逆行厭われ王太子妃は二度目の人生で幸せを目指す

蜜柑マル

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ある出来事

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「そんなに、…そんなにエイサン殿下は」

「かなりお怒りなのだろうと我々でもわかるくらいの態度だ。だからこそ、なぜ招待を快諾したのか不思議だったが、アデル嬢と堂々と会うという目的があったからなのだな。…イーストウェル侯爵もお気の毒に」

父はまたため息をつくと私に視線を移し、

「おまえとハロルド殿下は行かないのだろう?お断りしておいて正解だったな。今のおまえでは安心して送り出せない。ヒル家の令嬢をやりこめるくらいだからと高を括っていた私がバカだった。しょせん同等のレベルだからなんとかなったようなもので…セシリア。感情を出すことも大事だが、時と場合によることをおまえは学び身につけるべきだ」

呆れたような父の声音がチクチクと突き刺さる。私…中身、今のカラダよりだいぶ年上なのに…ましてや、前回は王太子妃だったのに…でも、引きこもりだったものね。貴族間の駆け引きとはある意味無縁だったから…。

「…努力いたします、成長できるように」

「頼むぞ。ハロルド殿下はおまえのことになると、途端に危なっかしくなるし…自分の身は自分で守れるようになれ。女の闘いに男が口を出すのは簡単だが、一度でもそれをやってしまったら、表面上なにもないようでも遠巻きにされる家になってしまう。ハロルド殿下に、そうさせないように…自分も守りつつ、ハロルド殿下の手綱もきちんと握れるようになれ。家の繁栄は、夫人の優劣にかかってくるのだから」

父の言葉に打ちのめされたようになり、カラダからスッと力が抜ける。私は、ハロルド様に頼らないと言いながら心のどこかでハロルド様になんとかしてもらえる、守ってもらえる、そしてそんな自分に酔いしれていたのかもしれない。まるでヒーローに守られかしづかれるお姫様の気分でいたのかも。

家を継ぐのも、…ハロルド様が婿になり、侯爵になってくださるから安心だと、自分は一歩外れたところにいた…当事者の意識ではなかった。

私を庇護しないで、なんて偉そうにハロルド様に言ったくせに。

私に今足りないのは、覚悟だ。ハロルド様と結婚すると言いながらどこか浮わついた気持ちでいることは否めない。エイサン様のことを聞いてハロルド様とお別れするべきかも、私は王太子妃にはなれない、なんて思ったりするあたり、…ハロルド様に、ハロルド様の家柄や、取り巻く環境に、覚悟を持って向き合っていない。自分がまた傷つくことを怖れて逃げているのだ。

今夜、きちんと気持ちを決めよう。決めたらもう、逃げるのはやめよう。たとえ何かがあってハロルド様が王太子になる、としても私は妃になれるのか。そこまで、つきつめて覚悟を決めよう。ハロルド様とお別れするのか、否か。今回の人生から逃げるのはやめよう。
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