6 / 13
6
しおりを挟む
会社を出ると、目の前に上杉が立っていた。
ビクリとする私に「お疲れ様、薫。じゃ、行こう」と笑いかけると、指を絡めて手を繋ぎ歩きだした。こんなこと、今までされたことない。というより、同僚に見つかりたくないからと外で会ったことなど一度もなかった。
「あ、あの、」
「なぁに、薫」
ニコリとこちらを見る顔は相変わらず目が笑っていない。
さりげなく手を離そうとすると、痛いほどギュウッと握られる。
「とりあえず、泊まるホテルに行こう。二人で予約してある。ダブルの部屋だよ」
サラリと言われて、「あぁ、なるほど」と思い至った。
「美穂ちゃんと結婚決まったから挨拶に来たの?わざわざいいのに、」
「美穂ちゃんて誰」
「…え?」
振り返る上杉の顔は表情がなく、目だけが冷酷な光を湛えている。
「ダブルの部屋は、俺と薫が泊まるんだよ。来週の火曜日まで、薫、休み入れてもらったから。今日木曜日だから6日間ずっと一緒にいられるよ」
「え?」
私、そんな申請出してない。
「上杉、」
「啓一だよ、薫。俺の名前わかるよね。これから薫も上杉になるんだから、名前で呼んでよ」
そういうとまた手を握ったままスタスタと歩きだした。
「あの、上杉…っ」
「ねぇ、薫。俺が今言ったことわからなかった?」
上杉は振り向くと、私の耳をギリッと噛んだ。ものすごい痛みに襲われ、カラダがギュッと固まる。
「啓一だよ、薫」
こんなふうになった上杉を見たことがない私は、沸き上がる恐怖でカラダが震えはじめた。
「…どうしたの、薫。震えてるよ」
上杉は私の腰をぐっと引くと、「体調悪い?タクシーで移動しよう」と車を止め乗り込んだ。
車内でも私の腰から手を離さず、じっと私を見る。怖くて顔をあげることができず俯く私に上杉の視線が突き刺さる。
いったい何が?何が起きてるの?
ビクリとする私に「お疲れ様、薫。じゃ、行こう」と笑いかけると、指を絡めて手を繋ぎ歩きだした。こんなこと、今までされたことない。というより、同僚に見つかりたくないからと外で会ったことなど一度もなかった。
「あ、あの、」
「なぁに、薫」
ニコリとこちらを見る顔は相変わらず目が笑っていない。
さりげなく手を離そうとすると、痛いほどギュウッと握られる。
「とりあえず、泊まるホテルに行こう。二人で予約してある。ダブルの部屋だよ」
サラリと言われて、「あぁ、なるほど」と思い至った。
「美穂ちゃんと結婚決まったから挨拶に来たの?わざわざいいのに、」
「美穂ちゃんて誰」
「…え?」
振り返る上杉の顔は表情がなく、目だけが冷酷な光を湛えている。
「ダブルの部屋は、俺と薫が泊まるんだよ。来週の火曜日まで、薫、休み入れてもらったから。今日木曜日だから6日間ずっと一緒にいられるよ」
「え?」
私、そんな申請出してない。
「上杉、」
「啓一だよ、薫。俺の名前わかるよね。これから薫も上杉になるんだから、名前で呼んでよ」
そういうとまた手を握ったままスタスタと歩きだした。
「あの、上杉…っ」
「ねぇ、薫。俺が今言ったことわからなかった?」
上杉は振り向くと、私の耳をギリッと噛んだ。ものすごい痛みに襲われ、カラダがギュッと固まる。
「啓一だよ、薫」
こんなふうになった上杉を見たことがない私は、沸き上がる恐怖でカラダが震えはじめた。
「…どうしたの、薫。震えてるよ」
上杉は私の腰をぐっと引くと、「体調悪い?タクシーで移動しよう」と車を止め乗り込んだ。
車内でも私の腰から手を離さず、じっと私を見る。怖くて顔をあげることができず俯く私に上杉の視線が突き刺さる。
いったい何が?何が起きてるの?
52
あなたにおすすめの小説
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
真面目な王子様と私の話
谷絵 ちぐり
恋愛
婚約者として王子と顔合わせをした時に自分が小説の世界に転生したと気づいたエレーナ。
小説の中での自分の役どころは、婚約解消されてしまう台詞がたった一言の令嬢だった。
真面目で堅物と評される王子に小説通り婚約解消されることを信じて可もなく不可もなくな関係をエレーナは築こうとするが…。
※Rシーンはあっさりです。
※別サイトにも掲載しています。
私に義弟が出来ました。
杏仁豆腐
恋愛
優希は一人っ子で母を5年前に亡くしていた。そんな時父が新しい再婚相手を見つけて結婚してしまう。しかもその相手にも子供がいたのだった。望まない義弟が出来てしまった。その義弟が私にいつもちょっかいを掛けてきて本当にうざいんだけど……。らぶらぶあまあまきゅんきゅんな短編です。宜しくお願いします。
エリート課長の脳内は想像の斜め上をいっていた
ピロ子
恋愛
飲み会に参加した後、酔い潰れていた私を押し倒していたのは社内の女子社員が憧れるエリート課長でした。
普段は冷静沈着な課長の脳内は、私には斜め上過ぎて理解不能です。
※課長の脳内は変態です。
なとみさん主催、「#足フェチ祭り」参加作品です。完結しました。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
旦那様の愛が重い
おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。
毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。
他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。
甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。
本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる