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第25話
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無事に天使長と悪魔長の和解、そして復縁を果たした今、この300年溜め込んだエネルギーを放出するかのように天使と悪魔の共存に向けて世界は猛スピードで動き出した。俺とエリオットは魔界と天界を行ったり来たりしながら慌ただしく過ごしている。
あの日、天使長と悪魔長の2人は随分と時間が経ってからルミナスタワーから降りてきた。
「お前らも、天使と悪魔の共存に向けてこき使うからな。私たちの手足となってしっかり働け」
そう言い放つ天使長だったが、悪魔長に抱き締められながら泣きはらした目で言われてもその威厳はもうどこにもない。ただ翌日から容赦なく仕事を振ってきたのは事実で、俺たちは天界と魔界の両方からメンバーが集められた「暁宵城復興チーム」に割り当てられた。
天使と悪魔の共存のシンボルとして、まずはもぬけの殻となってしまった暁宵城を復興する。天使長と悪魔長を始めとする数人が移り住み、暁宵城を天使と悪魔の話し合いが活発に行われる場として機能させる――そういった計画の元、全ての始まりの場として暁宵城は必要とされた。
作業は急ピッチで進み、会議室と並行して居住スペースの整備も整っていく。そしていよいよ今日は、俺とエリオットが暁宵城へと引っ越す日だった。
「感慨深いな。俺たちがこっそり会うのに使ってた暁宵城が、こうして住む場所になるなんて」
部屋に入れ込んだ荷物が半分ほど片付いた頃、ぽつりと感想が漏れる。
「何だかもう随分と前のことみたいだ。ここに手紙を隠して、週に一度少しの間だけ会って」
「今日から一緒に住めるんだな。なんだか夢みたいで、まだ実感がない」
するとエリオットが何かをごそごそと取り出して差し出す。が、手のひらの上には何も見えない。
「ほら、さっき下の部屋から回収してきたんだ。私たちにとっての思い出の品だろう?」
もしかしてと思い手のひらの上に手を伸ばすと、そこには数え切れないほど開け閉めをしたラザラスの細工が施された見えない箱の感触があった。
「……この箱も、どこかに飾ろう。俺たちを守り、導いてくれた思い出の品だ」
「あぁ、そうしよう」
箱を机の上に置いたエリオットが、今後は自分の荷物の中から鍵付きの大きな箱を取り出す。
「レヴァン、これ何だかわかる?」
「何が入ってるんだ?」
箱に近付くと、エリオットがカチャリと音を立てて鍵を開ける。すると、中に入っていたのは膨大な数の俺がエリオットに送った手紙だった。
「当然、持って来るに決まってる。これは全部、私の宝物だから」
一通選んで開いてみると、それは昔の自分が汚い字で一生懸命、不器用に綴った手紙だった。
「……こんなの、読めたもんじゃねぇな」
「そうかな? 天使1人が恋に落ちるには十分すぎたよ」
エリオットがこちらを見て笑う。
「ねぇ、レヴァンは? 私からの手紙は持ってきた?」
「当たり前だ。エリオットからもらった手紙は、1つ残らず全部持ってきた」
エリオットがくれた全ての文字が俺の活力になってくれた。そんな大切な手紙たちを置いてこれるわけがない。俺も同じように大きな箱に今までもらった全ての手紙をまとめていた。
「嬉しいな。そしたらたまに、昔のお互いの手紙読み返すの、やってみないか?」
「はぁ!? エリオットは別にいいかもしれねぇけど、俺は恥ずかしいって!」
「私だって恥ずかしいよ。最初の頃とか、やっぱり拙い手紙を書いてたなって思い返すし」
「……そんなことねぇだろ。エリオットの手紙は、最初からずっと綺麗だった」
「そしたらレヴァンの手紙も、最初から情熱的だったよ」
ひとしきり笑い合うと、お互いの視線が重なる。
「なぁ、天使と悪魔が共存できたらって約束、覚えてるか?」
「もちろん。忘れた日はない」
