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番外編~結婚生活編
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城に着くと、英樹さんと早苗さんが出迎えてくれた。双子王子を紹介する。
「来年、お世話になります」
「留学先にうちを選んでいただけるなんて光栄です。ぜひ実りある留学生活にしてください。各州に専門学校がありますが、おふたりは何を学びたいのですか?」
双子王子は顔を見合わせると、
「ソルマーレ国とは直接関係ありませんが…、僕たちは、兄上にかけられていたトゥランクメント族の呪【シュ】について研究したいと考えております」
英樹さんは「ほお…」と目を細めると、
「それはなぜですか?」
と聞いたのだが、早苗さんに「あなた、着いたばかりでお疲れなのよ。今夜、食事の時間にでもゆっくりお話したらいいじゃないの」と咎められ、しゅんとしていた。
早苗さんが案内してくれたのは、3階の客間だった。
「みんな知事宮に移ってしまったから、帰ってきたときに使える客間として少し手を入れたんです。1人一部屋で準備してありますので、足りないものがあったら遠慮なく仰ってくださいね」
そう言ってニコッとすると、双子王子に向かって、
「あなた方の義理のお姉さん、ソフィアさんのお陰で、ジャポン皇国は救われたのです。恩返しになるかわかりませんが、おふたりの留学期間中の経費はすべてこちらで持ちますので、たくさん学んでくださいね」
と言った。
「え、そんな、」
「それでも足りないくらいなのよ、ソフィアさん!蘇芳、羅刹、織部、朝霧、4人ともこうして幸せに生活できてるのは貴女のお陰なんだから。本当にありがとう。感謝しかないのよ」
瞳を潤ませる早苗さんを見て、私も胸が熱くなる。あの鬼畜…上総のことも、まだ割りきれたわけではないだろう。お腹を痛めて産んだ子どもなのだから。でも、そういう…清濁併せ呑む強さを持って、早苗さんは皇后として立っているのだ。
「ソルマーレ国の義父が、なんていうかわかりませんが、…ありがたいお言葉です」
双子王子も、「ありがとうございます」と頭を下げた。
18時に夕飯だと言われたので、それまでは部屋でのんびりすることにする。懐かしいな、なんて思いながら荷物を解き始めたら、…大量の、便箋が出てきた。一番上には封筒が載っている。かなり分厚い。イヤな予感しかない。
恐々開くと、やっぱり悪魔からの手紙だった。いつ入れられたんだろうか。
『 わたくしの大切な大切なフィーへ
無事にジャポン皇国に着きましたか。どこか痛いところはないですか。きちんと眠れましたか。わたくしはフィーが隣にいないので、思うように眠れないと思います。フィーのおっぱいを触りながら眠りたい。眠れるかどうかはまた別の話ですが、わたくしのおっぱいは、いえ、間違えました、わたくしのフィーのおっぱいはすべてすべてわたくしのものです。絶対に誰にも触らせたりいわんや見せたりしないでください。お願いします。そんなことになったらと思うだけで頭がおかしくなりそうです』
パタリ、と閉じて封筒にしまうことにした。頭がおかしくなりそうです、ではなく、もうすでに頭がおかしくなっているのではないかと思う。この調子で続くであろう手紙を…しかも改行していないのにこんなに分厚いこの手紙を読まなくてはならないなんて、なんの拷問なのか。悪魔は私に罰ゲームをさせたいのだろうか。
どれだけおっぱいが好きなのかな、あの悪魔は。
呪いの手紙をカバンに押し込めていると、ドアがノックされた。
「はい」
ドアを開けると、織部さんが立っていた。織部さんはニカッと笑うと、
「陛下に承認してもらえたから、ソフィアさんさえよければ『言われた通りに出しちゃうもん』からさっそく出してみようぜ」
この兄弟はほんとに仕事が早い。
歩きながら織部さんは、
「陛下に話したら『わたくしも早苗に着せたい』って恍惚とした顔で呟いてたよ。さっきソフィアさん、カタログって言ってたけど、こっちで仕入れるのにそういう見本みたいな冊子があるといいな」
「そうですね…一番は、モデルさんが着てくれるといいんですけど。ただの下着を見るより、どんなふうなのかイメージがつきやすいでしょうから。でも、あんまり卑猥なのはダメですよ、それは下着だけでいいと思います」
「ソルマーレ国は印刷技術はどうなんだ?」
「本も出版されてますし、カラーでも…ただ、写真はないです」
「写真…そのままを写す、ってことだろ?ジャポン皇国もないな、それは」
どうしたものかと考えながら『言われた通りに出しちゃうもん』の前に立ち、…
「そうだ、この機械からデジカメとプリンターを出せば、それを元に印刷できます!」
織部さんの頭の上にはハテナマークが飛びかっている。聞いたことのない言葉だから仕方ない。
「とりあえずまずは…『女性用の下着のカタログ』」
ドアを開けると、異なる会社のカタログが5冊入っていた。
織部さんは手に取りパラパラ捲ると、
「これ、一個ずつ名前があるんだな」
と感心したように言った。
「そうなんです。この前織部さんが出してくれたのはベビードールって言うんですけど…」
織部さんは紐…完全に紐でしかない下着を見て、
「これは何て言うか…裸よりも、やらしい感じがするな」
と言った。
「そうですか…?」
「うん。全裸よりも、なんか…そそられるものがある」
私からすればただの裸にしか見えないけど、男性の目から見ると違うのだろうか。双子王子にも見てもらおう。
実際に付いている名前で実物の下着も何種類か出し、モデルさんが実際に着ている雑誌も何冊か出してみた。
「あのふたりに見せてみて、あしたにでもギデオンさんに送るといいよ」
