君は無自覚

鈴木なお

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しょっぱくて甘さとは無縁のクレープを食べ終わると、私はクレープを包んでいた紙をゴミ箱に捨てた。

ゴミ箱にクレープを包んでいた紙を捨てる度に、私は少し寂しくなる。

甘くはないけれどしょっぱさと旨味のあるクレープを口に含む度、私の幸福は満たされていた。

ただその幸福が長く続くわけではないということを私はその紙をゴミ箱に捨てる度に思うのだ。

この様に感じてしまうあたり、自分がとてもとてもマイナスに考えていることを深く痛感する。

だけどもっちりと柔らかいクレープの生地や硬さと柔らかさが共存しているクレープの具も思考をプラスにしてくれた。

この様に一瞬の幸福を渡してくれる食事という儀式は、一種の依存性があると思わされる。

私が学生だった頃、とても私は太っていた。

太っている理由は単純明快でとても食事が好きだったから。

「美味しい、美味しい、こんなに美味しいのはどうしてだろう?」

まだ若かりし頃の私は食に依存し、食に魅せられていた。

若いというのは社会を知らない経験値の浅い塊でしかなく、依存傾向があるのは仕方のないことだと思う。

しかし、当時を振り返ってみるとあれはどう考えても食べ過ぎだったなと思うことは何度もあった。

きっとあの現象は今で言うところの過食というものに該当するのだろう。

実際、食べている時は受験のストレスだとか思春期特有の悩みだとかを一瞬だけ忘れられた。

ずっと辛いことを考えているのはダメージのあることだから、当時の私は食にすがりついたのだろう。

「…そんなこともあったな。」

街を歩きながら私は過去の自分を振り返っていた。

別にそんなことしたって過去の若さが戻ってくるわけがないのにだ。

こんな無駄なことをするのは暇だからだと思い、私は表参道で人気のあるとあるカフェに行った。

そうしてカフェの中に入ろうとしたところ、私の肩に衝撃が走る。

「!?」

一瞬の出来事に私はかたまった。

だが、すぐに事態を理解することはできたようで安心する。

そう、私は人とぶつかったのだ。

その衝撃が肩に走ったというだけのこと。

そしてぶつかった相手は大学生くらいの男の子。

大きく転んでいたその子に私は手をさしのべる。

するとそこでその子と目が合う。

「(…甘い。)」

その子の顔を見た瞬間、そんな感想がすぐにでた。

さっき売られていた甘いクレープを彷彿とさせるような中性的で可愛らしい甘顔の男の子が私のぶつかった相手だったのだ。

まるで甘いクレープみたいな男の子との出会いはそこから始まった。
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