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第二章

リアムさん④

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リアムさんから匂いがする、と言った後、リアムさんは何もせず俺の髪とカラダをキレイに洗い、自分も洗い、お揃いのパジャマを着てベッドに横になった。

「テオ君」

俺をギュッと抱きしめ、鼻と鼻を合わせてスリスリする。

「あのね、テオ君」

「はい」

「…僕、今日、テオ君を殺すつもりだったの」

「…え」

「テオ君が、僕から逃げたんだって思ったら、もう逃げないように殺して、僕も死のうと思ったの」

「…はぁ、」

「でも、テオ君が、僕からオレンジの匂いがする、って言ってくれて、以前団長から…ジークハルト団長から、奥様の匂いについて聞いたことを思い出したの」

「ルヴィア様の香りですね。甘い香りがするのだと言っていました。ジェライトはアキラさんから、レモンの香りがするそうです」

とたんにイヤそうな顔になると、リアムさんは俺をギュッと抱きしめた。

「ねぇ、テオ君」

「はい、」

「テオ君は、もし、ライト君にアキラさんがいなかったら、ライト君を好きになった?」

「…え?」

「…だって、すごく仲いいでしょ。お風呂も一緒だし、一緒に寝てるって団長が言ってたよ。だから、もう、テオ君のこと、好きなのに憎らしくて…っ!どうせ手に入らないなら、殺しちゃって、僕も死のうって!」

ボタボタ泣くリアムさんを見て俺が思ったのは、「ジークハルト様はどれだけ俺を殺したいのだろうか」ということだった。

魔物に喰わせようとし、今回は自分と同じレベルの妄想狂のリアムさんに誤解を与える情報を…俺はルヴィア様に言いつけることを固く心に誓った。

「リアムさん、俺は確かにジェライトと風呂に入りますけど、」

「殺していいかな、テオ君」

「ダメです。俺、リアムさんと初めて会ったとき、魔力ひどいって暴言吐かれたじゃないですか、」

「僕に死んで詫びろってことを言ってるの?じゃあ死ぬから、テオ君も一緒に死んで。ね、お願い」

「リアムさん、とりあえず、死ぬとか殺すから離れてくれませんか。俺はリアムさんのこと好きなのに、」

「え、」

「え?」

「…テオ君、」

「はい?」

「僕のこと好きなの」

「?好きですよ、リアムさんは俺のこと殺したいくらい憎いからキライなんでしょうけど」

「違う!違います!もう言わない、死ぬとか、殺すとか、テオ君に対しては言わない!僕からテオ君を取り上げようとするヤツには死ね、殺すぞ!って言うけど。いいよね、ほんとのことだから」

殺人はやめてほしい。

「テオ君、もう一回、言って欲しい」

「え、死ぬってですか」

「ちがう!好きって!」

「好きですよ、リアムさん、大好きです。俺、さっきも言いましたけど、リアムさんの香りを嗅ぐと、その…恥ずかしいんですけど、射精しちゃうんです。あの、暴言吐かれた日も、知らないうちに2回も出しちゃったんです」

「そうだったの…」

「その時に、ジェライトに、カラダ鍛えて勉強しなおせ、って。訓練付き合ってやる、って言われて。あいつ、4時から6時まで、毎日訓練してくれたんです、俺のこと、だから、」

「殺す」

「え?」

「ライト君、殺す」

「あの、リアムさん、とりあえず話聞いてください」

「…あれ?僕何か言ったかな」

この人大丈夫なんだろうか。妄想レベルがジークハルト様並み、よりさらに上なんじゃなかろうか。

「訓練後、朝食食べて、ジェライトは仕事だし、俺も聴講生だったので、一緒にシャワー入ってたんですよ。その時のくせというか、ジェライトが、俺のカラダを確認するために、」

