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番外編~結婚生活編
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すっかり寝入ってしまい、気付いたら夕方だった。どれだけ寝れるんだ、私。
「あたしと一緒に寝たから安心してぐっすり眠っちゃったんでしょ☆可愛い、ソフィアちゃん!こんなにあたしに心を許してくれるなんてぇ」
…要は警戒心がなさすぎだよね。これで龍彦さんが悪意を持ってたりしたら、私は今頃この世にいないのだ。それでなくてもいくらお姉様の見た目とは言え、女の子相手に勃たないとは言え、龍彦さんは男性なのに。警護のために一緒に寝ました、なんて悪魔にバレたら大変なことに…あれ。そう言えば龍彦さん、「一緒に寝ましょ」発言してた、悪魔の前で…。どうしよう。
とは言え、ごまかすのはイヤだし、事実を述べるしかないけど、これって浮気になるのかな。
なんとなく落ち込んでいると、
「ソフィアちゃん、さっさと準備してぇ?雄輔の店に行くわよぅ!お腹ペッコペコなんだからぁ!」
当の原因はまったく気にしていないようだ。まあ、「ネコちゃんしか愛してない」わけだから、私なんてペット…やっぱり悪魔とおんなじ感覚なのかなぁ?方向性は異なるにせよ、ドSだから?
龍彦さんに連れられて特別区をテクテク歩く。
「こういう場所を作ってもらったおかげで、楽しみが増えたわぁ~。あたしはネコちゃん一筋だけどぉ、アバンチュールを見るのも楽しいじゃない~?仕事の疲れもぶっ飛ぶわよぅ」
アバンチュールか…確かに萌える。できることならどこかお店の…さらに言えば宿の壁にでもなって、それを拝見したい。
佐々木さんのお店はそれなりのお客さんで埋まっていた。席があるかな、と見回していると、
「あ、ソフィアさん、いらっしゃい!昨日はありがとね、ロイドさんも感謝してたよ。龍彦、陣内さんもう来てる。奥の座敷に通したから。ビールでいいか?」
「うん、2杯持ってきてぇ!昨日飲めなかったぶん、今日はバンバン飲むわよぅ~!蘇芳ちゃんに請求回してね☆」
いつも飲んでるだろうが、と佐々木さんは言って、「ソフィアさんには冷茶持っていくね」とニコッとしてくれた。元気そうでよかった。昨日は憔悴してたもんね…。大切なロイドさんが拐われたりしたんだから当然だけど。キスマークなんか付けられちゃったけど、それ以上酷いことがなくて良かった。
通された部屋には、龍彦さんよりさらにデカイ男性がひとり座ってビールを飲んでいた。龍彦さんを見ると厳つい顔がホニャリと弛む。
「龍彦、お疲れ様」
「ネコちゃんもお疲れ様!早かったわねぇ。ソフィアちゃん、こちらがあたしのネコちゃん、陣内雷よ」
陣内さんはサッと立ち上がると、私の前で片膝をついて頭を下げた。
「昨夜はご挨拶もできず申し訳ございません。ソルマーレ国王太子妃、ソフィア様ですね。私はジャポン皇国玄武州警備部所属、陣内雷と申します。陣内、とお呼びください」
…こんな見るからにドSな感じの美丈夫がまさかのドM…世の中わからないものである。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
龍彦さんと共に腰を降ろすと佐々木さんが飲み物を持ってきてくれた。その後ろにいたスタッフの方が料理も持ってきてくれる。
「雄輔、あたしご飯物が食べたいのよぅ。オススメはなぁに?」
「酒飲みながら並行して飯食うのかよ…じゃ、海鮮丼作ってきてやる」