「……もう少し、部屋が片付いてからのほうがいい?」
「いや、今やろう。待ちきれないよ」
婚姻の証、魂の交換――それを踏み出すのに今日はうってつけだ。先程取り付けたばかりのカーテンの間から、あたたかい夕陽が差し込んでいる。お互いの胸に手を当てると、瞼を閉じて集中した。
深く深く、自分の1番奥まで、そう思いながら意識を沈めていく。俺の根源をエリオットに委ねたい、そして俺の根源にもエリオットのぬくもりがほしい。愛してる、ずっとずっと、愛している――そう強く念じた時、お互いの胸から宝石のような輝きを放つ魂が飛び出した。眩い光に包まれた空間は、息を呑むほどの静けさに溢れている。
「……久しぶりだな、こうやってお互いの魂を見るの」
「やっぱりレヴァンの魂は綺麗な赤色だ」
「エリオットの魂もすげぇ綺麗だ。水を閉じ込めたみたい」
お互い視線を合わせて微笑むと、不思議と声が重なる。
「愛する者と魂を結合する。尽きることのない永久の愛をここに誓おう」
すると2人の魂が半分に割れ、吸い寄せられるように相手の魂へと向かう。眩い光を放ちながら、繋ぎ目などなかったというほどにお互いの魂がぴたりと合わさり1つの塊となった。赤と水色の2色の塊となったお互いの魂は、音もなくそれぞれの胸元に吸い込まれていく。
「終わった……のか」
「そうみたいだ」
胸に手を当てると、これまでとは何か違うあたたかさを感じた。自分の血液や臓器だけではない何か異なるものが身体の奥にある。でもそれは異物感を生むのではなく、湧き上がる泉のように愛を届ける優しい光。エリオットの魂が俺の中にある――そう実感した時、目頭に熱いものが込み上げてきた。
「レヴァン、ほら、泣かないで」
頬を伝う熱い涙を、エリオットの指が優しく拭う。
「エリオット」
「どうしたの?」
「……大好きだ。本当に、ずっとずっと大好きだ」
「うん、知ってる。それに私の中にある君の魂を、それを懸命に教えてくれている。私も、レヴァンを心から愛しているよ」
お互いの身体をきつく抱き締めながら、同時に自分の中に宿る相手の魂を感じる。やっと結べた婚姻の証の余韻に浸りながら、空に月が昇るまで静かに喜びを分かち合っていた。
あの日、天使長と悪魔長の2人は随分と時間が経ってからルミナスタワーから降りてきた。
「お前らも、天使と悪魔の共存に向けてこき使うからな。私たちの手足となってしっかり働け」
そう言い放つ天使長だったが、悪魔長に抱き締められながら泣きはらした目で言われてもその威厳はもうどこにもない。ただ翌日から容赦なく仕事を振ってきたのは事実で、俺たちは天界と魔界の両方からメンバーが集められた「暁宵城復興チーム」に割り当てられた。
天使と悪魔の共存のシンボルとして、まずはもぬけの殻となってしまった暁宵城を復興する。天使長と悪魔長を始めとする数人が移り住み、暁宵城を天使と悪魔の話し合いが活発に行われる場として機能させる――そういった計画の元、全ての始まりの場として暁宵城は必要とされた。
作業は急ピッチで進み、会議室と並行して居住スペースの整備も整っていく。そしていよいよ今日は、俺とエリオットが暁宵城へと引っ越す日だった。
「感慨深いな。俺たちがこっそり会うのに使ってた暁宵城が、こうして住む場所になるなんて」
部屋に入れ込んだ荷物が半分ほど片付いた頃、ぽつりと感想が漏れる。
「何だかもう随分と前のことみたいだ。ここに手紙を隠して、週に一度少しの間だけ会って」
「今日から一緒に住めるんだな。なんだか夢みたいで、まだ実感がない」
するとエリオットが何かをごそごそと取り出して差し出す。が、手のひらの上には何も見えない。
「ほら、さっき下の部屋から回収してきたんだ。私たちにとっての思い出の品だろう?」
もしかしてと思い手のひらの上に手を伸ばすと、そこには数え切れないほど開け閉めをしたラザラスの細工が施された見えない箱の感触があった。
「……この箱も、どこかに飾ろう。俺たちを守り、導いてくれた思い出の品だ」
