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新たな火種
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ぐ、と唇をハロルド様の舌がこじあける。私は前回の、あのイヤだった結婚式のキスしか経験がない。触れるのもイヤで、すぐに離したから、こんな深い口づけをしたことがない。ハロルド様は容赦なく私の口内を貪り始めた。くちゅくちゅと音が響き、顔に血が昇る。
「ハ、…んぅっ」
ハロルド様をなんとか押し戻したいのに、ガッチリとカラダを抱えこまれてしまっていて抵抗もできない。私の抵抗を遮るように口づけが更に激しくなる。
怖いはずなのに不思議と恐怖心は湧いてこず、頭がぼんやりとしてくる。初めてのはずなのに、気持ちいいとカラダが反応してしまっていることに気付き、羞恥からまた頭に血が昇ったようになる。
しばらく私の唇を貪ったハロルド様は私をじっと見つめると、
「シア。俺から逃げようとしても逃がさないよ。シアはもう、俺のなんだから。絶対に逃がさない。王族に生まれた責務、それは、国王になることだけじゃないでしょ。国を支えていくことだって立派な責務だ。あのバカ…エイサンのせいでシアが俺から逃げるっていうなら、あいつは今すぐ殺す。…シア」
ハロルド様はまた私の顔を胸にギュ、と抱き込んだ。何度も何度も、この一年感じてきたハロルド様の鼓動。トクトクと、自分の頬に伝わってくる。
「シア。さっきも言ったように、エイサンを王太子から引きずりおろしたい輩はたくさんいる。3月に立太子させてしまったものの、飛び級といい婚約者のことといい、陛下も目をつぶれないくらいにしてしまったんだよ、エイサン本人が。王太子の代わりはあとふたりいる、だから心配ない。ただ…」
「…ただ、なんですか?」
ハロルド様は私の額に唇を落とすと、
「…エイサンが王太子を外れると、アデルがエイサンを拒む公的な理由がなくなる。犯罪者の娘だから王妃にはなれない、だから婚約者から外してくれと言ってきたが、エイサンが一貴族になるなら…」
そうだ、その通りだ。王族と結婚するのも問題視されるかもしれないが、王妃になる立場ではなくなるのだから…。
「アデル様が、エイサン殿下を嫌っている、という理由ではお断りするには弱い、ということなのですね」
「うん。それは感情の問題だし、今はどうあれ夫婦になってみたらわからないだろうと押しきられる。なんと言っても、王太子という立場だと再三言ったのにごり押ししてアデルを婚約者にしてしまったくらいだからね」
ハロルド様はふ、とため息をつき、私の髪の毛を撫で始めた。
「シア、…ごめんね」
…え?
慌てて見上げると、ハロルド様はバツの悪そうな顔をしてこちらを見ていた。
「なぜ、謝罪を、」
「…もっと、ロマンチックに、キスしたかったのに…初めてのキスを、無理矢理奪うようにしてごめん」
そんなことがすっかり頭から抜けていた私は、先ほどの口づけを思い出さされ一気に恥ずかしくなる。
「ふふ、シア、真っ赤。…ねぇ、シア、赦してくれる?ねぇ…」
ハロルド様は私を覗きこむようにし、また唇を重ねた。
「ハ、…んぅっ」
ハロルド様をなんとか押し戻したいのに、ガッチリとカラダを抱えこまれてしまっていて抵抗もできない。私の抵抗を遮るように口づけが更に激しくなる。
怖いはずなのに不思議と恐怖心は湧いてこず、頭がぼんやりとしてくる。初めてのはずなのに、気持ちいいとカラダが反応してしまっていることに気付き、羞恥からまた頭に血が昇ったようになる。
しばらく私の唇を貪ったハロルド様は私をじっと見つめると、
「シア。俺から逃げようとしても逃がさないよ。シアはもう、俺のなんだから。絶対に逃がさない。王族に生まれた責務、それは、国王になることだけじゃないでしょ。国を支えていくことだって立派な責務だ。あのバカ…エイサンのせいでシアが俺から逃げるっていうなら、あいつは今すぐ殺す。…シア」
ハロルド様はまた私の顔を胸にギュ、と抱き込んだ。何度も何度も、この一年感じてきたハロルド様の鼓動。トクトクと、自分の頬に伝わってくる。
「シア。さっきも言ったように、エイサンを王太子から引きずりおろしたい輩はたくさんいる。3月に立太子させてしまったものの、飛び級といい婚約者のことといい、陛下も目をつぶれないくらいにしてしまったんだよ、エイサン本人が。王太子の代わりはあとふたりいる、だから心配ない。ただ…」
「…ただ、なんですか?」
ハロルド様は私の額に唇を落とすと、
「…エイサンが王太子を外れると、アデルがエイサンを拒む公的な理由がなくなる。犯罪者の娘だから王妃にはなれない、だから婚約者から外してくれと言ってきたが、エイサンが一貴族になるなら…」
そうだ、その通りだ。王族と結婚するのも問題視されるかもしれないが、王妃になる立場ではなくなるのだから…。
「アデル様が、エイサン殿下を嫌っている、という理由ではお断りするには弱い、ということなのですね」
「うん。それは感情の問題だし、今はどうあれ夫婦になってみたらわからないだろうと押しきられる。なんと言っても、王太子という立場だと再三言ったのにごり押ししてアデルを婚約者にしてしまったくらいだからね」
ハロルド様はふ、とため息をつき、私の髪の毛を撫で始めた。
「シア、…ごめんね」
…え?
慌てて見上げると、ハロルド様はバツの悪そうな顔をしてこちらを見ていた。
「なぜ、謝罪を、」
「…もっと、ロマンチックに、キスしたかったのに…初めてのキスを、無理矢理奪うようにしてごめん」
そんなことがすっかり頭から抜けていた私は、先ほどの口づけを思い出さされ一気に恥ずかしくなる。
「ふふ、シア、真っ赤。…ねぇ、シア、赦してくれる?ねぇ…」
ハロルド様は私を覗きこむようにし、また唇を重ねた。
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