「大盛ね!ネコちゃんとソフィアちゃんは?」
陣内さんは軽く首を横に振る。私は、
「佐々木さん、あれば焼おにぎりが食べたいです」
「オッケー。じゃ、ちょっと待っててね」
佐々木さんが出て行くと、陣内さんが
「ソフィア様は、白虎州に行かれるとか」
「はい。白虎州知事の奥様が妊娠されて、様子を見に行きたくて」
陣内さんはひとつ頷くと、
「龍彦も一緒に行くんだろ?」
と龍彦さんに視線を移した。
「そうよぉ、蘇芳ちゃん直々の依頼だからねぇ」
あ、そうか。潜入捜査とやらでふたりは会えなかったのに、龍彦さんが私と行っちゃったらまた会えなくなっちゃうんだ。なんか、恋人を引き裂いてるみたいで、お邪魔虫だな、私。
「あの、なるべく早く戻ってもらいます。伽藍さんの体調を知りたい…顔を見たいだけなので、そんなにかからないと思います」
一瞬キョトンとした陣内さんは、その後ブハ、と吹き出した。
「話には聞いてたけど、ソフィア様はほんと王族らしくないんだねぇ。タイトレア国の王女様なんて、すんげえ高飛車女だぜ」
「私は王族って言っても、たまたまそうなっただけなので」
「まぁ、ふつうはこんな店に食事になんてこないわよぅ」
「こんな店で悪かったな」
料理を手に入ってきた佐々木さんに、
「バカねぇ、王族が、って言ってんでしょ!あんたの店は最高よ。じゃなかったら来るわけないでしょうが」
佐々木さんはほんのり嬉しそうな顔をすると、
「はい、ソフィアさん。焼おにぎりふたつ、ひとつはこのあんかけで食べてみて。あと、味噌汁ね。龍彦も味噌汁置くぞ。あと丼な」
「んまぁ~っ、相変わらず美味しそうぅ~っ!いただきまっす!ソフィアちゃんも食べてぇ!」
おまえが作ったんじゃないだろうが、と苦笑する佐々木さんは、
「ソフィアさん、そう言えばこれ、ロイドさんから預かったんだよね。本当は直接渡したかったけど、昨日の件で店がゴタついてるからしばらく忙しいみたいで。結婚祝いだって」
御礼を言って開けてみると、ふたつ箱が入っている。
「あらぁ、翡翠だわぁ。キレイねぇ。さすがロイドちゃん、センスいいわぁ」
「ギデオンさんとお揃いで着けてもらえれば嬉しいって言ってたよ」
入っていたのはネックレスとカフスボタンだった。
「…嬉しいです。すごく。ロイドさんに…」
「もー、こういうところは乙女なんだからぁ!泣かないのよ、ソフィアちゃん~」
ロイドさんの気持ちにとても嬉しくなる。こんなふうに贈られて、嬉しさしかない。悪魔もきっと喜ぶだろう。
「あたしと一緒に寝たから安心してぐっすり眠っちゃったんでしょ☆可愛い、ソフィアちゃん!こんなにあたしに心を許してくれるなんてぇ」
…要は警戒心がなさすぎだよね。これで龍彦さんが悪意を持ってたりしたら、私は今頃この世にいないのだ。それでなくてもいくらお姉様の見た目とは言え、女の子相手に勃たないとは言え、龍彦さんは男性なのに。警護のために一緒に寝ました、なんて悪魔にバレたら大変なことに…あれ。そう言えば龍彦さん、「一緒に寝ましょ」発言してた、悪魔の前で…。どうしよう。
とは言え、ごまかすのはイヤだし、事実を述べるしかないけど、これって浮気になるのかな。
なんとなく落ち込んでいると、
「ソフィアちゃん、さっさと準備してぇ?雄輔の店に行くわよぅ!お腹ペッコペコなんだからぁ!」
当の原因はまったく気にしていないようだ。まあ、「ネコちゃんしか愛してない」わけだから、私なんてペット…やっぱり悪魔とおんなじ感覚なのかなぁ?方向性は異なるにせよ、ドSだから?
