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Step11 勇者沈没!? ドキドキの看病タイム!
特大ブーメラン
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魔族に比べれば軽いとはいえ、病気は病気。
ゼクとジノンが帰るまでは体を起こしていたノクスも、それ以降はベッドに沈没してしまった。
普段うるさいくらいに叫んだり悶絶したりしている勇者様が静かなのだ。
未曾有とも思える事態に、精霊たちもさすがに心配になったよう。
彼女たちは各々お見舞いの品を持ってきて、ノクスの周囲に常に張り付いていた。
さらには、初めてブルペノンに行った道中で調教してから半ばペットのようになっている魔獣たちが、窓の外をうろうろ。
いつもは自分の方に寄ってくる皆だけど、ノクスのことも自分に負けないくらい大好きなのだろう。
こんな時に不謹慎だとは思うけど、自分と一緒になって甲斐甲斐しくノクスの看病に勤しむ精霊たちを見ているのは微笑ましかった。
とはいえ、自分が少し席を外している間に魔獣たちに群がられてしまい、「重い……頼むからどいてくれ……」と呻いているノクスを見た時には、さすがに可哀想になった。
「ほら、みんな。今日はもう、ノクスを静かに寝かせてあげようね。」
いつまで経ってもお見舞い軍団が帰りそうにないので、申し訳ないが日暮れと共に皆にはお帰りいただいた。
さらに申し訳ないのだけど、寝室の壁に沿うように結界を展開して、周囲の物音や気配もシャットアウトさせてもらうことに。
「ノクス、大丈夫?」
一通りの家事を済ませて寝室に戻ったフィレオトールは、ノクスの額に乗ったタオルを魔法で冷やしながらそう訊ねる。
「あー……ううぅ……ようやく、静かになった……」
喘鳴の隙間にぼやくノクス。
なんとか質問に答えたものの、目を開くことすらしないところを見ると、相当つらいようだ。
「ごめんね? ゆっくりさせてあげたかったんだけど、あんなにノクスを心配してるみんなを追い出すのも可哀想で……」
「うう……大丈夫……」
ノクスはひらひらと手を振る。
まったくもう。
なんだかんだ、自分の領域に入れた存在には甘いんだから。
フィレオトールは眉を下げて微笑みながら、ノクスの汗を別のタオルで拭ってやる。
「じゃあ、僕はリビングにいるね? 定期的に様子を見に来るけど、何かあったら呼んで。体はつらいと思うけど、いつも働きすぎなんだし、どうせならゆっくり休んでね。」
今までは言われることの方が多かった言葉をかけて、ノクスの頭をひとなで。
特に返答は待たずに、足音を忍ばせてベッドを離れる。
「ううぅー…」
微かな声がした直後、ベッドが軋む音が耳朶を打つ。
次に、後ろからぎゅっとノクスにしがみつかれた。
「ノクス? どうしたの?」
この体勢では振り向くに振り向けないので、首だけを巡らせてノクスの様子を窺う。
「ここにいろ。」
「え…? でも……」
「いいから。」
離してなるものか、と。
フィレオトールにしがみつくノクスの腕に力がこもる。
「これ、お前には移らないんだろ…? だったら……今日はもう、どこにも行くな。」
そんな言葉が頭に響き渡った瞬間……
(何これ!? すっごく可愛い!!)
心臓がきゅーんと締め上げられたような心地になって、フィレオトールはわなわなと唇を震わせた。
顔は見えないけれど、すりすりと背中に頭を寄せてくるのが可愛いのなんの。
熱で弱っているせいもあってか、自分に離れていかれるのが心細いらしい。
「あの……ノクス……」
「……だめか?」
こちらの戸惑いをそういう風に受け取ってしまったのか、上目遣いでこちらを見つめたノクスが、しゅんと眉を下げてしまった。
「はう…っ」
ときめきを通り越し、心臓を撃ち抜かれたような衝撃が自分を襲う。
割と本気で心臓が止まるかと思った。
「……だめなわけないでしょ。」
なんとか動悸を静めたフィレオトールは、優しい手つきでノクスの髪の毛を梳く。
「どこにも行かないから、ベッドに戻ろう? とにかく、今は休まなきゃ。」
目を開く気力もないのに、自分を引き留めるために無理をしちゃって。
とにかく、早く寝かさなくちゃ。
ノクスの手を緩めて体ごと彼に向き直ったフィレオトールは、その体をそっと押して毛布の中に戻そうとする。
「わっ!?」
その刹那にノクスに腕を取られた結果、自分も一緒にベッドの上に引きずり込まれてしまった。
「もう……ノクス。添い寝してほしいならしてあげるから、とにかく横になって。」
「やだ……」
流れでノクスの脚に乗る形になってしまったフィレオトールが物申すも、ノクスは意地でもフィレオトールを離そうとしない。
「ずっと我慢してたんだから、少しくらいいいだろ…?」
再びこちらを抱く腕に力を込めて、胸に顔をうずめてくるノクス。
ここまでされたら、体調が悪いからと言って我慢させるのも可哀想になってくる。
早々に諦めたフィレオトールは、ノクスに抱き締められた体勢のまま、周囲の枕やクッションを掻き集めた。
ノクスが疲れた時にもたれかかれるように、それをノクスとヘッドボードの間に積み上げる。
「分かった。しばらくはこのままでいいけど、満足したらちゃんと横になってね。絶対に離れないから。」
「うん……」
自分の許可をもらえて安心したのか、今度の言葉には素直に頷いてくれる。
まるで、幼子に戻ってしまったかのようだ。
「もう、仕方ないなぁ……」
小さく息をつくフィレオトール。
しかしながら、その内心は穏やかではなかった。
(可愛い……可愛すぎるんですけど…っ)
丸くなったノクスがこんなにも可愛いなんて、反則レベルのギャップじゃないですか。
いつもは甘やかしてもらってばかりなので、甘えてもらえる立場がこそばゆい。
なんだか、とことん甘やかしてもっと愛でていたい気分。
(ノクスが悶絶してる時って、こんな気持ちだったのかな…?)
