驚きはしないけど、まさか自分の身にそんな変化が起こっていたとは。


 つまり、今は前呪文を詠唱せずとも魔力が周囲の力に同期するようになっているのだろう。


 しかしながら、自分の魔力に意識をわせてみても、魔力が瘴気と同期しているような感覚はない。


 となると、常に周囲と同期しているのは一部の魔力だけだと考えられる。


 ならば、年々同期時間が早くなっていったり基本魔力が増しているように感じるのは、この変化も手伝ってのことなのか。


 とはいえ、同期魔法を使いすぎたからこうなったというよりは、同期魔法を使うことで自分の魔力と周囲の力を切り分けているからこうなっていると考えるのが妥当だろう。


 そうじゃなかったら、幼い頃に精霊の力を持て余して魔法を暴発させていたように、瘴気の力でも魔法が暴発するようになっていた可能性が高い。


「改めて思うけど、便利な反面コントロールが難しい体質だなぁ……」


 自身の両手を見下ろし、しみじみと呟くフィレオトールだった。

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