【R18】今度は逃げません?あの決意はどこへ~あまくとろかされてしまうまで~

蜜柑マル

文字の大きさ
10 / 110
第一章

お母様と、マーサと③

しおりを挟む
「ヴィー!それは何歳のときだったんだ!?」

「じ、10歳です」

「10歳の女の子の髪を掴みあげるだと!?しかも、なんだその暴言は!?いったい何様のつもりだ!」

「奥様、皇太子殿下『さま』ですよ」

「ふん、そうだったな…ヴィー」

「は、はい」

「そんなのは断っていい。断っていいというより、お断りだ!!女性に乱暴を働くなど、男の風上にもおけん…!そんなのが皇太子だと?この国も先が見えたな!」

「お母様…」

物凄い勢いで怒り始めたお母様は、ふと、何かに気づいたように私を見た。

「ヴィー、前回の人生で、私やロレックスは、そのことについてなんと言ったんだい?いや、そもそも、そんな暴挙…いくら相手が皇太子であろうと、黙って見てたのか!?」

ドクン、と心臓が大きく脈打つ。そう。まずは、そこなのだ。

「それが…」

「まさか、妃候補になれと言ったのかい!?」

信じられない、と吐き捨てたお母様に恐る恐る告げる。

「…おふたりは、そこにはいらっしゃらなくて…。私は皇太子殿下とひとりで対面したのです。
そして、このことは…お父様にもお母様にもご相談、しなかったのです…」

「え?」
お母様は、驚きに目を見開くと私の手をとった。

「なぜ?そんなひどい目にあったのに…言うなと脅されたりしたのかい?」

「脅されたりはしてないのですが…私はそれまで、侯爵家で大切に育まれ、人の悪意にさらされたことがなく…それに、暴力も加わって恐怖でいっぱいになってしまって…。役立たずのように言われて、家族にも迷惑な存在に思われてるのではないかと…」

「…迷惑な存在だと、お父様やお母様がヴィーに言ったのかい?」

私は俯いてフルフルと首を振る。

「私が勝手に…そう、思い込んだのです」

そう言うと、お母様が大きなため息をついた。呆れられてしまったとビクッとすると、「ヴィー」と優しい声で名前を呼ばれる。

「…はい」

「ヴィーは…本当に、我慢だらけの人生を送ってしまったんだね。誰かに甘えることが、悪いことだと…そう思い込んでしまったんだね」

お母様はそう言うと、「おいで」と言って、私を膝に乗せた。

「お、お母様、赤ちゃんが…」

「大丈夫、長い時間こうするわけじゃないんだ。大丈夫だから…」

そして、私の頭を自分の胸にもたれさせ、優しく頭を撫でてくれる。

「言葉の大切さが…これで余計にわかったね?ヴィー?」

「言葉の大切さ…?」

「そうだよ。さっき、約束しただろう?勝手に自分で判断して自己完結するのはやめよう。お母様も、ヴィーも。
お母様は、ヴィーと解り合いたい。
相手を傷つけるだけの、ナイフのような言葉の応酬でなければ、例えばその場はケンカのようになっても、自分の本音で話し合うことが大切だよ。ヴィー…」

お母様はグッと私の頭を自分に押し付けて言った。

「お母様を信じて…周りを信じて…自分を、本当の自分をぶつけられるようになって欲しい。
自分の味方である人間には、もっと甘えていいんだよ」

トクトクとお母様の鼓動を感じながら、私はコクリと頷く。

お母様の優しい言葉に、また涙が溢れだした。

お母様とマーサは何も言わず、ただじっと私が泣き止むのを待っていてくれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

処理中です...