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番外編~結婚生活編
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「フィー!」
突然のことにまったく反応ができず呆然と立ち尽くす私を、悪魔はギュウッと抱き締めた。
「ギデオンさん…?なんでいるの…?」
「フィー、愛してます」
「…え?」
悪魔は私を横抱きにすると、チュッ、と口づけた。離れた顔は、瞳が潤んでいる。
「結婚式の日程については、その、言い訳にしかならないと思いますが、ディーン、ゼインとアミノフィア国への留学の話をしていたときに、ふたりが参加するにはジャポン皇国に留学する前のほうがいいだろうと思って…留学中に、わざわざ帰国させるよりも集中して取り組めるほうがいいだろうと。…それでも、わたくしが勝手に決めたことに間違いはありませんよね。すみません、フィー、」
「ギデオンさん、私は、ギデオンさんの妻でいていいのかな」
こんな聞き方をするのは卑怯だ。それはわかってる。だけど、不安で、寂しくて、気づいたらボロボロ涙が零れていた。
「私、なんにもわからない。ギデオンさんのこと、なんにも知らない。王子様だ、って知らなかったのに、結婚しちゃって、なんにも、なんにもできないのに、妃でいるなんて、」
「フィー、なんにもできないなんてない!フィーは、わたくしをこんなに幸せにしてくれているんですよ!なんにもわからなくたっていい、」
「良くない!ギデオンさんは将来ソルマーレ国の国王になるんだよ、それなのに、妃の私がなんにもできなかったら、守られるだけで、足を引っ張るだけじゃない!」
悪魔は驚いたような顔になると、その後なぜか、ふ、と微笑んだ。
「フィーは、わたくしのことを考えてくれているのですね。わたくしの立場を考えて、…あのね、フィー。フィーは、あの時アネットさんが連れて行ってしまったので父上の話を聞いていないけど、わたくしの母も、なんにも知らないで…言葉が悪いですが、ある意味父上に騙されて結婚したのですよ」
…騙されて?
「父上は、アミノフィア国から留学してきた母上に一目惚れしたんです。父上はあの通り型破りな方で、勉強は済んでるし有力貴族の子息は押さえてあるから別に交流の必要もないと学園にも通っていなくて、たまたま王宮主催の夜会に出席した留学生の中から母を見初めた。父上が学園に通っていなかったから、母は父上がソルマーレ国の王太子とは知らなかったそうで…声を掛けられた時は、貴族子息らしからぬ不良子息、と思っていたそうです。留学生なら後腐れない、ただ遊びたいんだろうと相手にしなかったそうですが、見た目に似合わない真摯な態度で何度も何度も口説かれて、かといって、触れることすらしてこない。いつの間にか、父上を信頼し、好きになっていたそうです。母も、父上が王太子だなんて知りもしなかったし、結婚する、と頷いて初めてわかったそうです。妃教育なんてもちろん受けて来なかったし、王宮に入ってから、勉強を重ねたそうです。…すぐになんて、できるわけがないんです、フィー。今すべてわからなくていいんです。わたくしがお手伝いします、わたくしが一緒に頑張ります、だから、足を引っ張るだなんて…そんな、そんなこと言わないでください!」
悪魔にギュウッと抱きしめられる。
「…なんで、いるの?」
「ディーンとゼインが、撫子さんと共に来て、その、…怒鳴り付けられまして」
怒鳴り付けた…?あのふたりが…?
「『兄上は、ソフィア様をなんだと思っているのですか!』って…。大事なことをきちんと話すこともせず、兄上にとってソフィア様は性交させてくれる都合のいい人形ですか、って。…そんなふうに、思わせてしまいましたか、フィー。わたくしは、フィーを、たしかに、たしかにいつでも抱きたいと思っています、けど、自分の欲を発散するためではありません。フィーだから、抱き合いたい、フィーだから、性交したいんです。…フィーが、わたくしを信用ならないのであれば、信用してもらえるまで性交は我慢します。わたくしは、フィーと性交したいから結婚したわけではないんです」
確かに、エッチがしたいために私を好きになったのかも、って考えたときもあったけど、性交して呪いが解けても悪魔は私を好きだといい、結婚した。悪魔が私を好きでいてくれる気持ちに今はなんの疑いもない。ただ、私でいいのか、という変な負い目というか…自信がないから、こういう不安に苛まれるのだと思う。
「父上はあんなこと言っていましたが、ご自分だって国王になったのは遅かったんですよ。まだまだ譲位なんてさせませんし、心配しなくて大丈夫ですから。フィーは、足を引っ張ると言いましたが、わたくしにたくさん頼ってくれませんか。わたくしだって、フィーのおかげで下着文化を発展させたいと考えついたわけですし、フィーがいるから、ソルマーレ国を守りたいと思えるようになったのです。フィーは、わたくしを支えてくれているのですよ。わたくしを幸せにしてくれているから、その幸せを他の方々にも味わって欲しくて、より頑張ることができるんですよ。…うまく、伝わっていますか、フィー。わたくしの、気持ち、伝わっていますか?」
悪魔はもう一度チュッ、とすると、「フィー、好きです、愛してます」と耳元で何度も何度も囁いた。
突然のことにまったく反応ができず呆然と立ち尽くす私を、悪魔はギュウッと抱き締めた。
「ギデオンさん…?なんでいるの…?」
「フィー、愛してます」
「…え?」
悪魔は私を横抱きにすると、チュッ、と口づけた。離れた顔は、瞳が潤んでいる。
「結婚式の日程については、その、言い訳にしかならないと思いますが、ディーン、ゼインとアミノフィア国への留学の話をしていたときに、ふたりが参加するにはジャポン皇国に留学する前のほうがいいだろうと思って…留学中に、わざわざ帰国させるよりも集中して取り組めるほうがいいだろうと。…それでも、わたくしが勝手に決めたことに間違いはありませんよね。すみません、フィー、」
「ギデオンさん、私は、ギデオンさんの妻でいていいのかな」
こんな聞き方をするのは卑怯だ。それはわかってる。だけど、不安で、寂しくて、気づいたらボロボロ涙が零れていた。
「私、なんにもわからない。ギデオンさんのこと、なんにも知らない。王子様だ、って知らなかったのに、結婚しちゃって、なんにも、なんにもできないのに、妃でいるなんて、」
「フィー、なんにもできないなんてない!フィーは、わたくしをこんなに幸せにしてくれているんですよ!なんにもわからなくたっていい、」
「良くない!ギデオンさんは将来ソルマーレ国の国王になるんだよ、それなのに、妃の私がなんにもできなかったら、守られるだけで、足を引っ張るだけじゃない!」
悪魔は驚いたような顔になると、その後なぜか、ふ、と微笑んだ。
「フィーは、わたくしのことを考えてくれているのですね。わたくしの立場を考えて、…あのね、フィー。フィーは、あの時アネットさんが連れて行ってしまったので父上の話を聞いていないけど、わたくしの母も、なんにも知らないで…言葉が悪いですが、ある意味父上に騙されて結婚したのですよ」
…騙されて?
「父上は、アミノフィア国から留学してきた母上に一目惚れしたんです。父上はあの通り型破りな方で、勉強は済んでるし有力貴族の子息は押さえてあるから別に交流の必要もないと学園にも通っていなくて、たまたま王宮主催の夜会に出席した留学生の中から母を見初めた。父上が学園に通っていなかったから、母は父上がソルマーレ国の王太子とは知らなかったそうで…声を掛けられた時は、貴族子息らしからぬ不良子息、と思っていたそうです。留学生なら後腐れない、ただ遊びたいんだろうと相手にしなかったそうですが、見た目に似合わない真摯な態度で何度も何度も口説かれて、かといって、触れることすらしてこない。いつの間にか、父上を信頼し、好きになっていたそうです。母も、父上が王太子だなんて知りもしなかったし、結婚する、と頷いて初めてわかったそうです。妃教育なんてもちろん受けて来なかったし、王宮に入ってから、勉強を重ねたそうです。…すぐになんて、できるわけがないんです、フィー。今すべてわからなくていいんです。わたくしがお手伝いします、わたくしが一緒に頑張ります、だから、足を引っ張るだなんて…そんな、そんなこと言わないでください!」
悪魔にギュウッと抱きしめられる。
「…なんで、いるの?」
「ディーンとゼインが、撫子さんと共に来て、その、…怒鳴り付けられまして」
怒鳴り付けた…?あのふたりが…?
「『兄上は、ソフィア様をなんだと思っているのですか!』って…。大事なことをきちんと話すこともせず、兄上にとってソフィア様は性交させてくれる都合のいい人形ですか、って。…そんなふうに、思わせてしまいましたか、フィー。わたくしは、フィーを、たしかに、たしかにいつでも抱きたいと思っています、けど、自分の欲を発散するためではありません。フィーだから、抱き合いたい、フィーだから、性交したいんです。…フィーが、わたくしを信用ならないのであれば、信用してもらえるまで性交は我慢します。わたくしは、フィーと性交したいから結婚したわけではないんです」
確かに、エッチがしたいために私を好きになったのかも、って考えたときもあったけど、性交して呪いが解けても悪魔は私を好きだといい、結婚した。悪魔が私を好きでいてくれる気持ちに今はなんの疑いもない。ただ、私でいいのか、という変な負い目というか…自信がないから、こういう不安に苛まれるのだと思う。
「父上はあんなこと言っていましたが、ご自分だって国王になったのは遅かったんですよ。まだまだ譲位なんてさせませんし、心配しなくて大丈夫ですから。フィーは、足を引っ張ると言いましたが、わたくしにたくさん頼ってくれませんか。わたくしだって、フィーのおかげで下着文化を発展させたいと考えついたわけですし、フィーがいるから、ソルマーレ国を守りたいと思えるようになったのです。フィーは、わたくしを支えてくれているのですよ。わたくしを幸せにしてくれているから、その幸せを他の方々にも味わって欲しくて、より頑張ることができるんですよ。…うまく、伝わっていますか、フィー。わたくしの、気持ち、伝わっていますか?」
悪魔はもう一度チュッ、とすると、「フィー、好きです、愛してます」と耳元で何度も何度も囁いた。
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