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第二章:海流に連れられてきたように
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気が付くと、空には太陽が輝いていた。いったいここはどこなんだろう。どうして私はこんなところにいるんだろう。
訳もわからず身体を起こそうとしたとき、肘と、それから足に痛みを感じた。痛む箇所を見ると、肘には乾ききらない血がついた傷跡が、そして足首は赤く腫れ上がっていた。
いったいどうして……。
何があったのか、必死に思い出そうとした私は、蛍を追いかけて森の中へと向かったこと、そしてそのまま崖下へと転落したことを思い出した。
どうりで身体のあちこちが痛いはずだ。……と、いうか落ちたのが確か午前2時過ぎ。今が太陽が昇っていると言うことは朝のはずなので、少なくとも翌日の朝、もしかしたらそれ以上も誰一人として私を見つけてくれなかったということだろうか……。そんな酷いことって……。
「あれ……?」
そこでようやく、私は辺りの景色がおかしいことに気が付いた。さっきまで私がいたのは山だったはず。なのに、目の前に広がっていたのは海だったのだ。足下には砂浜が広がっている。崖の下が海だった? そんなわけがない。あそこは山で高原だったのだから。では、ここはいったいどこなのだろう。
「あの……」
「え?」
「大丈夫ですか?」
ここがどこなのかわからず途方に暮れていた私に、誰かが声をかけた。少し低い、でも優しいその声に振り向くと、すぐそばに誰かが立っていた。
その誰かは、真っ白なシャツにズボン、それからロングのジャケットという海辺には似つかわしくない格好をしていた。この人は、この場所はいったい……。
「あ、あの……私、その……っ!」
慌てて立ち上がった私は、足の痛みに顔をしかめる。腫れているだけかと思ったけれど、思った以上に、痛い。
そんな私の様子を見ていたその人は持っていたジャケットを私にかけると、心配そうに声をかけてくれた。
「足、怪我してるんですか? 肘も、血が出てるじゃないですか。いったい何が……」
何が……? そんなの、私にも……。
「わからないんです……」
「わからないって……。……あなたは誰ですか? この島の人じゃない、ですよね」
「島……?」
言われた言葉の意味がわからない。島ってどいうこと?
そんな私の疑問なんて気にしていないようで、その人は私に近づいてくると肩に手をかけた。
「やっ……」
「動かないでください」
そう言われたかと思うと、私の視界が揺れた。落ちる、そう思ったときには、私の身体は宙に浮いていた。ううん、正しくは――抱き上げられていた。
「な、何を……」
「足、痛いんでしょう? 僕の家がすぐそこにあるので行きましょう」
「あ、あなた……いったい……」
「僕は相馬伊織。この島の住人です」
その人――伊織さんはそう言って微笑むと、私の身体をジャケットごと抱き上げたまま歩き出した。
訳もわからず身体を起こそうとしたとき、肘と、それから足に痛みを感じた。痛む箇所を見ると、肘には乾ききらない血がついた傷跡が、そして足首は赤く腫れ上がっていた。
いったいどうして……。
何があったのか、必死に思い出そうとした私は、蛍を追いかけて森の中へと向かったこと、そしてそのまま崖下へと転落したことを思い出した。
どうりで身体のあちこちが痛いはずだ。……と、いうか落ちたのが確か午前2時過ぎ。今が太陽が昇っていると言うことは朝のはずなので、少なくとも翌日の朝、もしかしたらそれ以上も誰一人として私を見つけてくれなかったということだろうか……。そんな酷いことって……。
「あれ……?」
そこでようやく、私は辺りの景色がおかしいことに気が付いた。さっきまで私がいたのは山だったはず。なのに、目の前に広がっていたのは海だったのだ。足下には砂浜が広がっている。崖の下が海だった? そんなわけがない。あそこは山で高原だったのだから。では、ここはいったいどこなのだろう。
「あの……」
「え?」
「大丈夫ですか?」
ここがどこなのかわからず途方に暮れていた私に、誰かが声をかけた。少し低い、でも優しいその声に振り向くと、すぐそばに誰かが立っていた。
その誰かは、真っ白なシャツにズボン、それからロングのジャケットという海辺には似つかわしくない格好をしていた。この人は、この場所はいったい……。
「あ、あの……私、その……っ!」
慌てて立ち上がった私は、足の痛みに顔をしかめる。腫れているだけかと思ったけれど、思った以上に、痛い。
そんな私の様子を見ていたその人は持っていたジャケットを私にかけると、心配そうに声をかけてくれた。
「足、怪我してるんですか? 肘も、血が出てるじゃないですか。いったい何が……」
何が……? そんなの、私にも……。
「わからないんです……」
「わからないって……。……あなたは誰ですか? この島の人じゃない、ですよね」
「島……?」
言われた言葉の意味がわからない。島ってどいうこと?
そんな私の疑問なんて気にしていないようで、その人は私に近づいてくると肩に手をかけた。
「やっ……」
「動かないでください」
そう言われたかと思うと、私の視界が揺れた。落ちる、そう思ったときには、私の身体は宙に浮いていた。ううん、正しくは――抱き上げられていた。
「な、何を……」
「足、痛いんでしょう? 僕の家がすぐそこにあるので行きましょう」
「あ、あなた……いったい……」
「僕は相馬伊織。この島の住人です」
その人――伊織さんはそう言って微笑むと、私の身体をジャケットごと抱き上げたまま歩き出した。
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