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番外編~100年に一度の恋へ
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ハソックヒル国に向かうジャポン皇国の艦隊の前に広がる海に、炎が立ち上っては消えていく。
「…なんだ、あれ」
呟いた織部の元に、義理の姉、撫子が現れた。真っ赤に泣き濡れた瞳に、織部の胸がドクリと鳴った。まさか。
「撫子さん、」
「お姉様が…っ。…っ、ソフィア様が…っ」
そのまま泣き崩れる撫子を抱えあげ、織部は顔を上げさせた。
「撫子さん、ソフィアさんがどうしたんだ!この海の惨状はなんだ、」
『織部さん』
龍彦がふざけ半分で出したトランシーバーとやらから、声が聞こえてくる。この声、
「…ギデオンさんか?」
『ソフィアが殺されました。王太子妃誘拐の上に無事で返さない…約束を一方的に反古にされました。ですので、我が国の当然の権利としてハソックヒル国を滅ぼします。こちらは片がつきましたので、今からこの戦犯共を連れてアミノフィア国に乗り込みます。せっかく来ていただいて申し訳ありませんが、ソルマーレ国に向かっていただけますか?アミノフィア国での話し合いが付いたら戻りますので』
「ギデオンさん…っ!?」
しかしその機械から、再びギデオンの声が聞こえてくることはなかった。
「くそ…っ」
ソフィアが、殺された、…ギデオンは、そう言った。大事な人質だった、オリヴィアを手に入れた上でソルマーレ国も好きにするための人質だったソフィアを殺した?
いったい何が起きたのか。しかし、協力を求められて来た以上、その相手から「帰れ」と言われれば帰るしかない。ソルマーレ国で待つしか、真相を知る術はない。
何時にも増して無機質な声で告げるギデオンの心情を想い、織部は男泣きに泣いた。
「…ハソックヒル国は、今この時を持って姿を消します。あなた方ハソックヒル国の王族はソルマーレ国にて処刑。
アミノフィア国はどうしますか、国王陛下?ハソックヒル国と命運を共にされますか?」
ギデオンに聞かれたアミノフィア国国王の顔が歪む。
「我が国は被害者だ…っ!倅が関わっていたことだって、」
「証拠がないと、そう仰りたいのでしょうか、父上」
「…イェーガー!こんなふうにバカにされて、我が国はソルマーレ国の属国ではないのだぞ…っ」
しかし、ギデオン同様の冷たい瞳で自分を見据える長男に、カラダがビクリと跳ねた。
「ええ、我が国は属国ではありませんね。そこな腐れの企みでソルマーレ国を属国にしようとしていたのですからね。証拠はたんまり出てきましたよ、父上。貴方の愛してやまない側妃様の寝室からね」
目の前に紙吹雪のように大量の書類をバラ蒔かれ、アミノフィア国王の顔がみるみる青ざめる。
「私を廃太子にした後、冤罪で処刑、我が妃と子も処刑、母上まで処刑しようとは…いやはや、そこまで父上に憎まれていたとは正直知りませんでした。しかしそれを知っても、まったく哀しみが湧いてこないことがむしろ悲しいですけどねぇ」
「イ、イェーガー、違うんだ、これは、」
「ギデオン王太子殿下。貴方の大切な最愛を奪った我が国に、それでも慈悲をかけていただけるのならば、アミノフィア国はこのままこの後も、ソルマーレ国の友好国としていただけないだろうか。私は貴方に誓う」
そう言ったイェーガー王太子は、目の前で無様に尻餅をついた父親…アミノフィア国王の首をなんの躊躇いもなくはねた。鮮血が飛び散り、喚き散らしていた側妃の顔が真っ赤に染まる。
「キ…っ、…キャアアアア…ッ」
「…うるさいな。今、宣誓中だってこともわからないのか、この畜生が」
冷たい声音とともに白刃が煌めく。側妃の首も飛び、それを見た第2王子は失禁の上失神した。
「邪魔が入ったので改めて…我が国は、今後ソルマーレ国に忠誠を誓います。未来永劫、君主が変わろうとこれは不変の決定事項だ。それが破られたら、我が国を消滅させてください」
「わかりました。この男は我が国に任せてもらっていいですね…?一瞬で殺すなんて生ぬるいことは、わたくしにはとても無理です」
血みどろに…真っ赤に染まった顔でニッコリと微笑むギデオンの狂気の瞳に、アミノフィア国の重臣たちはカラダを震わせた。この王太子が生きている限り、自分たちアミノフィア国に安寧は訪れないであろうことを悟って。そして、あの無様に気絶し倒れている第2王子の、穏やかに迎えられないであろう死を思って。
