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番外編~100年に一度の恋へ
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なんでこんなことになったんだろう。
冷たい地下牢の中で体育座りをしながらひとり考える。
アミノフィア国の王太子殿下の誕生日だからと招待状をもらい、悪魔とふたりで来るはずが、出国の直前ハソックヒル国の艦隊がソルマーレ国に向けて出国するとアネットさんから連絡が入った。その数は30を越えるといい、かと言って開戦の通達もなく何が目的なのかわからない。ディーン王子、ゼイン王子は「我々にお任せください」と言ったのだが、相手の目的がハッキリしないまま王太子が国を離れるわけにはいかない。ハソックヒル国とソルマーレ国は、けして友好的ではないからだ。
「今回はお断りします」
悪魔が手紙を認めようとしたとき、アミノフィア国から迎えが到着してしまった。イェーガー殿下からの使いだと聞いて、悪魔も私も安心して離れたのだが…。
(それがなぜか、ハソックヒル国に連れてこられちゃったんだよなぁ…)
しかも、この地下牢だ。いったいなんだというのだろう。
(ハソックヒル国に売られた、元王太子の仕業とかだったらどうしよう…?)
冷える手足を擦りながら考えを巡らせていると、地下牢に続く扉が開いた。
「ソルマーレ国王太子妃、ソフィア・エヴァンスだな。こんなところに押し込めて申し訳ないが、ちょっとの間我慢してくれ。…挨拶が遅れたな、俺はハソックヒル国第1王子、デヴィッドだ。よろしく…ってほど親しくなる予定はないな、…ほんのちょっとの間だけだから」
ニタリと嗤う目の前の男は、年の頃は20代。白い髪に赤い瞳のスラリと細身の男だった。ハソックヒル国の王族は、皆この色で生まれてくると聞く。不気味さを醸し出すその見た目は、得体の知れないハソックヒル国を如実に現している。
「私を、どうするつもりなんですか」
「どうするつもりもないなぁ…あんたの旦那次第だが」
そうしてハソックヒル国第1王子は、今回の計画をそれは愉しそうに語りだした。
あんたの旦那の妹に、オリヴィアってのがいるだろ?それに求婚しただろう、アミノフィア国の第2王子が。
あいつは、あんたの旦那の母親が自国民だし、いくらか年が離れてても要求を飲んでくれるだろうと思ってたのに、返事はまさかのノーだった。
あの男はさ、自分の母親が寵愛されてて、父親にも甘やかされて育ってきたから断られるなんてこと、我慢がならないんだよ。ましてやあいつの立てた計画を成功させるためには、オリヴィアという人質が絶対に必要なんだと。腹違いの兄貴と仲がいいあんたの旦那が、自分の側について兄貴の顔が絶望に染まるのを嗤ってやりたいらしいよ、いい趣味してるよな。
…そのオリヴィアという人質を手に入れるための人質になったってわけだ、あんたは。
ソルマーレ国王太子殿は、知らない人間がいないくらいに自分の妻を…あんたを溺愛してる。あんたに何かがあると匂わせて天秤を傾けさせれば、仕方ないと諦めてオリヴィアを差し出すだろうよ。あんたのことが大好きで仕方ないんだからな。
憎い兄貴の誕生日を利用して両方をやり込めるなんて、あいつも相当性格がわるいわな。兄貴の使いだというやつらにあんたが拐われて、あんたの旦那は烈火の如くアミノフィア国に殴り込むだろうよ。もしアミノフィア国の国民が…兵士がひとりでも傷つけられれば、それは立派な開戦の理由になる。
そうなれば、オリヴィアも簡単に手に入る…兄貴は他国の王太子妃を拐った上に、戦争に国を巻き込んだ戦犯として処刑できるし、あんたの国は開戦のきっかけを作った責めを負わされてアミノフィアの要求を飲まざるを得なくなる。オリヴィアという人質がいる限り、ソルマーレ国はアミノフィア国、ひいてはハソックヒル国の属国になるわけだ。
…ま、あの男の性格からして、オリヴィアがいつまで無事でいられるかわからないがな。
下卑た嗤い声を上げる目の前の男にも、こんなバカげた計画を立てて実行に移したアミノフィア国の第2王子にも嫌悪感を隠しきれない。まだ幼いオリヴィアちゃんを利用して、自分たちの卑劣な要求を通そうとするなんて。
冷たい地下牢の中で体育座りをしながらひとり考える。
アミノフィア国の王太子殿下の誕生日だからと招待状をもらい、悪魔とふたりで来るはずが、出国の直前ハソックヒル国の艦隊がソルマーレ国に向けて出国するとアネットさんから連絡が入った。その数は30を越えるといい、かと言って開戦の通達もなく何が目的なのかわからない。ディーン王子、ゼイン王子は「我々にお任せください」と言ったのだが、相手の目的がハッキリしないまま王太子が国を離れるわけにはいかない。ハソックヒル国とソルマーレ国は、けして友好的ではないからだ。
「今回はお断りします」
悪魔が手紙を認めようとしたとき、アミノフィア国から迎えが到着してしまった。イェーガー殿下からの使いだと聞いて、悪魔も私も安心して離れたのだが…。
(それがなぜか、ハソックヒル国に連れてこられちゃったんだよなぁ…)
しかも、この地下牢だ。いったいなんだというのだろう。
(ハソックヒル国に売られた、元王太子の仕業とかだったらどうしよう…?)
