逃げたら追いかけられた

蜜柑マル

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あれから1ヶ月。私は長野県に引っ越した。

元々、今の会社に入社しようと思ったのは、大学時代を過ごして大好きになった長野県にいたくて選んだからだ。面接でもかなり力説したのに、なぜか東京の本社に配属されてしまった。上杉とああなる前には転勤願いを出していたため、つい半年前に長野支社に来ないかと打診をいただいた。本社でお世話になった上司が地元の長野支社に異動したあと、私の仕事ぶりを評価して声をかけてくださったらしい。

上杉と離れたくなくてお断りしていたものの、折に触れて元上司の吉田部長は私に連絡をくれていた。

「新しくやりなおそう」

大好きな長野に戻って来れて、心が穏やかになる。自然溢れたこの地で、また一から生活を始めよう。

ウキウキした気持ちで部屋を整える。

あの後、上杉のことを思って心が痛むこともあったが、あの時の侮蔑の表情や「おまえみたいなキツい女苦手」という言葉を思い出したら案外早く冷静になれた。

たまに生まれるズキズキしたこの痛みも、バカだった私への罰だ。そう思って生きていけばいい。私は、自分を変えるつもりはない。誰かに無理矢理合わせて生きていくなんてできない。キツい、可愛げがない、そうとられるなら仕方ない。愛想なくしてる自覚ないし。むしろ、社内でも社外でもそんなふうに指摘されたことなかった。言われなかっただけなのかな。吉田部長あたりに聞いてみよう。

明日からの新生活。楽しみ。

ひとりで引っ越しそばを食べ、お風呂に浸かりぐっすり眠った。



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