「ねぇ!なんでライト君が僕のテオ君のカラダを確認するの!死んで詫びるべきじゃない!?ねぇ!?」

「あの、リアムさん、リアムさんは、その時俺にまったく興味なかったですよね、」

「あの腕掴んだあとはもうテオ君のことしか頭になかったよ」

「え?」

「毎日毎日テオ君のこと考えて、テオ君にしゃぶってもらう妄想して抜いたり、テオ君のアナル舐めて指を何本入れるか想像して抜いたり、」

本当に妄想レベルが激しい。

「…考えすぎて、テオ君のこと考えすぎて、頭おかしくなりそうだったんだよ」

おかしくなりそうじゃなくて、おかしいかもしれません、リアムさん。

「じゃあ、お風呂は一緒に浸かったことない?」

「ないですね。使うシャワーも、客人用のシャワーでしたから。ジェライトとアキラさんの部屋の風呂は入ったことないです。聖地らしいので」

「じゃあ、僕と入ったのが初めてだね!」

「…そうですね?」

「やった!嬉しい!…一緒に寝たのはなんなの」

「一緒には寝たことないですけど」

「ウソだ!団長言ってたもん!」

「リアムさん、ジェライトは、変態レベルでアキラさんが好きなんですよ。1日たりとも離れて寝れないんですよ」

「でも、団長の末っ子とアキラさんが寝て、」

「そこにジェライトも行くんですよ。自分の弟が寝たら、そっと転送しちゃうんです、ルヴィア様の部屋に」

「…団長も、今いるよね」

「ルヴィア様、部屋別にしてるらしいですよ。ジークハルト様が帰ってきてから3日続けて閉じ込められて抱き潰されちゃって、いい加減にしてください!って怒っちゃったらしいです」

「僕もやりたい。3日間テオ君を閉じ込めて抱き潰したい」

「ダメです」

「なんで!?」

「なんでって、俺を閉じ込めたらナディール叔父上にリアムさんが殺されますよ。俺をリアムさんから隔離するために骨を折ってくださったんですから」

「団長め、」

「リアムさん、落ち着いてください。ね、お願いします。俺はリアムさんの匂いで射精しちゃう危険が高いので、海軍に行くことにしたんです。魔術団で働くのは無理です」

「やだ、テオ君、海軍やめてって言ったでしょ!」

「リアムさん、もし、リアムさんがセグレタリー国の遠征でケガして働けなくなったとき、俺はリアムさんを支えられないということですか?俺はそれはイヤです。リアムさんと一緒にいたいけど、仕事もしたい。リアムさんに寄りかかって生きていくのはイヤです」

「…じゃあ、ライト君とは縁を切って」

「無理です」

「なんで!?」

「リアムさん、俺はジェライトのおかげで、こういう人間になれたんです。あいつが手をかけてくれなかったら、セグレタリー国でジークハルト様の計画通り魔物に喰われてたでしょうし、魔力も磨けなかったから、たぶんリアムさん俺のこと好きになっていませんよ。俺とリアムさんを繋いでくれたのはジェライトなんです」

「テオ君、やだ」

「リアムさん、俺はさっきもいいましたけど、ジェライトを恋愛対象には見れません。リアムさんが好きなんです。俺が言ってること、信じられませんか」

「…やだ。やだけど、信じる。可愛いテオ君のこと、信じる」

「ありがとうございます」

「テオ君、僕のこと好きなんだよね」

「好きですよ。リアムさんの匂いを嗅いでしまったあの日からずっと好きです」

「じゃあ、僕と結婚して。僕の、僕のテオ君だってわかるように指輪もしたい。ね、テオ君。結婚しよう」

「いいんですか、リアムさん。リアムさんは、俺に囚われる必要はないんですよ。俺はリアムさんの香りに囚われてしまったけど、」

「僕もテオ君に囚われてるんだよ。だからいいの。テオ君がいいの」

「ありがとうございます、リアムさん、ありがとう…」

「泣かないでよ、テオ君、僕が泣きたいんだよ、嬉しくて」

そう言うとリアムさんは、俺に優しく口づけた。

「テオ君、僕の妄想を叶えてもいいかな」

「どういうことですか、殺すってことですか」

「違うから!テオ君はぼくのものになるのに殺したりしないから!あのね、さっき言ったみたいに、テオ君にしゃぶってほしいの、僕のを。あと、テオ君のアナルも舐めたいし、指も入れたいし、もちろん僕のも挿れたいし、たくさんテオ君とエッチしたいんだよ」

