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Step11 勇者沈没!? ドキドキの看病タイム!
ついでに確保♪
しおりを挟む「ま、何はともあれ、そこまで大事じゃなくてよかったわ。」
皆が口を閉じてしばらく。
場の空気を変えるように、ゼクが手を一つ叩いた。
それで、自分の手を見つめ続けていたフィレオトールもハッと我に返る。
「二人とも、わざわざ引っ張ってきてごめんね。初めてのことだから、パニックになって騒いじゃった。」
「そんなに気にしなくていいわよ。突然泣きそうな顔で飛び込まれた時には何事かと思ったけどね。」
「いやー、お前の親衛隊たちには頭が下がるぜ。どこにいたって、お前に何かがあったら秒速で情報が伝わるんだからよ。」
「みんなもありがとね。本当に助かったよ。」
周囲の精霊たちにも礼を言うと、彼女たちは嬉しそうにその辺りを飛び回った。
「まあ、あたしとしてはフィルが騒ぎを起こしてくれたことに感謝ね。」
にっこりと笑うジノン。
次の瞬間、素早く伸びた細い手がゼクのシャツをしっかりと捕まえる。
「確保。」
「……げっ!?」
ジノンの行動の意味を察したゼクの顔から、面白いほどに血の気が引いていく。
「ジ、ジノン…っ」
「やっと捕まえたわよー? この前フィルに城に送りつけてもらった時に、少なくとも月に一回は帰るって約束したじゃない。前に帰ってきてから、一ヶ月と十日経ってるけど?」
「そ、それはだな……って、おい! フィル、まさか…っ」
ゼクに疑いの目を向けられたフィレオトールは、プイッと視線を横へ。
それで答えを読み取ったゼクが唇を戦慄かせるも、そんな彼にジノンが容赦なく迫る。
「あのねぇ、この前も言ったじゃない。横着して帰るまでの期間を開けるほど、帰ってきた時の仕事がえげつなくなるんだって。ゼク様用の仕事、たんまり溜まってるわよ?」
「お、俺だって遊んでたわけじゃないぞ! ミューゼンの阿呆が仲間を集めてるって情報が耳に入ったから、そっちに潜入して内部分裂を仕組んできてたんだって! そのついでに、辺りの魔獣も蹴散らしといたし!」
「それはどうもありがとう。でも、これも言わなかった? 今後城の仕事をサボったら、ペナルティを科すって。さーて、今回はどうしてくれようかしら♪」
「ま、待て! お前、割と本気で精気を抉ってくるから、せめて多少は手加減を…っ。フィル!!」
「自業自得でしょ。普段城を守ってもらってる分、精気の七割や八割くらい提供してやれっての。あと、ノクスをちゃんと休ませてあげたいから、夫婦漫才は城に帰ってからやって。」
「お前、ノクスが大丈夫だと知った瞬間に対応が雑だな!?」
慌てるゼクをあしらうフィレオトールだが、その表情には覇気がなく、非常に弱々しく見える。
「やっぱり心配?」
水色の双眸がノクスに注がれていることに気付き、ジノンが単刀直入に訊ねる。
その問いに、フィレオトールはしゅんと眉を下げて頷いた。
「そりゃあね。何度か経験してることだけど、この感覚には未だに慣れることができないなぁ…。命に別状はないって分かってても心配になるし、こんな風に苦しそうな姿を見ると、僕が代わってあげられたらいいのにって思わずにはいられないもん。」
ぎゅっとノクスを抱き締めるフィレオトール。
すると……
「あーもー、こんな時でも可愛いんだがー……」
そんなことを言うノクスの上半身が大きく揺れまくる。
どうやら、今のヒットで熱が上がってしまったようだ。
「こうして見ると、ちゃんと調子が悪いって分かるわよね。あのノクスが、悶絶する元気もないって。」
「だな。お互いにこうもフルオープンだと、空気を読んで気付かないふりをする意味もこれ以上はないか。」
「あ、あはは……」
そういえば、ゼクには自分たちが付き合ってることを言ってなかった。
今さらのようにそう思ったけど、ごまかすには色々と遅すぎる。
どうせジノンには知られている関係だし、ゼクもとっくのとうに察していたようだし、ノクスはこんなだし、隠すのも馬鹿らしい。
とはいえ恥ずかしいには恥ずかしいので、フィレオトールは苦笑いでその場をごまかすしかなかった。
「まあ、ノクスくらいの軽さなら、三日もあれば全快するんじゃない?」
「三日かぁ……」
「だけど、もし少しでも早くよくなってほしいなら……」
フィレオトールの隣に、ふとジノンが腰かける。
首を傾げるフィレオトールの耳にそっと唇を寄せた彼女が、何かを囁いた瞬間―――
「うっぎゃあああぁぁぁ―――っ!?」
フィレオトールが真っ赤な顔で大きな叫び声をあげる。
その拍子に勢いよくノクスを突き飛ばしてしまい、熱のせいで力に逆らえない彼は床に落下。
「なっ、ななななな…っ」
「やあねぇ、たとえばの話よ?」
「第一のたとえが、どうしてそれになるの!?」
「だって、ノクスの性格を考える限り、それが一番効率的に瘴気を外に排出できそうだもの。」
「ううぅ…っ。でも……でも…っ」
「フィル、とりあえず落ち着け。早く救出してやらないと、ノクスがそのまま床で伸びることに……」
「ハッ!? ノクス、ごめーん!!」
「………」
ひとまず、この場はノクスの救助が最優先となり、ジノンからの提案はうやむやとなった。
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