冷える手足を擦りながら考えを巡らせていると、地下牢に続く扉が開いた。
「ソルマーレ国王太子妃、ソフィア・エヴァンスだな。こんなところに押し込めて申し訳ないが、ちょっとの間我慢してくれ。…挨拶が遅れたな、俺はハソックヒル国第1王子、デヴィッドだ。よろしく…ってほど親しくなる予定はないな、…ほんのちょっとの間だけだから」
ニタリと嗤う目の前の男は、年の頃は20代。白い髪に赤い瞳のスラリと細身の男だった。ハソックヒル国の王族は、皆この色で生まれてくると聞く。不気味さを醸し出すその見た目は、得体の知れないハソックヒル国を如実に現している。
「私を、どうするつもりなんですか」
「どうするつもりもないなぁ…あんたの旦那次第だが」
そうしてハソックヒル国第1王子は、今回の計画をそれは愉しそうに語りだした。
あんたの旦那の妹に、オリヴィアってのがいるだろ?それに求婚しただろう、アミノフィア国の第2王子が。
あいつは、あんたの旦那の母親が自国民だし、いくらか年が離れてても要求を飲んでくれるだろうと思ってたのに、返事はまさかのノーだった。
あの男はさ、自分の母親が寵愛されてて、父親にも甘やかされて育ってきたから断られるなんてこと、我慢がならないんだよ。ましてやあいつの立てた計画を成功させるためには、オリヴィアという人質が絶対に必要なんだと。腹違いの兄貴と仲がいいあんたの旦那が、自分の側について兄貴の顔が絶望に染まるのを嗤ってやりたいらしいよ、いい趣味してるよな。
…そのオリヴィアという人質を手に入れるための人質になったってわけだ、あんたは。
ソルマーレ国王太子殿は、知らない人間がいないくらいに自分の妻を…あんたを溺愛してる。あんたに何かがあると匂わせて天秤を傾けさせれば、仕方ないと諦めてオリヴィアを差し出すだろうよ。あんたのことが大好きで仕方ないんだからな。
憎い兄貴の誕生日を利用して両方をやり込めるなんて、あいつも相当性格がわるいわな。兄貴の使いだというやつらにあんたが拐われて、あんたの旦那は烈火の如くアミノフィア国に殴り込むだろうよ。もしアミノフィア国の国民が…兵士がひとりでも傷つけられれば、それは立派な開戦の理由になる。
そうなれば、オリヴィアも簡単に手に入る…兄貴は他国の王太子妃を拐った上に、戦争に国を巻き込んだ戦犯として処刑できるし、あんたの国は開戦のきっかけを作った責めを負わされてアミノフィアの要求を飲まざるを得なくなる。オリヴィアという人質がいる限り、ソルマーレ国はアミノフィア国、ひいてはハソックヒル国の属国になるわけだ。
…ま、あの男の性格からして、オリヴィアがいつまで無事でいられるかわからないがな。
下卑た嗤い声を上げる目の前の男にも、こんなバカげた計画を立てて実行に移したアミノフィア国の第2王子にも嫌悪感を隠しきれない。まだ幼いオリヴィアちゃんを利用して、自分たちの卑劣な要求を通そうとするなんて。
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