「はぁ、…リアムさん、あの、」

「なにかな、テオ君。大丈夫だよ、まずは痛くないように舌で柔らかくしてから指を、」

「いや、そうじゃなくて、リアムさんは男性としたことありますか」

「ないよ。テオ君を認識する前は、男相手なんて100%ないって思ってたし。女もあんまりないけど」

「でも、どんなふうにするか知ってるんですか、」

「知ってるよ!ライト君にたくさんお下がりもらったからね!」

「お下がり…?」

「大丈夫だよ、テオ君。さっきみたいに噛んだりするけど、」

「え」

「だってテオ君が悪いことしたらお仕置きするし。あと、あんなに痛くはしないけど、噛み跡はたくさんつけるよ。僕のだから」

「はぁ、」

「テオ君もつけて!ね!」

「…わかりました、とりあえず、俺は詳しくないので、教えてもらえますか」

「もちろんだよ!じゃあさっそく、」

「リアムさん、俺、一度帰らないとマズイです」

「…なんで?」

「たぶんそろそろ、ここに来ます、」

「帰るよ、テオ君。おかえり、待ってたよ」

「ナディール様!?」

「リアム君、テオ君は連れて帰るね。代わりに、あとでハルト君をよこすから。そうしたら寂しくないでしょ、キミ、ハルト君の魔力好きなんだから」

「…団長を?なぜですか?」

「テオ君のおかえりパーティーに混ぜてあげたくないからだよ」

「僕も行きます!」

「ごめんね、変質者は招待してあげられないんだよ」

そう言うとナディール叔父上は俺を抱き上げて飛んだ。

「おかえり、テオ。ありがとな、手紙。毎日大変だったろ?」

「いや、大丈夫だ。ジェライト、ルヴィア様いらっしゃるか?」

「いるよ、母上もおまえが帰ってくるの楽しみにしてたんだから」

俺は大人げないと思いつつも、ジークハルト様のせいでリアムさんに殺されていたかもしれない話をした。

ルヴィア様も、ナディール叔父上も、ジェライトも、アキラさんも、激怒りだった。

「明日から、団長には物凄い量の仕事を与えて、帰ってこれないようにしよう」とアキラさん。

「あと、辺境に行かせましょう。あちらの部隊を鍛え直すという目的で、3ヶ月くらい。おばあ様にもお願いしてみます」とルヴィア様。

よろしくお願いします、と俺は頭を下げた。

「しかし、ほんとリアム、頭おかしいな。手に入らないから殺すって」

「ジェライト君も一緒だよ」

「え…」

「同じだよ。僕の気持ちが見えないから、不安になるでしょ。ジェライト君は僕とずっと一緒にいるから殺そうとしないだけで、僕を若返らせたとき、僕がジェライト君を受け入れなかったら殺すつもりだったって言ってたじゃない」

「あ、」

「ね。リアムさんは、今回テオドール様を好きになって、しかも子種まで飲んじゃったのに、テオドール様の事情…リアムさんの匂いを嗅いだら射精しちゃうって事情を知らなかったから、引き離されて頭に来て殺したくなったんだよ。手に入らないから」

ジェライトはアキラさんをじっと見ると、「ほんとだね、アキラさん」と言った。そして俺を見ると、「テオ、おまえ、リアムのことはどうするんだ」と聞いた。

「さっき伝えてきたけど、結婚したいと思う。妄想狂でもなんでも、俺の運命の香りだし」

「そうか。あいつも喜ぶだろ。おまえ、王族外れてここに住めよ、リアムと一緒に」

「え、でも、」

「僕もそれがいいと思う、テオドール様」

「え、」

「万が一リアムさんが暴走してもみんなが止められるから。安心でしょ。もうテオドール様は僕たちの家族なんだから。ね、みんなで一緒に生きて行きましょう」

「…ありがとうございます、アキラさん」

「エイベル秘書官だ!」

「ジェライト君、そういうところがジーク君と、」

「アキラさん、団長です!」

「聞きなさい」






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