逆行厭われ王太子妃は二度目の人生で幸せを目指す

蜜柑マル

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新たな火種

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「シア、あのさ、…言いたくないかもしれないけど、聞いていいかな。その、前回の話は聞いた。王太子だった俺が、子爵令嬢と情交してたかも、っていうのは。でも、シアがどうだったのかは聞いてない…」

…私が、どうだった?

「ハル様、あの、…どうだった、とは?」

「…性交の、経験が、あるのか、って、こと」

え…?

せいこう、という言葉が性交、に繋がるまでかなりの時間を要した私は、その言葉が頭に浮かんで一気に顔が熱くなった。

「ハル様…っ」

「だってさ!だって、そんな、バカ男だったんだろ、俺は!前回の俺は、シアを大事にしないどころか、大事な大事な初夜に他の女を抱いてたかもしれないんだろ!俺じゃない、相手は俺じゃなかったんだ、って信じたいけど今どんなことしたってシアに証明できない…!そんなバカ男を見限って、他の男にひかれたとしても、俺は文句を言う権利はない…っ」

ハロルド様は、ギュウッと眉をしかめたかと思うとそのキレイな黒い瞳が潤み始めた。なんで、

「…ハル様…?」

さっきまで自信満々に私に口づけていた人とは別人のような頼りなさに驚き声をかけると、その瞳からポロリと涙が零れ落ちた。

「ハ、ハル様…っ。どうされたのですか、なぜ、」

「…俺が、言う権利、…ない、ないけど…っ。でも、やだ、シアが、他の…っ男に…っ!ねぇ、シア、誰が好きだったの、バカな俺を見限って、誰が好きだったの…っ」

私にしがみつくようにして嗚咽を洩らすハロルド様は、幼い子供のようだった。婚約者になって一年、いつでも自信に満ち溢れていたハロルド様からは想像すらできなかったその弱々しい姿に、思わず胸がキュッとする。

ハロルド様の背にそっと腕を回し、優しく、優しく撫でる。なんて、…可愛らしいんだろう。

「ハル様、」

「…やっぱり、聞きたくない。そいつのこと、殺しちゃうから、…苦しめて、苦しめて、殺してやりたいから…」

嗚咽を洩らしながら、なんて恐ろしいことを言うのだろうか。

「ハル様。私は、前回誰のことも好きにはなっていません。もちろん、その、…性交、なんて、してません」

「…ほんと?」

目の縁を真っ赤にしたハロルド様がこちらを窺うように覗き込んでくる。
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