…ちょっと、刺激が強すぎるように思うが、双子王子の希望だから仕方がない。王妃様に怒られたらどうしよう…。
「来年、お世話になります」
「留学先にうちを選んでいただけるなんて光栄です。ぜひ実りある留学生活にしてください。各州に専門学校がありますが、おふたりは何を学びたいのですか?」
双子王子は顔を見合わせると、
「ソルマーレ国とは直接関係ありませんが…、僕たちは、兄上にかけられていたトゥランクメント族の呪【シュ】について研究したいと考えております」
英樹さんは「ほお…」と目を細めると、
「それはなぜですか?」
と聞いたのだが、早苗さんに「あなた、着いたばかりでお疲れなのよ。今夜、食事の時間にでもゆっくりお話したらいいじゃないの」と咎められ、しゅんとしていた。
早苗さんが案内してくれたのは、3階の客間だった。
「みんな知事宮に移ってしまったから、帰ってきたときに使える客間として少し手を入れたんです。1人一部屋で準備してありますので、足りないものがあったら遠慮なく仰ってくださいね」
そう言ってニコッとすると、双子王子に向かって、
「あなた方の義理のお姉さん、ソフィアさんのお陰で、ジャポン皇国は救われたのです。恩返しになるかわかりませんが、おふたりの留学期間中の経費はすべてこちらで持ちますので、たくさん学んでくださいね」
と言った。
「え、そんな、」
「それでも足りないくらいなのよ、ソフィアさん!蘇芳、羅刹、織部、朝霧、4人ともこうして幸せに生活できてるのは貴女のお陰なんだから。本当にありがとう。感謝しかないのよ」
瞳を潤ませる早苗さんを見て、私も胸が熱くなる。あの鬼畜…上総のことも、まだ割りきれたわけではないだろう。お腹を痛めて産んだ子どもなのだから。でも、そういう…清濁併せ呑む強さを持って、早苗さんは皇后として立っているのだ。
「ソルマーレ国の義父が、なんていうかわかりませんが、…ありがたいお言葉です」
双子王子も、「ありがとうございます」と頭を下げた。
18時に夕飯だと言われたので、それまでは部屋でのんびりすることにする。懐かしいな、なんて思いながら荷物を解き始めたら、…大量の、便箋が出てきた。一番上には封筒が載っている。かなり分厚い。イヤな予感しかない。
恐々開くと、やっぱり悪魔からの手紙だった。いつ入れられたんだろうか。
『 わたくしの大切な大切なフィーへ
無事にジャポン皇国に着きましたか。どこか痛いところはないですか。きちんと眠れましたか。わたくしはフィーが隣にいないので、思うように眠れないと思います。フィーのおっぱいを触りながら眠りたい。眠れるかどうかはまた別の話ですが、わたくしのおっぱいは、いえ、間違えました、わたくしのフィーのおっぱいはすべてすべてわたくしのものです。絶対に誰にも触らせたりいわんや見せたりしないでください。お願いします。そんなことになったらと思うだけで頭がおかしくなりそうです』
パタリ、と閉じて封筒にしまうことにした。頭がおかしくなりそうです、ではなく、もうすでに頭がおかしくなっているのではないかと思う。この調子で続くであろう手紙を…しかも改行していないのにこんなに分厚いこの手紙を読まなくてはならないなんて、なんの拷問なのか。悪魔は私に罰ゲームをさせたいのだろうか。
どれだけおっぱいが好きなのかな、あの悪魔は。
呪いの手紙をカバンに押し込めていると、ドアがノックされた。
「はい」
ドアを開けると、織部さんが立っていた。織部さんはニカッと笑うと、
「陛下に承認してもらえたから、ソフィアさんさえよければ『言われた通りに出しちゃうもん』からさっそく出してみようぜ」
この兄弟はほんとに仕事が早い。
歩きながら織部さんは、
「陛下に話したら『わたくしも早苗に着せたい』って恍惚とした顔で呟いてたよ。さっきソフィアさん、カタログって言ってたけど、こっちで仕入れるのにそういう見本みたいな冊子があるといいな」
「そうですね…一番は、モデルさんが着てくれるといいんですけど。ただの下着を見るより、どんなふうなのかイメージがつきやすいでしょうから。でも、あんまり卑猥なのはダメですよ、それは下着だけでいいと思います」
「ソルマーレ国は印刷技術はどうなんだ?」
「本も出版されてますし、カラーでも…ただ、写真はないです」
「写真…そのままを写す、ってことだろ?ジャポン皇国もないな、それは」
どうしたものかと考えながら『言われた通りに出しちゃうもん』の前に立ち、…
「そうだ、この機械からデジカメとプリンターを出せば、それを元に印刷できます!」
織部さんの頭の上にはハテナマークが飛びかっている。聞いたことのない言葉だから仕方ない。
「とりあえずまずは…『女性用の下着のカタログ』」
ドアを開けると、異なる会社のカタログが5冊入っていた。
織部さんは手に取りパラパラ捲ると、
「これ、一個ずつ名前があるんだな」
と感心したように言った。
「そうなんです。この前織部さんが出してくれたのはベビードールって言うんですけど…」
織部さんは紐…完全に紐でしかない下着を見て、
「これは何て言うか…裸よりも、やらしい感じがするな」
と言った。
「そうですか…?」
「うん。全裸よりも、なんか…そそられるものがある」
私からすればただの裸にしか見えないけど、男性の目から見ると違うのだろうか。双子王子にも見てもらおう。
実際に付いている名前で実物の下着も何種類か出し、モデルさんが実際に着ている雑誌も何冊か出してみた。
「あのふたりに見せてみて、あしたにでもギデオンさんに送るといいよ」
…ちょっと、刺激が強すぎるように思うが、双子王子の希望だから仕方がない。王妃様に怒られたらどうしよう…。
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