普段の自分の行いが特大ブーメランとなって返ってきて、少しだけノクスの気持ちが理解できたフィレオトールであった。
「なあ、フィル……」
「何?」
「今日さ、なんでずっとそわそわしてんの…?」
「……えっ!?」
「今だって、鼓動が心なしか早いぞ…。なんか、変に意識してないか…?」
「―――っ!!」
ド直球に指摘されたフィレオトールは、ぎくりと全身を強張らせる。
(だって……だって…っ)
途端に頬に熱が集まってくるようで、フィレオトールは視線を右に左にと泳がせる。
『だけど、もし少しでも早くよくなってほしいなら……』
全ての原因は、ジノンがこの先に続けた言葉にある。
あんなことを聞かされて意識するななんて、自分には絶対に無理だ。
「ご、ごめん…。不愉快……だったかな…?」
「んーん。」
ノクスは首を横に振って、フィレオトールの問いを否定。
「嫌じゃねぇけど……」
すっと。
熱で汗ばんだその指が、フィレオトールの唇をなぞる。
「そんな顔をされると、キスしたくなる。なんだか今日は……いつにも増して、美味そうに見えるんだ。」
「………っ」
大きく高鳴って、より早いテンポを刻み始める心臓。
うっすらと涙をまとった菫色の双眸に、何もかもを持っていかれるよう。
互いの唇が近付いて、息がかかって……
『それとなく、瘴気を思い切り吐き出させてあげればいいんじゃない? 性欲とでも一緒に。』
唇が深く交わった刹那、ジノンの声が脳裏で木霊した。
ゼクとジノンが帰るまでは体を起こしていたノクスも、それ以降はベッドに沈没してしまった。
普段うるさいくらいに叫んだり悶絶したりしている勇者様が静かなのだ。
未曾有とも思える事態に、精霊たちもさすがに心配になったよう。
彼女たちは各々お見舞いの品を持ってきて、ノクスの周囲に常に張り付いていた。
さらには、初めてブルペノンに行った道中で調教してから半ばペットのようになっている魔獣たちが、窓の外をうろうろ。
いつもは自分の方に寄ってくる皆だけど、ノクスのことも自分に負けないくらい大好きなのだろう。
こんな時に不謹慎だとは思うけど、自分と一緒になって甲斐甲斐しくノクスの看病に勤しむ精霊たちを見ているのは微笑ましかった。
とはいえ、自分が少し席を外している間に魔獣たちに群がられてしまい、「重い……頼むからどいてくれ……」と呻いているノクスを見た時には、さすがに可哀想になった。
「ほら、みんな。今日はもう、ノクスを静かに寝かせてあげようね。」
いつまで経ってもお見舞い軍団が帰りそうにないので、申し訳ないが日暮れと共に皆にはお帰りいただいた。
さらに申し訳ないのだけど、寝室の壁に沿うように結界を展開して、周囲の物音や気配もシャットアウトさせてもらうことに。
「ノクス、大丈夫?」
一通りの家事を済ませて寝室に戻ったフィレオトールは、ノクスの額に乗ったタオルを魔法で冷やしながらそう訊ねる。
「あー……ううぅ……ようやく、静かになった……」
喘鳴の隙間にぼやくノクス。
なんとか質問に答えたものの、目を開くことすらしないところを見ると、相当つらいようだ。
「ごめんね? ゆっくりさせてあげたかったんだけど、あんなにノクスを心配してるみんなを追い出すのも可哀想で……」
「うう……大丈夫……」
ノクスはひらひらと手を振る。
まったくもう。
なんだかんだ、自分の領域に入れた存在には甘いんだから。
フィレオトールは眉を下げて微笑みながら、ノクスの汗を別のタオルで拭ってやる。
「じゃあ、僕はリビングにいるね? 定期的に様子を見に来るけど、何かあったら呼んで。体はつらいと思うけど、いつも働きすぎなんだし、どうせならゆっくり休んでね。」
今までは言われることの方が多かった言葉をかけて、ノクスの頭をひとなで。
特に返答は待たずに、足音を忍ばせてベッドを離れる。
「ううぅー…」
微かな声がした直後、ベッドが軋む音が耳朶を打つ。
次に、後ろからぎゅっとノクスにしがみつかれた。
「ノクス? どうしたの?」
この体勢では振り向くに振り向けないので、首だけを巡らせてノクスの様子を窺う。
「ここにいろ。」
「え…? でも……」
「いいから。」
離してなるものか、と。
フィレオトールにしがみつくノクスの腕に力がこもる。
「これ、お前には移らないんだろ…? だったら……今日はもう、どこにも行くな。」
そんな言葉が頭に響き渡った瞬間……
(何これ!? すっごく可愛い!!)
