もう一度、あなたと

蜜柑マル

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神社で倒れてる少年に声を掛けたら捕らわれました

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一瞬、何が起きているのか理解できず、しかしその後カラダを反転させられ地面に押さえつけられたことで覚醒する。

「ちょ、っと、な、に、」

この子、いったい何が目的なんだろう。まさか物取り?こんな寒い、しかも雨が降っている夜更けに、来るか来ないか…どちらかと言えば往来などゼロに近い、更に夜に近づく人などほとんどいないこの神社の境内で、こうして誰かが引っ掛かるのを待っていたのだとしたら、…よほど、頭がおかしい人だ。そのおかしい人にこうして押さえつけられ自由を奪われている僕は、もしかしなくても風前の灯火なのかもしれない。

…僕が死んだら、あの家はどうなるんだろう。まさか自称母親が戻ってきて、さも自分の権利のように住み始めたりしたら、…ばあちゃんのさまざまな温かいモノたちが、一瞬で壊されてしまうだろうなぁ。まぁ、僕ももういないわけだから、悲しむことも胸が痛むことも、その原因を作った張本人である女をこの世から消し去ろうとなんて思うほど憎むこともないだろうけど。

そんな激しい感情を、今まで抱いたことなんてない。なんにも期待しない代わりに、自分が傷つかずに済んでいるのだから。

だんだん、そんなことを考えて無になりつつある僕に、彼はもう一度口づけるとニコリとした。そのとき、その瞳が、青く煌めいた。

「…え?」

煌々と光るその青に引き寄せられ飲み込まれそうになる。

「きみ、」

「やっと会えた。ここにいたんだな、表のニッポンにいたからわからなかったんだ…。やっぱりあいつは、俺の番じゃなかった。匂いが何もしなかった。おまえは、いい匂いがする。俺の番だ…」

そう言うと、またペロリと僕の唇を舐めた。

「…つがい?」

嬉しそうに目を細めた少年は、「うん」と頷いてまた口づける。上からのし掛かられてだんだん背中が冷たくなってくる。降り注ぐ雨も容赦なく顔を濡らす。

「あのね、きみ、」

「俺の名前はソウリュウだ」

「え、っと。ソウリュウくん」

「うん。おまえの名前、知りたい」

「その前に、どけてくれないかな」

「…どける?」

「寒いんだよ。冷たいし」

「…寒い?」

「きみは、寒くないの?」

「寒くない」

「こんなに冷たい雨に濡れてるのに?」

「水は、なんでもどんなでも気持ちいいんだ」

…そういわれても、僕は限界だ。

「僕は寒いんだよ。早く帰りたいの」

「そうか。じゃあ行こう」

少年は素早く立ち上がると、僕をぐっと引き寄せ片手で抱き上げた。
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