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第一章
お母様と、マーサと③
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「ヴィー!それは何歳のときだったんだ!?」
「じ、10歳です」
「10歳の女の子の髪を掴みあげるだと!?しかも、なんだその暴言は!?いったい何様のつもりだ!」
「奥様、皇太子殿下『さま』ですよ」
「ふん、そうだったな…ヴィー」
「は、はい」
「そんなのは断っていい。断っていいというより、お断りだ!!女性に乱暴を働くなど、男の風上にもおけん…!そんなのが皇太子だと?この国も先が見えたな!」
「お母様…」
物凄い勢いで怒り始めたお母様は、ふと、何かに気づいたように私を見た。
「ヴィー、前回の人生で、私やロレックスは、そのことについてなんと言ったんだい?いや、そもそも、そんな暴挙…いくら相手が皇太子であろうと、黙って見てたのか!?」
ドクン、と心臓が大きく脈打つ。そう。まずは、そこなのだ。
「それが…」
「まさか、妃候補になれと言ったのかい!?」
信じられない、と吐き捨てたお母様に恐る恐る告げる。
「…おふたりは、そこにはいらっしゃらなくて…。私は皇太子殿下とひとりで対面したのです。
そして、このことは…お父様にもお母様にもご相談、しなかったのです…」
「え?」
お母様は、驚きに目を見開くと私の手をとった。
「なぜ?そんなひどい目にあったのに…言うなと脅されたりしたのかい?」
「脅されたりはしてないのですが…私はそれまで、侯爵家で大切に育まれ、人の悪意にさらされたことがなく…それに、暴力も加わって恐怖でいっぱいになってしまって…。役立たずのように言われて、家族にも迷惑な存在に思われてるのではないかと…」
「…迷惑な存在だと、お父様やお母様がヴィーに言ったのかい?」
私は俯いてフルフルと首を振る。
「私が勝手に…そう、思い込んだのです」
そう言うと、お母様が大きなため息をついた。呆れられてしまったとビクッとすると、「ヴィー」と優しい声で名前を呼ばれる。
「…はい」
「ヴィーは…本当に、我慢だらけの人生を送ってしまったんだね。誰かに甘えることが、悪いことだと…そう思い込んでしまったんだね」
お母様はそう言うと、「おいで」と言って、私を膝に乗せた。
「お、お母様、赤ちゃんが…」
「大丈夫、長い時間こうするわけじゃないんだ。大丈夫だから…」
そして、私の頭を自分の胸にもたれさせ、優しく頭を撫でてくれる。
「言葉の大切さが…これで余計にわかったね?ヴィー?」
「言葉の大切さ…?」
「そうだよ。さっき、約束しただろう?勝手に自分で判断して自己完結するのはやめよう。お母様も、ヴィーも。
お母様は、ヴィーと解り合いたい。
相手を傷つけるだけの、ナイフのような言葉の応酬でなければ、例えばその場はケンカのようになっても、自分の本音で話し合うことが大切だよ。ヴィー…」
お母様はグッと私の頭を自分に押し付けて言った。
「お母様を信じて…周りを信じて…自分を、本当の自分をぶつけられるようになって欲しい。
自分の味方である人間には、もっと甘えていいんだよ」
トクトクとお母様の鼓動を感じながら、私はコクリと頷く。
お母様の優しい言葉に、また涙が溢れだした。
お母様とマーサは何も言わず、ただじっと私が泣き止むのを待っていてくれた。
「じ、10歳です」
「10歳の女の子の髪を掴みあげるだと!?しかも、なんだその暴言は!?いったい何様のつもりだ!」
「奥様、皇太子殿下『さま』ですよ」
「ふん、そうだったな…ヴィー」
「は、はい」
「そんなのは断っていい。断っていいというより、お断りだ!!女性に乱暴を働くなど、男の風上にもおけん…!そんなのが皇太子だと?この国も先が見えたな!」
「お母様…」
物凄い勢いで怒り始めたお母様は、ふと、何かに気づいたように私を見た。
「ヴィー、前回の人生で、私やロレックスは、そのことについてなんと言ったんだい?いや、そもそも、そんな暴挙…いくら相手が皇太子であろうと、黙って見てたのか!?」
ドクン、と心臓が大きく脈打つ。そう。まずは、そこなのだ。
「それが…」
「まさか、妃候補になれと言ったのかい!?」
信じられない、と吐き捨てたお母様に恐る恐る告げる。
「…おふたりは、そこにはいらっしゃらなくて…。私は皇太子殿下とひとりで対面したのです。
そして、このことは…お父様にもお母様にもご相談、しなかったのです…」
「え?」
お母様は、驚きに目を見開くと私の手をとった。
「なぜ?そんなひどい目にあったのに…言うなと脅されたりしたのかい?」
「脅されたりはしてないのですが…私はそれまで、侯爵家で大切に育まれ、人の悪意にさらされたことがなく…それに、暴力も加わって恐怖でいっぱいになってしまって…。役立たずのように言われて、家族にも迷惑な存在に思われてるのではないかと…」
「…迷惑な存在だと、お父様やお母様がヴィーに言ったのかい?」
私は俯いてフルフルと首を振る。
「私が勝手に…そう、思い込んだのです」
そう言うと、お母様が大きなため息をついた。呆れられてしまったとビクッとすると、「ヴィー」と優しい声で名前を呼ばれる。
「…はい」
「ヴィーは…本当に、我慢だらけの人生を送ってしまったんだね。誰かに甘えることが、悪いことだと…そう思い込んでしまったんだね」
お母様はそう言うと、「おいで」と言って、私を膝に乗せた。
「お、お母様、赤ちゃんが…」
「大丈夫、長い時間こうするわけじゃないんだ。大丈夫だから…」
そして、私の頭を自分の胸にもたれさせ、優しく頭を撫でてくれる。
「言葉の大切さが…これで余計にわかったね?ヴィー?」
「言葉の大切さ…?」
「そうだよ。さっき、約束しただろう?勝手に自分で判断して自己完結するのはやめよう。お母様も、ヴィーも。
お母様は、ヴィーと解り合いたい。
相手を傷つけるだけの、ナイフのような言葉の応酬でなければ、例えばその場はケンカのようになっても、自分の本音で話し合うことが大切だよ。ヴィー…」
お母様はグッと私の頭を自分に押し付けて言った。
「お母様を信じて…周りを信じて…自分を、本当の自分をぶつけられるようになって欲しい。
自分の味方である人間には、もっと甘えていいんだよ」
トクトクとお母様の鼓動を感じながら、私はコクリと頷く。
お母様の優しい言葉に、また涙が溢れだした。
お母様とマーサは何も言わず、ただじっと私が泣き止むのを待っていてくれた。
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