心臓がきゅーんと締め上げられたような心地になって、フィレオトールはわなわなと唇を震わせた。
顔は見えないけれど、すりすりと背中に頭を寄せてくるのが可愛いのなんの。
熱で弱っているせいもあってか、自分に離れていかれるのが心細いらしい。
「あの……ノクス……」
「……だめか?」
こちらの戸惑いをそういう風に受け取ってしまったのか、上目遣いでこちらを見つめたノクスが、しゅんと眉を下げてしまった。
「はう…っ」
ときめきを通り越し、心臓を撃ち抜かれたような衝撃が自分を襲う。
割と本気で心臓が止まるかと思った。
「……だめなわけないでしょ。」
なんとか動悸を静めたフィレオトールは、優しい手つきでノクスの髪の毛を梳く。
「どこにも行かないから、ベッドに戻ろう? とにかく、今は休まなきゃ。」
目を開く気力もないのに、自分を引き留めるために無理をしちゃって。
とにかく、早く寝かさなくちゃ。
ノクスの手を緩めて体ごと彼に向き直ったフィレオトールは、その体をそっと押して毛布の中に戻そうとする。
「わっ!?」
その刹那にノクスに腕を取られた結果、自分も一緒にベッドの上に引きずり込まれてしまった。
「もう……ノクス。添い寝してほしいならしてあげるから、とにかく横になって。」
「やだ……」
流れでノクスの脚に乗る形になってしまったフィレオトールが物申すも、ノクスは意地でもフィレオトールを離そうとしない。
「ずっと我慢してたんだから、少しくらいいいだろ…?」
再びこちらを抱く腕に力を込めて、胸に顔をうずめてくるノクス。
ここまでされたら、体調が悪いからと言って我慢させるのも可哀想になってくる。
早々に諦めたフィレオトールは、ノクスに抱き締められた体勢のまま、周囲の枕やクッションを掻き集めた。
ノクスが疲れた時にもたれかかれるように、それをノクスとヘッドボードの間に積み上げる。
「分かった。しばらくはこのままでいいけど、満足したらちゃんと横になってね。絶対に離れないから。」
「うん……」
自分の許可をもらえて安心したのか、今度の言葉には素直に頷いてくれる。
まるで、幼子に戻ってしまったかのようだ。
「もう、仕方ないなぁ……」
小さく息をつくフィレオトール。
しかしながら、その内心は穏やかではなかった。
(可愛い……可愛すぎるんですけど…っ)
丸くなったノクスがこんなにも可愛いなんて、反則レベルのギャップじゃないですか。
いつもは甘やかしてもらってばかりなので、甘えてもらえる立場がこそばゆい。
なんだか、とことん甘やかしてもっと愛でていたい気分。
(ノクスが悶絶してる時って、こんな気持ちだったのかな…?)
普段の自分の行いが特大ブーメランとなって返ってきて、少しだけノクスの気持ちが理解できたフィレオトールであった。
「なあ、フィル……」
「何?」
「今日さ、なんでずっとそわそわしてんの…?」
「……えっ!?」
「今だって、鼓動が心なしか早いぞ…。なんか、変に意識してないか…?」
「―――っ!!」
ド直球に指摘されたフィレオトールは、ぎくりと全身を強張らせる。
(だって……だって…っ)
途端に頬に熱が集まってくるようで、フィレオトールは視線を右に左にと泳がせる。
『だけど、もし少しでも早くよくなってほしいなら……』
全ての原因は、ジノンがこの先に続けた言葉にある。
あんなことを聞かされて意識するななんて、自分には絶対に無理だ。
「ご、ごめん…。不愉快……だったかな…?」
「んーん。」
ノクスは首を横に振って、フィレオトールの問いを否定。
「嫌じゃねぇけど……」
すっと。
熱で汗ばんだその指が、フィレオトールの唇をなぞる。
「そんな顔をされると、キスしたくなる。なんだか今日は……いつにも増して、美味そうに見えるんだ。」
「………っ」
大きく高鳴って、より早いテンポを刻み始める心臓。
うっすらと涙をまとった菫色の双眸に、何もかもを持っていかれるよう。
互いの唇が近付いて、息がかかって……
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