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さらにその日から1ヶ月後、ユアンたちと、叔父たちの結婚式の日になった。妃の二人は同じドレス…青に金糸の刺繍が入った、シンプルながらも最高級のドレスだった。打ち合わせの際に手触りまで確認したのに、身に付けたアマンダとサーシャには雲泥の差があった。
サーシャが姿を現したとたん、会場は感嘆の声に包まれた。ホウッ、とため息を洩らす女性たちと、見惚れる男性たち。
「なんて美しいのかしら…素敵ねぇ」
「王弟殿下がことのほかサーシャ様を大事にされていらっしゃるから…愛情がさらにサーシャ様を美しく見せているのね…羨ましいわ」
叔父はいつもの穏やかな顔で、サーシャに誓いの口づけをしたあと、ユアンを見て、ふ、と目を細め嗤った。
「ユアン様…、ユアン様っ!!」
「…アマンダ」
叔父に気を取られたユアンは、アマンダに腕を掴まれようやく我に返った。
「次は私たちの番なんですよ!しっかりしてください!」
もう、と頬を膨らませたアマンダは、可愛らしくはあった。あったのだが、いまこの場所に相応しい態度ではない。
しかしそれをわざわざ指摘して、ここでアマンダの機嫌を悪くするほど、ユアンは愚かではなかった。何より機嫌をとるのが面倒でしかたなかった。学園にいたときはあんなに可愛く、なんでも聞いてやりたかったのに。機嫌をとること自体、幸せなことだったのに。
サーシャが姿を現したとたん、会場は感嘆の声に包まれた。ホウッ、とため息を洩らす女性たちと、見惚れる男性たち。
「なんて美しいのかしら…素敵ねぇ」
「王弟殿下がことのほかサーシャ様を大事にされていらっしゃるから…愛情がさらにサーシャ様を美しく見せているのね…羨ましいわ」
叔父はいつもの穏やかな顔で、サーシャに誓いの口づけをしたあと、ユアンを見て、ふ、と目を細め嗤った。
「ユアン様…、ユアン様っ!!」
「…アマンダ」
叔父に気を取られたユアンは、アマンダに腕を掴まれようやく我に返った。
「次は私たちの番なんですよ!しっかりしてください!」
もう、と頬を膨らませたアマンダは、可愛らしくはあった。あったのだが、いまこの場所に相応しい態度ではない。
しかしそれをわざわざ指摘して、ここでアマンダの機嫌を悪くするほど、ユアンは愚かではなかった。何より機嫌をとるのが面倒でしかたなかった。学園にいたときはあんなに可愛く、なんでも聞いてやりたかったのに。機嫌をとること自体、幸せなことだったのに。
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