誰かが、呟く。
赤い悪魔、
と。
「…なんだ、あれ」
呟いた織部の元に、義理の姉、撫子が現れた。真っ赤に泣き濡れた瞳に、織部の胸がドクリと鳴った。まさか。
「撫子さん、」
「お姉様が…っ。…っ、ソフィア様が…っ」
そのまま泣き崩れる撫子を抱えあげ、織部は顔を上げさせた。
「撫子さん、ソフィアさんがどうしたんだ!この海の惨状はなんだ、」
『織部さん』
龍彦がふざけ半分で出したトランシーバーとやらから、声が聞こえてくる。この声、
「…ギデオンさんか?」
『ソフィアが殺されました。王太子妃誘拐の上に無事で返さない…約束を一方的に反古にされました。ですので、我が国の当然の権利としてハソックヒル国を滅ぼします。こちらは片がつきましたので、今からこの戦犯共を連れてアミノフィア国に乗り込みます。せっかく来ていただいて申し訳ありませんが、ソルマーレ国に向かっていただけますか?アミノフィア国での話し合いが付いたら戻りますので』
「ギデオンさん…っ!?」
しかしその機械から、再びギデオンの声が聞こえてくることはなかった。
「くそ…っ」
ソフィアが、殺された、…ギデオンは、そう言った。大事な人質だった、オリヴィアを手に入れた上でソルマーレ国も好きにするための人質だったソフィアを殺した?
いったい何が起きたのか。しかし、協力を求められて来た以上、その相手から「帰れ」と言われれば帰るしかない。ソルマーレ国で待つしか、真相を知る術はない。
何時にも増して無機質な声で告げるギデオンの心情を想い、織部は男泣きに泣いた。
「…ハソックヒル国は、今この時を持って姿を消します。あなた方ハソックヒル国の王族はソルマーレ国にて処刑。
アミノフィア国はどうしますか、国王陛下?ハソックヒル国と命運を共にされますか?」
ギデオンに聞かれたアミノフィア国国王の顔が歪む。
「我が国は被害者だ…っ!倅が関わっていたことだって、」
「証拠がないと、そう仰りたいのでしょうか、父上」
「…イェーガー!こんなふうにバカにされて、我が国はソルマーレ国の属国ではないのだぞ…っ」
しかし、ギデオン同様の冷たい瞳で自分を見据える長男に、カラダがビクリと跳ねた。
「ええ、我が国は属国ではありませんね。そこな腐れの企みでソルマーレ国を属国にしようとしていたのですからね。証拠はたんまり出てきましたよ、父上。貴方の愛してやまない側妃様の寝室からね」
目の前に紙吹雪のように大量の書類をバラ蒔かれ、アミノフィア国王の顔がみるみる青ざめる。
「私を廃太子にした後、冤罪で処刑、我が妃と子も処刑、母上まで処刑しようとは…いやはや、そこまで父上に憎まれていたとは正直知りませんでした。しかしそれを知っても、まったく哀しみが湧いてこないことがむしろ悲しいですけどねぇ」
「イ、イェーガー、違うんだ、これは、」
「ギデオン王太子殿下。貴方の大切な最愛を奪った我が国に、それでも慈悲をかけていただけるのならば、アミノフィア国はこのままこの後も、ソルマーレ国の友好国としていただけないだろうか。私は貴方に誓う」
そう言ったイェーガー王太子は、目の前で無様に尻餅をついた父親…アミノフィア国王の首をなんの躊躇いもなくはねた。鮮血が飛び散り、喚き散らしていた側妃の顔が真っ赤に染まる。
「キ…っ、…キャアアアア…ッ」
「…うるさいな。今、宣誓中だってこともわからないのか、この畜生が」
冷たい声音とともに白刃が煌めく。側妃の首も飛び、それを見た第2王子は失禁の上失神した。
「邪魔が入ったので改めて…我が国は、今後ソルマーレ国に忠誠を誓います。未来永劫、君主が変わろうとこれは不変の決定事項だ。それが破られたら、我が国を消滅させてください」
「わかりました。この男は我が国に任せてもらっていいですね…?一瞬で殺すなんて生ぬるいことは、わたくしにはとても無理です」
血みどろに…真っ赤に染まった顔でニッコリと微笑むギデオンの狂気の瞳に、アミノフィア国の重臣たちはカラダを震わせた。この王太子が生きている限り、自分たちアミノフィア国に安寧は訪れないであろうことを悟って。そして、あの無様に気絶し倒れている第2王子の、穏やかに迎えられないであろう死を思って。
誰かが、呟く。
赤い悪魔、
と。
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