「あぁ、そうしよう」
箱を机の上に置いたエリオットが、今後は自分の荷物の中から鍵付きの大きな箱を取り出す。
「レヴァン、これ何だかわかる?」
「何が入ってるんだ?」
箱に近付くと、エリオットがカチャリと音を立てて鍵を開ける。すると、中に入っていたのは膨大な数の俺がエリオットに送った手紙だった。
「当然、持って来るに決まってる。これは全部、私の宝物だから」
一通選んで開いてみると、それは昔の自分が汚い字で一生懸命、不器用に綴った手紙だった。
「……こんなの、読めたもんじゃねぇな」
「そうかな? 天使1人が恋に落ちるには十分すぎたよ」
エリオットがこちらを見て笑う。
「ねぇ、レヴァンは? 私からの手紙は持ってきた?」
「当たり前だ。エリオットからもらった手紙は、1つ残らず全部持ってきた」
エリオットがくれた全ての文字が俺の活力になってくれた。そんな大切な手紙たちを置いてこれるわけがない。俺も同じように大きな箱に今までもらった全ての手紙をまとめていた。
「嬉しいな。そしたらたまに、昔のお互いの手紙読み返すの、やってみないか?」
「はぁ!? エリオットは別にいいかもしれねぇけど、俺は恥ずかしいって!」
「私だって恥ずかしいよ。最初の頃とか、やっぱり拙い手紙を書いてたなって思い返すし」
「……そんなことねぇだろ。エリオットの手紙は、最初からずっと綺麗だった」
「そしたらレヴァンの手紙も、最初から情熱的だったよ」
ひとしきり笑い合うと、お互いの視線が重なる。
「なぁ、天使と悪魔が共存できたらって約束、覚えてるか?」
「もちろん。忘れた日はない」
「……もう少し、部屋が片付いてからのほうがいい?」
「いや、今やろう。待ちきれないよ」
婚姻の証、魂の交換――それを踏み出すのに今日はうってつけだ。先程取り付けたばかりのカーテンの間から、あたたかい夕陽が差し込んでいる。お互いの胸に手を当てると、瞼を閉じて集中した。
深く深く、自分の1番奥まで、そう思いながら意識を沈めていく。俺の根源をエリオットに委ねたい、そして俺の根源にもエリオットのぬくもりがほしい。愛してる、ずっとずっと、愛している――そう強く念じた時、お互いの胸から宝石のような輝きを放つ魂が飛び出した。眩い光に包まれた空間は、息を呑むほどの静けさに溢れている。
「……久しぶりだな、こうやってお互いの魂を見るの」
「やっぱりレヴァンの魂は綺麗な赤色だ」
「エリオットの魂もすげぇ綺麗だ。水を閉じ込めたみたい」
お互い視線を合わせて微笑むと、不思議と声が重なる。
「愛する者と魂を結合する。尽きることのない永久の愛をここに誓おう」
すると2人の魂が半分に割れ、吸い寄せられるように相手の魂へと向かう。眩い光を放ちながら、繋ぎ目などなかったというほどにお互いの魂がぴたりと合わさり1つの塊となった。赤と水色の2色の塊となったお互いの魂は、音もなくそれぞれの胸元に吸い込まれていく。
「終わった……のか」
「そうみたいだ」
胸に手を当てると、これまでとは何か違うあたたかさを感じた。自分の血液や臓器だけではない何か異なるものが身体の奥にある。でもそれは異物感を生むのではなく、湧き上がる泉のように愛を届ける優しい光。エリオットの魂が俺の中にある――そう実感した時、目頭に熱いものが込み上げてきた。
「レヴァン、ほら、泣かないで」
頬を伝う熱い涙を、エリオットの指が優しく拭う。
「エリオット」
「どうしたの?」
「……大好きだ。本当に、ずっとずっと大好きだ」
「うん、知ってる。それに私の中にある君の魂を、それを懸命に教えてくれている。私も、レヴァンを心から愛しているよ」
お互いの身体をきつく抱き締めながら、同時に自分の中に宿る相手の魂を感じる。やっと結べた婚姻の証の余韻に浸りながら、空に月が昇るまで静かに喜びを分かち合っていた。
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