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15歳の誕生日

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「…婚約、祝い?」

ニコニコするお父様に呆然とした思いを抱く。今、婚約、って言った…?

「お父様、あの、」

「なんだい」

「…お相手は、どなたなのですか。私、お聞きしていませんよね?」

「婚約祝いだということも今聞きに来たくらいだから、もちろんお相手のことも聞いていないよねぇ」

のんびりと言う父に初めて殺意を抱く。生まれてから初めて。…やだわ、私。そんなことを考えたりするような人間じゃなかったはずなのに。自分の命を絶つくらいまで追い詰められた上に一度死ぬと、意外と図太くなれるものなのかしら。…なんて、現実逃避している場合じゃないわ。

「…お父様。お相手はどなたですか」

「それは明日のお楽しみだよ、セシリア」

…なんでよ。

「…お父様、本気で言ってらっしゃるのですか?そんなわけ、ありませんよね?娘の人生が決まるかもしれない、人生を左右するであろう伴侶を、本人に知らせないとは、」

「今まで聞きに来なかったのはおまえだよね、セシリア」

正論をかまされ、グッ、と詰まる。私を見る父の目は、面白そうに細められていた。

「だ、って、そんな、まさか婚約祝いだなんて、」

「だから。それを聞きに来なかったのはおまえだよね、セシリア。自分のやるべきことをやらず棚上げしてきたのはおまえだよね、セシリア。私はきちんと伝えたはずだ。パーティーをやるぞ、と。さっきおまえは、16歳ではないのになぜ誕生日にパーティーをするのか、と言った。そこまでわかっていながら聞きに来なかったのはおまえの怠慢だとは思わないか?…明日になればイヤでもわかるんだ。今日と明日でどれほど違う?あと数時間もすれば明日になる。それまで楽しみに待ちなさい」

そう言うと、また書類に目を落としてしまう。

「お父様…っ」

「…今日聞きに来たご褒美に、ひとつだけ教えてあげよう。我が家に婿に入ってくださる。我が侯爵家を継いでくださるそうだ。…さ、戻りなさい。明日に備えてゆっくりするんだよ。明日の主役はセシリア、おまえなんだから」

もう一度ニコリ、とするとあとは何も言ってくれなかった。
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