龍彦さんに連れられて特別区をテクテク歩く。
「こういう場所を作ってもらったおかげで、楽しみが増えたわぁ~。あたしはネコちゃん一筋だけどぉ、アバンチュールを見るのも楽しいじゃない~?仕事の疲れもぶっ飛ぶわよぅ」
アバンチュールか…確かに萌える。できることならどこかお店の…さらに言えば宿の壁にでもなって、それを拝見したい。
佐々木さんのお店はそれなりのお客さんで埋まっていた。席があるかな、と見回していると、
「あ、ソフィアさん、いらっしゃい!昨日はありがとね、ロイドさんも感謝してたよ。龍彦、陣内さんもう来てる。奥の座敷に通したから。ビールでいいか?」
「うん、2杯持ってきてぇ!昨日飲めなかったぶん、今日はバンバン飲むわよぅ~!蘇芳ちゃんに請求回してね☆」
いつも飲んでるだろうが、と佐々木さんは言って、「ソフィアさんには冷茶持っていくね」とニコッとしてくれた。元気そうでよかった。昨日は憔悴してたもんね…。大切なロイドさんが拐われたりしたんだから当然だけど。キスマークなんか付けられちゃったけど、それ以上酷いことがなくて良かった。
通された部屋には、龍彦さんよりさらにデカイ男性がひとり座ってビールを飲んでいた。龍彦さんを見ると厳つい顔がホニャリと弛む。
「龍彦、お疲れ様」
「ネコちゃんもお疲れ様!早かったわねぇ。ソフィアちゃん、こちらがあたしのネコちゃん、陣内雷よ」
陣内さんはサッと立ち上がると、私の前で片膝をついて頭を下げた。
「昨夜はご挨拶もできず申し訳ございません。ソルマーレ国王太子妃、ソフィア様ですね。私はジャポン皇国玄武州警備部所属、陣内雷と申します。陣内、とお呼びください」
…こんな見るからにドSな感じの美丈夫がまさかのドM…世の中わからないものである。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
龍彦さんと共に腰を降ろすと佐々木さんが飲み物を持ってきてくれた。その後ろにいたスタッフの方が料理も持ってきてくれる。
「雄輔、あたしご飯物が食べたいのよぅ。オススメはなぁに?」
「酒飲みながら並行して飯食うのかよ…じゃ、海鮮丼作ってきてやる」
「大盛ね!ネコちゃんとソフィアちゃんは?」
陣内さんは軽く首を横に振る。私は、
「佐々木さん、あれば焼おにぎりが食べたいです」
「オッケー。じゃ、ちょっと待っててね」
佐々木さんが出て行くと、陣内さんが
「ソフィア様は、白虎州に行かれるとか」
「はい。白虎州知事の奥様が妊娠されて、様子を見に行きたくて」
陣内さんはひとつ頷くと、
「龍彦も一緒に行くんだろ?」
と龍彦さんに視線を移した。
「そうよぉ、蘇芳ちゃん直々の依頼だからねぇ」
あ、そうか。潜入捜査とやらでふたりは会えなかったのに、龍彦さんが私と行っちゃったらまた会えなくなっちゃうんだ。なんか、恋人を引き裂いてるみたいで、お邪魔虫だな、私。
「あの、なるべく早く戻ってもらいます。伽藍さんの体調を知りたい…顔を見たいだけなので、そんなにかからないと思います」
一瞬キョトンとした陣内さんは、その後ブハ、と吹き出した。
「話には聞いてたけど、ソフィア様はほんと王族らしくないんだねぇ。タイトレア国の王女様なんて、すんげえ高飛車女だぜ」
「私は王族って言っても、たまたまそうなっただけなので」
「まぁ、ふつうはこんな店に食事になんてこないわよぅ」
「こんな店で悪かったな」
料理を手に入ってきた佐々木さんに、
「バカねぇ、王族が、って言ってんでしょ!あんたの店は最高よ。じゃなかったら来るわけないでしょうが」
佐々木さんはほんのり嬉しそうな顔をすると、
「はい、ソフィアさん。焼おにぎりふたつ、ひとつはこのあんかけで食べてみて。あと、味噌汁ね。龍彦も味噌汁置くぞ。あと丼な」
「んまぁ~っ、相変わらず美味しそうぅ~っ!いただきまっす!ソフィアちゃんも食べてぇ!」
おまえが作ったんじゃないだろうが、と苦笑する佐々木さんは、
「ソフィアさん、そう言えばこれ、ロイドさんから預かったんだよね。本当は直接渡したかったけど、昨日の件で店がゴタついてるからしばらく忙しいみたいで。結婚祝いだって」
御礼を言って開けてみると、ふたつ箱が入っている。
「あらぁ、翡翠だわぁ。キレイねぇ。さすがロイドちゃん、センスいいわぁ」
「ギデオンさんとお揃いで着けてもらえれば嬉しいって言ってたよ」
入っていたのはネックレスとカフスボタンだった。
「…嬉しいです。すごく。ロイドさんに…」
「もー、こういうところは乙女なんだからぁ!泣かないのよ、ソフィアちゃん~」
ロイドさんの気持ちにとても嬉しくなる。こんなふうに贈られて、嬉しさしかない。悪魔もきっと喜ぶだろう。
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